こうした課題に対して、精神科医・和田秀樹さんの著書『体力がない人の仕事の戦略』では、単なる精神論ではなく、認知療法という科学的手法に基づいて「別の視点を持つ」というアプローチで「少しでも楽なやり方を探す」考え方を伝えています。
今回は本書から一部抜粋し、精神科医の視点で「ど根性主義」から抜け出し「結果に目を向ける」大切さを解説します。
ビジネスの世界に残る「ど根性主義」
日本人には、「コツコツと地道に取り組む」とか、「真摯な姿勢で臨む」ことを美徳と考える習性があります。「真面目に仕事をやっていれば、いつか必ず成果が出る」と考えたり、「頑張っている自分を褒めてあげたい」などと言い出す人もいますが、その方法論が間違っていたら、いくら頑張ったところで成果が出ることはありません。ムダに体力を消耗しないためには、仕事のプロセスではなく、結果を出すための最短距離を意識した行動を心がける必要があります。スポーツの世界などは「勝ってナンボ」の結果第一主義ですから、試合に勝てなければ、コーチを変えるとか、練習メニューを変更するなど、次々と改善を試みる合理的な姿勢が定着していますが、ビジネスの世界では、いまだに「ど根性主義」が残っていたり、結果ではなく、プロセスにこだわる傾向が見られます。
頑張っていれば評価された時代は、はるか昔に終わっていますが、令和の時代になっても、うさぎ跳びを推奨したり、「練習中は水を飲むな」と厳命するのに似た非合理的で、非科学的な根性主義が平然と繰り返されています。
「残業はするな」「成果だけはもっと出せ」
働き方改革によって、「残業はするな」、「長時間労働はダメ」といっておきながら、そのための具体的な対策を何も示さずに、「成果だけはもっと出せ」というのは、まさに「根性で頑張れ」といっているようなものなのです。いくら頑張ったところで、結果が出なければ何の意味もありません。逆にいえば、どんな手抜きをしても、どれだけ小手先のテクニックを使っても、結果さえ出していれば、どこからも文句は出ないものです。
体力不足の人が陥りがちな「べき思考」
自分には体力がないと悩んでいる人の多くは、プロセスばかりにこだわって、「自分はこうあらねばならない」とか、「こうあるべきだ」と考えがちです。こうした偏った考え方を、心理学では「べき思考」といいます。「べき思考」とは、「すべきである」とか、「すべきでない」といった義務感や固定観念に捉(とら)われて、自分自身を厳しく評価する思考パターンで、不安や罪悪感から生じる「認知の歪(ゆがみ)」の一つとされています。結果ではなく、プロセスに執着してしまうと、ムダにエネルギーを使い果たすだけでなく、メンタルやマインドにも悪影響が出ます。大事なのは、結果に向けてその最短距離を探し出すことですから、自分の行動の目的を見誤らない意識を持つことが大切です。
和田 秀樹(わだ・ひでき)プロフィール
1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学学校国際フェローを経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。著書に『感情的にならない本』『70歳が老化の分かれ道』『80歳の壁』『なぜか人生がうまくいく「明るい人」の科学』『なぜか人生がうまくいく「優しい人」の科学』など多数。







