
日常生活は「些事の積み重ね」である。雑巾で拭いたらその雑巾を洗って干す、トイレットペーパーが残り少なくなっていれば次に使う人のことを考えて、新しいロールを出しておくなど、些事をする人がいるから生活は回っていく。家族みんなが少しずつ気を配ることが重要なのだが……。
夫は「些事」は知らんふり
共働きで結婚生活をすること14年。11歳と9歳の子がいるハルミさん(46歳)。同い年の夫とは、生活費も家事も基本的には折半することで協力しあってきた。
「でも折半だと思っているのは夫だけ。どこかずれてるんですよ、彼は」
ハルミさんは口を尖らせる。
「週末、休みのときに掃除機はかけてくれる。でも、置いてあるものを動かさずに、空いているところに掃除機をかけるだけ。私が次々にものをどけていくと、『なんだよ、めんどくさいなあ』って。置いてあるものの下を掃除しなければ意味がないでしょと言うと、じゃあ、どんどんどけていってよと。私はこれから風呂掃除をするんだから、責任もってやってよと言ったら、『たかが掃除に責任とか言うなよ』と不機嫌になるんですよね」
一事が万事。窓ガラスをきれいにしても桟は拭かない。その都度、ハルミさんはイライラを募らせる。
大事なワンピースがヨレヨレに
「私は月2回、1日と15日に玄関やバスルームの足拭きマットを洗濯することにしているんです。あるとき夫が『マット類の洗濯をしておいた』というので、まさかと洗濯機を見ると、嫌な予感が当たりました。私、自分の大事なシルクのワンピースを“おしゃれ着洗い”していたんです。夫は洗濯機の中も見ずにマット類をバサッと入れて、“頑固汚れ用”で洗ってしまった。ガンガンに洗われて、シルクのワンピースはヨレヨレ。泣きましたね。どうして中を見ないのよと怒鳴りつけてしまいました」
「だいたい注意力が足りない。洗濯機を開けたら、何か入ってないだろうかと確認くらいするはず、仕事もできないんじゃないのか」とハルミさんは夫を責めた。それほど大事なワンピースだったのだ。
「たかが洋服だろ。そんなもののためにきみはオレのプライドをズタズタにした」と夫も憤り、このときは1週間も口をきかなかったという。
子どもの誕生日に買ってきたケーキを
夫には「妻はいつも自分に対して怒っている」と思われているようだとハルミさんは言う。ふだんは温和だし、子どもたちとの会話も密だ。ハルミさんが落ち込んだときには必死で笑わせてくれる優しさもある。
「だけど日常生活における気配りが、びっくりするくらいできないわけですよ。それこそ名前のない家事をどれだけ私がこなしているか。風呂掃除をするときは、湯船だけじゃなくて床も掃除してね、といちいち言わないといけない。私が残業のときは夕飯を作ってくれたりもするんだけど、栄養のことは考えない。カレーを作ったときはカレーだけ。せめてサラダと味噌汁くらいつけて、栄養的に問題だからと言ったら『また怒るんだ』と。私が何を求めているのか分かってないんだなとつくづく思います」
つい先日、下の子の誕生日があり、夫は家族4人にしてはやたらと大きなホールケーキを買ってきた。大きめに切っても、もう1回全員で食べられるくらいの大きさだった。
「翌日の子どもたちのおやつにしたいから切って冷蔵庫に入れておいて」と夫に言ったんです。あとで冷蔵庫を見たら、残りを2つに切って箱に入れたまま冷蔵庫にしまってある。箱が大きいから他のものが入りきれずに、チルドとかに入れ替えてるわけです」
そもそも残りを子どもたち二人に食べさせるのは量が多すぎる。これはやはり4つに切るべき、箱が邪魔になるから皿に入れてラップをかけた方がいい。チルドに入れたものは冷蔵庫に入れ直してと、ハルミさんは「私だって言いたくないけど、言わないと分からないから。いちいちいじけないでね」と言いながら指示をした。
相入れない夫婦の未来は……
「考えたら分かるでしょ」と、よくハルミさんは口にするという。それだけ夫には考えが足りないということなのだろう。ハルミさんから見れば、そういうことになる。
「だけど夫にしてみると、『別に箱に入れたままだってかまわないし、冷蔵庫のものをチルドに入れたってたいした違いはないだろう』ということになる。そうやって、何でもいいやという生活をするのが私は嫌なんです」
夫がチルドに入れたのは、作り置きの総菜だった。冷凍寸前の温度帯になるチルドには不向きだ。せっかくおいしく作ったのに味が落ちるとハルミさんはムッとした。冷蔵庫とチルドの違いを説明しながら、「こんなこと自分で調べてよ」と思っていた。
「きみは細かいと夫は言うけど、夫が何も考えていないだけだと私は思ってる。本当に、会社できちんと仕事ができているんだろうかと心配になります」
そこまで言うのはどうかという感じではあるが、ハルミさんは本気で夫の立場を心配しているようだ。このまま「子どもが独立したあとの夫婦」を考えるとめまいがすることもあるとハルミさんは苦笑した。







