ネット広告の可能性について語る藤田氏 |
ネット広告の可能性
ガイド:2004年、ついにネット広告の市場規模1814億円となり、ラジオ広告の1795億円を超えました。藤田社長は「ラジオや他のメディアの広告費を削ってインターネットに予算を回している感じはあまりしない。ネット広告の市場自体が新しく生まれ、そして成長している」と分析しています。
広告という観点から考えると、既存の広告代理店が競合になると思うのですが、インタビュー記事等で「競合にならないし、先行者メリットもあるので、現時点ではさほど脅威ではない」とおっしゃっています。しかしながら最近では、モバイルを活用した成果報酬性の雑誌広告も現れ、既存の広告代理店との境界線が曖昧になってきている感もあります。その辺はどうお考えですか?
藤田:
競争云々というよりも現時点で競合していない、ということです。どうしてかというと、当社の広告主というのは、ブランドや商品の告知のために広告を出すという、いわゆる宣伝のためというよりは、売り上げや資料請求の増加に直結させたい、自社のサイトへのアクセスを増やしたいという目的のため、つまり販売促進のために、広告を出すという会社がほとんどなのです。
ですので、広告スペースで何かを表現したり何かを伝えよう、という従来の広告とは全く違うんです。ノウハウも全然違いますし、CAに大手広告代理店の方が転職してきても即戦力になることは滅多にありません。従来の四媒体の広告とは、ノウハウも違えば、お客様の部署も違います。また、実質的に広告予算も全く違う項目からでることがほとんどです。例えば消費者金融の会社が無人のブース窓口をつくって機械を投入して集客するところを、インターネットでそういうサイトをつくって人を集めて収益を上げる、ということになると、広告費というよりは事業開発費になるんです。
ガイド:
なるほど。広告ということではなくて、新規事業という位置づけになるわけですね。
メディアごとの「特性」を理解することが重要
ガイド:最近同じインターネット広告代理店のオプトがゴルフ雑誌「ALBATROSS-VIEW(アルバトロスビュー)」の営業権を取得、2005年中にゴルフ雑誌のブランドを生かしたゴルフ専門サイトを開設、関連用品のネット通販やゴルフ場の予約サービスを手がけるというニュースが新聞に掲載されていました。これは、ネット広告代理店が逆に既存メディアを活用してインターネットとの連動をはかる、という事だと思うのですが、雑誌とインターネットの連動についてはどうお考えですか?
藤田:
実際にゴルフダイジェスト・オンラインが先行しておこなっていますが、ゴルフダイジェスト・オンラインは、単体でもきっちりと利益を出していて、別に雑誌「ゴルフダイジェスト」との連動がポイントになっているわけではないんですね。
ガイド:
007即配コンタクトという、コンタクトレンズとカラーコンタクトのネット通販をやっている会社では、月商5000万円あるうちの約3000万円が携帯電話からの注文で、そのうちの80~90%が雑誌の広告からの注文だったそうです。新しい動きではありませんが、実際に携帯電話と雑誌との連携はかなり強力な販促メディアミックスだと思うのですが。
藤田:
それは購買年齢層をターゲットにした広告として雑誌を考えていて、うまくいった例でしょうね。メディアとして考えた場合、雑誌とネットではノウハウが全く違いますから。たとえば雑誌のノウハウをネットで生かす、という考え方はそもそも間違っていると思います。ネットユーザーと向き合ってつくったコンテンツをちゃんとゼロからつくって、その上で、雑誌の編集ノウハウが生かせるようであれば使う、ということだと思います。
メディアとしての特性が全く違うので、雑誌は雑誌の読者を意識した作りをするし、テレビは視聴者のことを一生懸命考えて視聴率を上げようとします。ネットは、インターネットユーザーはどうなんだ、ということをコンテンツ制作者は重視して考えなければなりません。その結果たとえば、雑誌の編集ノウハウを使えばよいのであって、雑誌の編集ノウハウをそのままインターネットに持ち込んでもそれはうまくいきません。
ガイド:
CAの関連会社のネットプライスでは、ハンバーガーショップのトレーに敷く紙にQRコードを印刷して、モバイルショッピングへ誘導して成果を上げていると聞いています。さらに、最近では美容室専用の無料情報誌と提携して美容室の待ち時間にネット通販等を行えるような動きがありますが、ここでのポイントは雑誌や紙媒体と携帯電話の連携ということではない、ということですね。
藤田:
美容院の待ち時間や食事の時間にショッピングを楽しんでもらう、ということです。携帯電話ならどこでもショッピングができますからね。ショッピング イズ エンターテインメントですから。美容院とハンバーガーショップの顧客とモバイルショッピングのターゲットが一致しているということと、美容院の待ち時間やおしゃべりしながら食事をしている楽しい時間とモバイルショッピングの相性が良い、ということです。
次回は、いよいよ現在藤田社長が自身の時間の約50%を費やしていると言われている「ブログ」事業について、また、サイバーエージェントの成長の秘密を語っていただきます。ご期待ください!