高齢ドライバーの事故が社会問題となる中、免許返納を検討する人も増えています。車を手放すと生活はどう変わるのか、不安に感じる人も多いかもしれませんが、車を持たない生活に切り替えた場合、家計にはどれくらいの変化があるのでしょうか。今回は10年間での差を試算します。
さらに、All Aboutマネーガイドの舟本美子さんに、車生活(車の維持費や交通費)の見直しについてアドバイスをもらいました。
車を持ち続けた場合のコスト
まずは車を所有している場合の費用です。車種や利用頻度、地域によって差はありますが、今回は一例として、次のような毎月の費用を想定します。
自動車保険:月5000円
ガソリン代:月8000円
駐車場代:月1万円
合計すると月2万3000円、年間で約27万6000円となります。
ここに、車検(普通車で10万円程度、年額にして約5万円を想定)や自動車税(普通車で約3万円を想定)、定期的なメンテナンス(約3万円を想定)といった年単位で発生する支出も加えてみましょう。
これらを合計すると、年間の維持費は約38万6000円かかる計算となります。
自動車保険やガソリン代は軽自動車と普通自動車などで異なるほか、駐車場代や車の利用頻度は都市部と地方などの環境で異なりますが、年間で40万円前後の維持費がかかるケースは珍しくないでしょう。
また、10年の間には車の買い替え費用が必要となったり、修理代がかかったりすることも想定されます(今回の試算では考慮していません)。
免許を返納、車なし生活だとどうなる?
次に、免許を返納し、車移動の生活をやめて公共交通機関中心の生活に切り替えた場合を考えます。適度にタクシーを利用するほか、米など重いものの購入はネットスーパーや生協を利用することも想定してみます。
電車・バス代(※1):4000円
タクシー利用(※2):1万2000円
配送料(※3):2000円
合計すると月1万8000円、年間で21万6000円となります。
※1:総務省の家計調査(2025年)65歳以上、自動車維持費などを除く交通費の平均3650円を参考
※2:通院など往復3000円程度の利用を月4回想定
※3:主要ネットスーパーなど500円程度の送料を月4回想定
また、多くの自治体ではシニア向けの割引制度(シルバーパスなど)があり、さらに交通費を抑えられるケースもあります。
住んでいる地域や移動の頻度によっても異なりますが、このように車あり・なしの費用を比べると、その差は年間で約17万円、10年で約170万円となります。
専門家のアドバイス
車は確かに行きたい場所へスムーズに移動できる便利な道具です。特に足腰の衰えを感じ始めるシニア世代にとって、その利便性は手放しがたいものでしょう。
しかし、車は便利な半面、常に危険と隣り合わせです。どんなに慎重に運転していても、加齢による判断力の低下から車体をこすったり、予期せぬ事故につながったりするリスクは避けられません。
最新の安全装置を備えた車への買い替えも1つの手ですが、それには多額の費用がかかり、家計の固定費をさらに圧迫してしまいます。一方で、多くの自治体では免許返納者向けに「シルバーパス」の発行や「タクシー補助券」の配布など、手厚い支援制度を設けています。
ある程度の年齢になったら、こうした制度を賢く利用し、車を手放す決断をすることも大切です。病院や美容院、日々の買い物をできるだけ近所で済ませるよう「生活テリトリー」を少しずつ縮小していく。そうしてコンパクトな暮らしへシフトすることは、事故のリスクを減らすだけでなく、歩く機会を増やして健康を維持することにもつながります。
不便さを嘆くのではなく、新しい生活への「前向きな移行」として、ストレスなく工夫を楽しんでいきましょう。







