<目次>
無理を重ねて「帰省ブルー」に
年末年始が近づくと、私が運営する夫婦仲相談所には毎年決まって同じ言葉が増えます。「帰省のことを考えるだけで胃が痛い」「義実家に行くのが憂鬱(ゆううつ)」。いわゆる「帰省ブルー」です。メディアでも、この「義実家への帰省がしんどい」という空気感は繰り返し取り上げられてきました。そんな中で最近、静かに広がっているのが「セパレート帰省」です。既婚女性158人を対象とした生活総合情報メディア「ヨムーノ」の調査では、年末年始に「セパレート帰省をする予定」12.0%、「したことがある」14.6%で、さらに「してみたい」まで含めると前向き派が63.9%という結果も出ています。
数字だけ見ると「そんなに多いの?」と驚くかもしれません。でも私は、この流れは“わがまま”ではなく、夫婦が継続的にラブラブでいるための現実的な工夫だと感じています。頑張り屋さんほど、帰省で無理を重ねて、ある日プッチンと切れてしまうからです。
セパレート帰省は「愛が冷めた」からではない
誤解が多いと思うのでまずお伝えしますが、セパレート帰省は「夫婦仲が終わっているサイン」とは限りません。むしろ夫婦仲が壊れないように“負担の偏り”を予防する『早めに飲む風邪薬』のようなものです。帰省は本来、「家族に会う」楽しいイベントのはずなのに、実態は「家事・気遣い・遠慮」の3ブルーに染まりがちです。特に義実家だと、“客”ではいられないのに、“実の家族”ほど自由でもない。そこが一番の疲弊ポイントです。ここで無理をしてしまうと、怒りの矛先が「義実家」だけでなく、横にいる夫(妻)へも向いてしまう。それが一番もったいないことです。
では、セパレート帰省を選んだ夫婦は、何がきっかけで、どう落ち着いたのか。相談現場でよくあるパターンを紹介します。
汚い義実家。衛生感覚が合わず、心が折れた (美咲さん・38歳)
美咲さん夫婦には小学生の子どもがいます。3人で夫の実家に泊まるたび、洗面台が微妙に汚れていたり、寝具にダニがいそうだったり、「このお皿いつ洗ったの?」というような食器が棚に無造作に積まれていたりで、ウッ……となっていました。いちいち洗って使ったり、シーツをこっそり洗濯したりと、衛生面が気になってやることが多かったといいます。帰宅後にはどっと疲れが出ました。でも、夫に伝えると「そんなに気になる?」「俺、病気せずにスクスク育ったよ」で終わってしまう。ついに美咲さんは、帰省前に不眠症状と動悸が出るようになり、相談に来られました。
美咲さんには、夫への伝え方として “義実家批判”にしないようにと言いました。
「あなたの親が無理なのではなく、私が無理すると、気持ちが疲れて、あなたと子どもまで嫌いになりそうで怖い。関係を壊したくないから、今年は私だけ自分の実家に帰るね」
美咲さんは夫にそう伝えましたが、夫は最初は不満顔。でも、夫が子どもを連れて単独帰省(父子帰省)してみると、滞在中の段取りや気配りが“誰かの労働”で回っていたことを強く実感したそうです。
翌年からは「滞在を1泊にする」「全員での外食を増やす」など、帰省中の過ごし方を一緒に考えるようになりました。
10年続いた「おせち労働」に我慢の限界突破(恵理さん・38歳)
恵理さんの義実家は、年末に親族が集まり手作りおせちを囲むのが恒例でした。義父は「既製品NG」「味付けは基本“さしすせそ”」と昔気質で、こだわりが強く、恵理さんは毎年“台所の戦力”として拘束されます。恵理さんは、この状況を脱したいと真面目に考えました。お題は「帰省の不機嫌を改善するには?」です。
- 夫の実家への帰省は日帰り、または最大1泊
- おせちは「持ち寄り」か「外注」を二人で親に提案
- 1年ごとに夫が単独帰省し、恵理さんは自分の実家に帰る
翌年から恵理さんの負担が軽くなったのは言うまでもありません。「行くor行かない」の二択ではなく、「どう行く??」を夫婦で考え出せた成功例です。
子どもがいないからこそ、義実家の一言が刺さる (沙耶さん・41歳)
DINKsカップルの沙耶さん。ふだん仲はいいのに、帰省シーズンだけ空気が悪くなる典型的な帰省ブルー夫婦です。きっかけは、義実家で繰り返される「いつ子どもつくる?」「仕事ばかりでむなしくない?」という“悪気のない一言”。沙耶さんは笑って流してきましたが、年末年始は連休で滞在が長く、逃げ場がない。さらに自宅には高齢の猫がいて、ペットホテルに預けるにしても長期不在にするのがかわいそうという心配もありました。
そこで夫婦はこう決めました。
- 年末は各自の実家へ(沙耶さんは日帰り+猫優先)
- 年始に夫婦で一度だけ義実家へ顔を出す(滞在は3時間)
- 「夫婦で選んだちょっと上質の手土産」と「近況写真」を用意する
それをやり始めてから、沙耶さんは年末年始に“夫を嫌いにならずに済んだ”と言います。夫もまた、親の何げない言葉が妻を傷つけている現実を初めて把握できました。
DINKsカップルほど、帰省の場で“家族観の押し付け”が起きやすい。だからこそ、先に予防線を引くことが、長期的には親子関係も守ります。
セパレート帰省がうまくいく夫婦の共通点
セパレート帰省は、やり方を間違えると「絶縁宣言」に見えてしまいます。ですが、次の3点を押さえると「いいじゃん! コレ」と受け止め方が変わってきます。■負担は何かを事前チェック
帰省の話し合いは感情が燃えやすいので、まずは負担を洗い出しましょう。移動時間、泊数、料理当番、子どもの世話、手土産、お年玉など……。
「私は何がつらいのか」「あなたは何を大事にしたいのか」「なぜ気にならないのか」を、30分だけでも棚卸ししてみてください。ここで“私だけが我慢してる”が言葉になると、夫婦がやっと同じステージに立てます。
■親への説明は“実子側”がする
これが最重要。妻が義実家にプレゼンすると角が立ちます(これは国民性……)。夫が言う、もしくは夫婦連名で短いメッセージにする。代替案を必ずセットにする。「行けません」だけだと拒絶になります。
例えば、こんな案があります。
- 日帰り帰省にする
- 滞在時間を区切る
- オンラインで顔を見せる
- 春先に改めて会いに行く
セパレート帰省は、夫婦の「やさしい現実主義」
私は、セパレート帰省を“クールな合理主義”だとは思いません。むしろ、我慢の貯金が尽きて関係が壊れる前に、やり方をアップデートする「やさしい現実主義」です。帰省は、親孝行の場であると同時に、夫婦のチームワークが試される場でもあります。誰かの“我慢”で成り立つと、近い将来、夫婦間にヒビが入ります。夫婦がチームとして親に失礼にならない形を探す。そのための選択肢として、セパレート帰省を引き出しに入れておいてください。
<参考>
・「年末年始の帰省がつらい理由とは?義実家に「気が重い」声と、6割が前向きな新しい帰省スタイル」(株式会社ベビーカレンダー)











