判決がとれても財産の在り処がわからなければ、それはただの紙切れです。貸したお金を強制的に回収することがいかに大変かがわかるはずです。 |
勝訴判決で終わりではない!
さて、めでたく勝訴判決が獲得できた場合、貸した100万円はすんなり戻ってくるのでしょうか?答えは否です。勝訴判決が獲得できても、判決の内容として書かれたものが実現されるわけではありません。判決の内容を実現するためには、別途、強制執行という手続きをとる必要があるのです。具体的には、勝訴判決をもって、改めて裁判所に、彼の財産を差し押さえる手続きをとることになります。
ここで、問題となるのが、彼の財産の在り処です。彼の財産がどこにあるかがわからなければ、差し押さえのしようがなく、結局、100万円は回収できません。勝訴判決がただの紙切れになってしまいます。ですから、彼の財産がどこにあるのかについては、事前に調査しておく必要があるのです。財産の在り処として、考えられるのは、銀行や郵便局の預金口座、自動車、不動産、勤務先(給与※)などです。相手に財産がない場合には、勤務先に対して給与の差し押さえをすることが有効である場合が多いでしょう。勤務先に、給与差し押さえの通知が行くことをおそれて、自分から貸したお金を払ってくることも考えられます。
※給与の差し押さえは、給与が月額44万円以下である場合には、その給与の4分の1に限られます。44万円を超える分は全額差し押さえられます。
お金はあげたつもりで貸すべき!
以上のとおり、貸したお金を返してもらえない場合、それを強制的に返してもらうためには、大変な労力を必要とします。裁判を起こして、強制執行をするには、専門家に依頼して、それなりの費用をかけなければなりませんし、それを行ったからといって、お金が戻ってくる保証はありません。彼の勤務先を知っていて、給与を差し押さえることができたとしても、彼がよほどの高給取りでもない限りは、差し押さえられる金額は、毎月わずかなものです。それに、彼が転職をしてしまえば、改めて新しい勤務先に差し押さえをしなければならず、手間がかかります。それ以前の問題として、新しい勤務先がわからなければ差し押さえすらできません。したがって、現実的に考えると、ご相談のようなケースで、彼に貸したお金を回収することは、かなり困難であるといわざるを得ません。
以上の現実を踏まえると、友人知人にお金を貸すときは、そのお金が戻ってくることを期待してはいけないといえます。貸すときは、もうそのお金はあげたものだと思うべきです。