国家公務員には、一般的な行政事務とは異なる環境で働く職種があります。皇宮護衛官、刑務官、入国警備官、海上保安官などがその代表例です。また、警察官や自衛官にも、一般の行政職とは異なる給与の仕組みがあります。
こうした仕事では、一般的な行政職とは別の俸給表が適用されたり、勤務の特殊性に応じた手当が設けられたりしています。今回は、警察官・自衛官・海上保安官など、特殊性の高い仕事の給与の仕組みを見てみましょう。

一般行政職とは違う「専用の俸給表」がある
国家公務員の給与は、職務の種類に応じて複数の俸給表に分かれています。
・公安職俸給表(一):皇宮護衛官、刑務官、入国警備官、警察庁の一部職員など
・公安職俸給表(二):海上保安庁の職員のほか、検察庁、公安調査庁、少年院などの職員
・自衛官俸給表:自衛官
これらは、一般的な事務系職員に適用される「行政職俸給表(一)」とは別に設けられています。職務の内容や責任、勤務条件などを踏まえ、それぞれの仕事に適した給与体系となっています。
なお、一般に「警察官」という場合、その多くは都道府県警察に所属する地方公務員です。給与は各自治体の条例などに基づいて決まるため、国家公務員の公安職俸給表(一)の平均額とは別に考える必要があります。一方、警察庁の一部職員など、国家公務員として公安職俸給表(一)が適用される警察関係者もいます。
また、自衛官は特別職の国家公務員で、一般の国家公務員とは別の自衛官俸給表が適用されます。一般の国家公務員が職務に応じた俸給表を適用するのに対し、自衛官は階級に応じた俸給表が適用されるのが特徴です。
実際の給与水準は?
人事院「令和8年国家公務員給与等実態調査」によると、2026年4月1日時点の平均給与月額は以下のとおりです。
ここでいう「平均給与月額」は、俸給と一定の諸手当を合わせたもので、通勤手当や超過勤務手当などは含まれません。
・行政職俸給表(一):42万8451円
・公安職俸給表(一):41万5450円
・公安職俸給表(二):43万9144円
平均給与月額だけを見ると、公安職俸給表(一)は行政職俸給表(一)を下回る一方、公安職俸給表(二)は行政職俸給表(一)を上回っています。
ただし、公安職俸給表(二)は海上保安官だけでなく、検察庁や公安調査庁、少年院などの職員にも適用されるため、43万9144円は海上保安官だけの平均給与月額ではありません。あくまで、公安職俸給表(二)が適用される職員全体の平均です。
また、それぞれの平均給与月額には、職員の年齢や経験年数、役職などの構成も反映されます。そのため、平均額だけで「どの職種の給与が高い、低い」と単純に比較することはできません。
なお、自衛官は人事院の「国家公務員給与等実態調査」の対象となる一般職の国家公務員とは別の給与制度が適用されているため、この表には含まれていません。自衛官には、防衛省の職員の給与等に関する法律に基づく独自の給与体系があります。
危険・特殊な業務には「特殊勤務手当」がある
俸給とは別に、実際の勤務内容に応じて支給される手当もあります。
国家公務員の特殊勤務手当には、爆発物を取り扱う作業、災害応急作業、刑務作業の監督など、危険性や困難性のある業務を対象としたものがあります。人事院が定める特殊勤務手当は28種類です。
警察官については、都道府県警察の職員に支給される特殊勤務手当があり、自治体の条例によって内容が異なります。例えば、犯罪の予防・捜査、警ら、犯罪鑑識、交通捜査取締り、死体の取り扱い、爆発物処理、身辺警護、銃器犯罪捜査などに対する手当があります。
このように、警察官は地方公務員としての給与制度、自衛官や海上保安官などの国家公務員は、それぞれの法律や俸給表に基づく給与制度が適用されます。
自衛官は「階級」に応じた独自の給与体系
自衛官も、一般の国家公務員とは異なる給与体系を持つ仕事です。
自衛官には、階級に応じた自衛官俸給表が適用されます。また、職務の複雑さ・困難性が高く、勤務条件が特殊な配置に就く場合には「配置手当」が支給されます。
例えば、特殊作戦隊員手当、乗組手当、航空手当などがあります。
さらに、著しく危険・困難な勤務に従事した場合には「特殊勤務手当」が支給されます。災害派遣等手当、対空警戒対処等手当、海上警備等手当などがその例です。
このほか、期末・勤勉手当、扶養手当、通勤手当、住居手当、地域手当など、一般の国家公務員と共通する手当もあります。
また、駐屯地内に居住する自衛官などには食事・光熱水費が無料で提供されるほか、制服などの支給・貸与、自衛隊病院などでの医療も受けられます。こうした食事、被服、医療などの提供は、制度上「現物給与」とされています。
参照:自衛官の待遇・福利厚生
海上保安官・刑務官にも、それぞれ専門的な仕組みがある
海上保安官には「公安職俸給表(二)」が適用されます。ただし、先ほど説明したとおり、公安職俸給表(二)は海上保安官だけを対象とするものではありません。
海上保安官は、巡視船や航空機などを使った業務に従事することもあり、勤務内容に応じた手当が設けられています。
刑務官は「公安職俸給表(一)」の対象で、刑務所などで勤務する職員です。刑務所内での勤務という職務の特殊性を踏まえ、一般の行政職とは別の給与体系が適用されています。
「特殊な仕事」だから給与が一律に高いわけではない
警察官、自衛官、海上保安官、刑務官などは、一般的な行政事務とは異なる勤務環境にあります。そのため、職種に応じた俸給表や、危険性・勤務条件などに応じた手当が用意されています。
一方で、今回見た平均給与月額は、それぞれの俸給表が適用される職員全体の平均です。公安職俸給表(二)のように、複数の職種に適用される俸給表もあります。
そのため、平均給与月額だけで個別の職種の給与を比較するのではなく、それぞれの仕事に合わせてどのような俸給表や手当が設けられているのかを見ることが大切です。







