人間関係

「カレーの香り」がきっかけで病院へ……。「いつも機嫌のいい夫」が人知れず抱えていた悩みとは

疲れやストレスから、感覚過敏・感覚鈍磨の症状が現れる人がいる。匂いや音などに強く反応し、パニックになってしまうことも。44歳女性の夫は、ある日突然嗅覚過敏になり受診。妻は、15年間気付かなかった夫の負担を知ったという。※サムネイル画像:PIXTA

亀山 早苗

亀山 早苗

恋愛 ガイド

どうして男女は愛し合うのか、どうして憎み合うのか。出会わなくていい人と出会ってしまい、うまくいきたい人とうまくいかない……。独身同士の恋愛、結婚、婚外恋愛など、日々、取材を重ねつつ男女関係のことを記事や本に書きつづっている。

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カレーの匂いがきっかけで夫の異変に気付くことに(画像:PIXTA)
カレーの匂いがきっかけで夫の異変に気付くことに(画像:PIXTA)

いわゆる五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)、温度感覚、そして身体の力の入れ方や身体バランスを司る感覚などが過敏、あるいは鈍麻している人たちがいる。人は多かれ少なかれ、好きな匂いや嫌いな匂いがあるし、下着のタグが不快だとか、ある種の音だけが苦手だとか、快不快があるものだ。もちろん個人差も大きい。

これらは発達障害と関係があるとされているが、もちろんそれだけが原因とはいえない。感覚過敏、感覚鈍磨は病気ではないのだが、それによって日常生活に支障が出たり本人がパニックになってしまうような場合は、専門医にかかった方がいいようだ。

急に匂いに敏感になった夫

もともとおおらかで、ストレスなど感じないかのような5歳年上の夫が、1年ほど前、ある日を境に急に匂いに敏感になったと、スミさん(44歳)は言う。

「料理が好きで、週末はよく家族のためにと作ってくれるんですが、そのときは『カレーを作ろうと思ったんだけどスパイスの香りが立ち過ぎて、うまく作れなかった』と言ったんですよ。でも食べてみたら、とてもおいしかった。本人はおかしいなと言いながらも食べていましたが。それを機に、例えば残業だから夕飯はいらないと言って深夜遅くに帰宅しても『煮魚の匂いが玄関までする』と言ったりする。もう5時間も前に子どもたちと私が食べて片づけてしまったのに」

そのときたまたま2階から下りてきた中学生の娘に、煮魚の匂いがするかと尋ねると「もうしないでしょ。私は感じない」と言っていた。その後も、外食時にこの料理には隠し味にほんの少しみそが入っていると思うなどと言って店主を驚かせたりしたことが続いた。

「もはや犬並みの嗅覚だと家族でおもしろがっていたんですが、私がパートをしている職場仲間にそんな話をしたところ、1人が『それってストレスとか何かの病気とかかもよ』と言いだして。怖くなって調べたら、やはりストレスが大きく関わっていることがあるらしい。夫に限ってとは思いましたが、それとなく伝えてみたんです」

すると夫は、思い当たる節があるような表情を見せた。いつも元気にしているし、家族に不機嫌な顔も見せたことのない夫だったが、「夫には夫の悩みがあるはず」とスミさんも気付いた。

強制的に病院へ

「悩みがない、ストレスがないなんていう人はいませんよね。きっと夫にも何かある。私はいろいろな愚痴を友人や夫にこぼして発散させているけど、もしかしたら夫は解消できずにストレスを積み重ねているのではないか。そう感じて、ほぼ強制的に病院に連れていきました」

いろいろ検査をしたが特に悪いところはなく、結果はやはりストレスと、男性の更年期によるホルモンバランスの乱れではないかということだった。

「夫は照れくさそうに『男性機能が衰えてきていることに不安はあった。仕事上もいろいろ責任ある立場になって苦しいことが増えたんだ』って。吐き出して楽になるなら言ってよと思わず叱るように言ってしまいました」

この夫の感覚過敏事件で、スミさんは結婚後15年にわたって夫に頼り過ぎたのではないかと反省したが、夫は原因が分かっただけで安心したのか、嗅覚過敏は解消された。更年期症状の解消のために運動不足を解消すべくジムに通いだしたという。

「今ではすっかり元通りですが、人間はいつ何時何があるか分からないということだけは学びました」

スミさんはニッコリしながらそう言った。

特定の音だけが苦手

「私はペットボトルを潰す音がどうにも我慢できないんです」

そう言うのはリカコさん(33歳)。会社内で、通っているスポーツジムで、あるいは道の真ん中などで、とにかく自販機前に人がいるときはあわてて通路を変更するかイヤホンを耳に差し込んでスマホの音楽を聴くことにしている。それが彼女の危機管理なのだそう。

「あの音が苦手になったのは3年ほど前。きっかけはなくて、ある日突然嫌だなと思ったんです。それからどんどん耳をふさぐようになっていって、あるとき社内でたまたま潰している人の後ろを通りかかったとき、その人の手からペットボトルをもぎ取っちゃったんですよ。やめて、と叫びながら」

呆然としている他部署の先輩に平謝りして事情を説明し、会社と提携している医療機関に赴いた。その後、紹介された耳鼻咽喉科などを受診して検査もしたが原因は不明だった。

苦手なものをなんとか回避していくしかない

「ペットボトルを潰している現場を避けるしかないという結論に至りました。ただ、自分だってペットボトルの飲み物を利用することはある。うちの地域では潰して資源ゴミの日に出さないといけないんです。でも潰す音を聞くと、心がざわざわとしてくる。ペットボトルをいっさい買わないようにしようと思っても難しくて。探していたら、中の空気を吸引して潰すタイプの器具を見つけたんです。イヤホンで思い切り音楽を聴きながら、それを使っています。つぶしたものはそうっとビニール袋に入れてゴミ出ししています」

工夫すればなんとかなると彼女は言った。ただ、今付き合っている彼にはあらかじめその件は伝えてあるのだが、時々彼が忘れて散歩の途中で潰し始め、リカコさんが飛び退くことがあるらしい。

人は誰しも苦手なことがある。心身に大きな支障がないなら、そう思って回避していくしかないのかもしれない。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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