脳科学・脳の健康

「眠れないから少しだけ」は危険? 実は、脳の健康を損なうことも……寝る前に避けるべき飲み物

【大学教授が解説】「寝つきが悪いから少しだけ」と寝る前の一杯を習慣にしていませんか? 実はレム睡眠の時間が短くなり、将来の認知症リスクを上げてしまうかもしれません。分かりやすく解説します。(※画像:Shutterstock.com)

阿部 和穂

阿部 和穂

脳科学・医薬 ガイド

薬剤師

東京大学薬学部卒業、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員、星薬科大学講師を経て、武蔵野大学薬学部教授。薬学博士。専門は脳科学と医薬。

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眠れない人
なかなか眠れない夜も、避けたほうがよいものとは?

なかなか眠れないとき、「飲むと体が温まる」「寝つきがよくなり、ぐっすり眠れる」と、寝る前のお酒を習慣にしている人もいるようです。この「寝酒」の習慣には、本人が気づかないうちに睡眠の質を低下させ、将来的な健康にまで影響を及ぼすリスクが潜んでいる――。

Q. お酒を飲むと熟睡できるのですが、適量はどれくらいでしょうか?

Q. 「寝つきが悪いので、毎晩眠る前にお酒を飲んでいます。海外でも『ナイトキャップ』などの習慣があると聞きますし、ぐっすり眠れると思うのですが、家族からは体に悪いからやめたほうがいいと言われます。実際に体に悪いのか、また、適量はどれくらいなのかを知りたいです」

A. 睡眠の質を下げるおそれがあり、習慣にするのはおすすめできません

寝つきが悪いという理由で、お酒に頼ってしまうという方は珍しくないようです。しかし、寝る前のアルコール習慣は、医学的にはおすすめできません。寝つきがよくなりぐっすり眠れているような気がしても、実は「睡眠の質」は落ちている可能性があるためです。睡眠の質が低くなると、翌日の眠気につながるだけでなく、将来的に認知症リスクが高まることを示唆する報告もあります。

睡眠は大きく2種類に分けられます。眠りにつくと、まず大脳皮質の活動が下がり、脳が深く休む「ノンレム睡眠」の状態になります。脳の活動は、約1時間後に再び戻り、夢を見やすい「レム睡眠」に移ります。レム睡眠中には日中の出来事が振り返られ、記憶が定着すると考えられています。

アメリカと中国の共同研究チームが2025年に発表した研究(Alzheimer’s & Dementia, 21(2): e14495, 2025)では、レム睡眠への移行に時間がかかる人ほど、アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβの脳内への蓄積や、異常なタウタンパク質の血中濃度が高く、脳の機能維持に関わるタンパク質「BDNF」のレベルが低いことが分かりました。寝つきをよくするための寝酒の習慣は、このレム睡眠への移行を遅らせる原因になり得るのです。

ただし、この研究は因果関係を示したものではありません。脳の衰えが先にあり、結果として睡眠が乱れている可能性もあり、まだ研究段階です。とはいえ、脳の健康という視点からもレム睡眠への移行は遅らせないほうがよく、次の点に注意するのがよいと言えるでしょう。

寝酒を寝る前のルーティーンにしてしまうと、入眠儀式として定着してしまう可能性もあります。「お酒を飲めばぐっすり眠れる」と思い込まず、生活リズムの乱れを整え、なるべくストレスをため込まないようにすることが大切です。「睡眠の質」を意識した生活を心がけることは、脳の健康を守る第一歩です。もし眠れない日が続く場合や睡眠薬を服用中の場合は、自己判断せず医師に相談しましょう。

さらに詳しく知りたい方は、「睡眠時間が長くてもダメ? 睡眠の質が悪いと認知症リスクは上がるのか」をあわせてご覧ください。

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