
この春、進学や就職でわが子が自分の手から離れ、喪失感をおぼえたり生きがいを見失ったりしている親御さんも多いのではないでしょうか。特に、娘と姉妹のように仲がよかったという母親は「娘ロス」に陥りがちです。だれよりも愛情をかけて育ててきたからこそ、娘が手元から離れることがつらくなる気持ちは非常によく分かります。
なぜ「娘ロス」に陥ってしまうのか。そしてそこから脱却する方法について解説します。
主語が「自分」ではなく「子ども」になっていないか
娘と距離ができてしまうことで喪失感をおぼえてしまうのは、母親自身の人生の主語が「自分」ではなくなっているからだと言えます。子どものことを考えるあまり、子どもを離れた場所から見守ることや自分を優先することに罪悪感を持ってしまうという母親は、私の周りにもたくさんいます。
子どものことを思うからこそ、人生の軸が「自分」ではなく「子ども」になってしまうのはよく分かりますし、それ自体がよくないわけではありません。
ですが、娘と自分の境界線が曖昧(あいまい)になってしまうのは非常に危険です。親があまりに子どもの人生に介入し過ぎて一喜一憂していては、親子で共倒れしてしまうことになりかねないからです。子どもが今直面している課題(例えば進学、就職、独立など)は子ども自身の課題であり、親の課題ではないことを認識することが大切です。
私は「娘ロス」に関するお悩みに対して、まずは「親と子どもの課題を分離して考える」ことが必要だとお伝えしています。「親の手から離れ独立(進学)する」ことは子どもが置かれた状況であり、それに対して親が自分のことのように過度に動揺する必要はないのです。
子どもが手元から離れて喪失感をおぼえるからといってすぐに手を差し伸べるのではなく、もし本人がつらそうであれば、ほんの少し手を差し伸べたりアドバイスを送るという形でアシストするのが、いい距離の保ち方です。
寂しさをグッと堪え「親鳥」として見守る勇気
私は現在、コーチングの思考を基に保護者や教育関係者に講演を行っていますが、コーチングの基本は「相手の話に耳を傾け、受け止め、意見を引き出す」こと。これは子育てにおいても大原則と言えると思います。つまり、子育てこそ長い目で見たコーチングと言えます。
さらに言えば、子育ては鳥の啐啄(そったく)のようなもの。啐啄とは、ヒナが殻を破ろうとするタイミングで、親鳥が外側から殻をつついて孵化(ふか)を助けることです。
つつくのが早過ぎても遅過ぎても、安全に生まれてこない。手助けのタイミングの見極めが大事なところは、まさに人間の子育てそのものです。「娘ロス」を感じているということは、まさに子どもが親鳥から離れて羽ばたこうとする瞬間。ここはどっしりと構えて見守りたいところです。
適切なタイミングで適切な手助けをする。しかし、あくまで子どもの課題は本人が自分で解決することとして、親は過度に自分事とせず、直接介入しないという大原則がとても大切です。
愛情ゆえの「期待」が喪失感を深くする
「娘ロス」を抱える母親の中には、娘が手元にいた頃、知らず知らずのうちに過度な期待や完璧を求め過ぎていたケースも少なくありません。愛情が深いからこそ、受験や習い事に一緒に向き合い、気付けば「もっとできるはず」「なぜ頑張れないの?」と感じてしまっていた。そんな記憶が、娘が離れた後の喪失感をより深くしてしまうことがあります。
しかし本来、「受験に合格する」「習い事で結果を出す」という課題は、あくまで子ども自身がクリアすべきことで、親の役割は、子どもが夢や目標をかなえられるように環境面や経済面を整えてあげること。そして、子どもが悩んでいるときに気軽に相談できる関係を築いておくことだったのかもしれません。
「娘ロス」の今、子どもとの関わり方を振り返ること自体が、これからの距離感を見直すヒントになるはずです。
親がコントロールできるのは「環境」だけ
私自身も中学生の娘がおり、先日、高校受験に向けて塾に通いたいと相談されました。私は塾に通いたいという彼女の考えに対して「本当にちゃんと通うのか。途中で辞めたいと言い出したりしないか」と言うのではなく、「じゃあ、どんな塾がいいと思うか、実際に体験や見学をしに行くといいかもね」とだけ伝えました。
親が前者のような考えでいると、結果的に本人が塾にしっかり通わなかったり成績が上がらなかった時に「あんなにちゃんと行けと言ったのに」「どうして塾にまで通わせているのに成績が上がらないんだ」と勝手にがっかりしてしまうことになるのです。
距離が近い親子という関係だからこそ、自分がコントロールできることとできないことを区別する。つまり、自分と子どもの境界線を明確にして関わることが重要なのです。娘が巣立った後の「娘ロス」もまた、この境界線を見直すきっかけになるかもしれません。
「娘ロス」という切ない時間は、







