靴を脱ぐ男性
「実家に帰るために時々新幹線に乗りますが、特に嫌なのは、たまたま隣に座った男性が靴を脱ぐこと。私の統計によれば、靴を脱ぐ男性の多くが足が臭い(笑)。異臭がすると思って見ると、だいたい隣の男性が靴を脱いでいるんです。せっかくおいしい駅弁を買ったのに食べる気も失せます」しかめ面でそう言うのはタエコさん(36歳)だ。彼女は東京駅から新大阪まで新幹線に乗るが、今まで何度もそういう目にあっているという。
「ただ、靴を脱がないでほしいと言っていいものかどうかいつも悩むんです。臭いから脱がないでというのは言い過ぎなのかもしれないし。ただ、本人は気づいてないのだろうから言ってやりたいとも思うし。あるときはどうしても我慢できずに自由席に移りました。自由席を1つ奪ってしまったのは申し訳ないけど、私の心身の健康には変えられないと思ったので」
絶望の旅になる
飛行機の中で靴を脱ぐ人はもっと多いだろう。長く乗っている海外便なら、靴を脱いだ方が楽ではある。足が臭いという自覚があれば、通気性のいい靴、消臭力の高い靴下を利用するだろうが、自覚がない場合は他人がどうこうできるものでもない。そもそも、足の指の間を毎日、きちんと洗えている人がどのくらいいるかも疑問だとタエコさんは言う。「足は意外と汗をかくものなんですよね。私もブーツなどを履いていると、脱いだときに我ながら臭いと思うことがあります。ブーツの中はきちんと消臭効果のあるスプレーをして、毎日、同じものを履かないとか、自分の足もちゃんと洗うとか、いろいろできることはあると思います」
隣に座るのが「オジサン」であるだけで「席ガチャ、はずれた」と思うのに、さらにその男性がいきなり靴を脱いで臭かったら、完全に絶望の旅になるとタエコさんは苦い表情で笑った。
前の席をやたらと押したり蹴ったりする人
「飛行機や新幹線で、後ろの席から押されたり蹴られたりすることってありますよね」サキさん(32歳)はそう言う。確かに後ろの席の人が前の物入れにペットボトルを入れたり、飛行機だと常備されている雑誌を出したり入れたりするたび、背中がぐいと押されるようなことになる。
「その程度ならまだしも、時々何が気に食わないのか妙にぐいっと押したりする人がいるんですよ。どうなっているのかと見たら、狭いのに足を組んでその足でぐいぐい押している。年配の男性でしたけど、『背中が気持ち悪いのでやめてください』と言ったことがあるんです。その男性『ああ?』という感じで知らん顔。仕方がないのでCAさんにこっそり話しました。注意してくれたけど、しばらくするとまたぐいっとくる。国内線だったから我慢しましたが、あれを長時間やられたら、こっちもキレそうでした」
相手が子どもの場合もあった。5、6歳の男の子が両手で前の席をぐいぐい押して遊んでいたらしい。子どもだと確認したので、サキさんは隣のお母さんらしき女性に「ちょっと押されて……」と言ってみた。
他人に注意するのは難しい
「するとその女性、子どもの頭をいきなりパーンとはたいて、『何やってるの!』と激怒。びっくりしました。子どもはギャン泣きしだすし、周囲は迷惑そうに見ているし。そんなつもりじゃなかったのに、なんだか私が悪いことをしたような気持ちになりました。もう少し穏やかに注意してくれればいいだけだったのに……」なんとも居心地の悪い数時間を過ごすことになったとサキさんは言う。
他人に注意するのは、ことごとく難しいものなのだろう。自分だけが迷惑をこうむっているなら我慢してしまおうと思う人が多いのもうなずける。
「それでもどうしても我慢できないことはあります。それ以来、飛行機ならやはりCAさんを頼るしかないのかなと思うようになりました」
注意する方も葛藤したあげくのことだ。もし注意される側になったら、まず冷静に対処するしかないのかもしれない。








