亀山早苗の恋愛コラム

愛のない23年の夫婦生活の先には……。「離婚しない」選択をした50歳女性の決意

子どもたちが成人し、この先の生活を考えるようになったという50歳女性。お見合い結婚した夫への愛情はなく、夫が病気になっても面倒を見る自信はない。だが、1年考えた末、女性は離婚しないことを選んだ。その「決意」とは。※サムネイル画像:PIXTA

亀山 早苗

亀山 早苗

恋愛 ガイド

どうして男女は愛し合うのか、どうして憎み合うのか。出会わなくていい人と出会ってしまい、うまくいきたい人とうまくいかない……。独身同士の恋愛、結婚、婚外恋愛など、日々、取材を重ねつつ男女関係のことを記事や本に書きつづっている。

プロフィール詳細執筆記事一覧
気の合わない夫との未来とは(画像:PIXTA)

気の合わない夫との未来とは(画像:PIXTA)

50歳。半世紀生きてきて、さてこれからどうしようと考える女性たちも多いのではないだろうか。この先も気の合わない夫と生きていけるのか、家庭内別居をするか、はたまた離婚をするか。子どもたちが大きくなってきたからこそ、そんなふうに迷うこともあるだろう。どんな選択肢もある。そう思っていろいろ考えてみるのも悪くはない。

子どもたちが成人して

「昨年末、下の子が18歳になり、今年の春には大学に進学。上は来年、大学を卒業して就職します。このタイミングで私が今年、ずっと考えてきたのは、さて、私はどうしようということでした」

深刻な面持ちでそう言うリカコさん(51歳)。子どもたちが小さいころから、夫とは反りが合わない、家族観が違うと思いながらも、子どものためだけに生きてきた。

「夫は家事はもちろん、子どもたちの面倒をみることもなかった。毎日、自分だけおかずをよけいに一品つけるように要求、『オレが倒れたら、おまえたちは生活できないんだからな』と脅しともとれるような発言を繰り返してきました。いつか離婚してやる、子どもたちが大きくなったら復讐してやる。そればかり考えて生きてきた」

それでも唯一、リカコさんが夫を評価しているのは、生活費だけは出してくれたことと子どもたちの進路を阻害しなかったことだ。夫は高卒で努力しながら、会社で這い上がってきた人。そのがんばりを見続けてきた夫の親戚が、リカコさんの知り合いを通して見合いを設定したことから結婚へとつながった。

毎朝のように夫が残すメモには……

「当時、私は27歳、夫は30歳。頼りになる人だと思っていました。お見合いをしてからデートしたのは2回だけ。どうしてもと請われて結婚したんです。かなり古風でしょう? でも私はそれでいいと思っていた。私は大卒なんですが、当時、仕事に疲れていた。不倫している上司との関係もこじれていて、なにもかも嫌になっていたんです。不倫がバレて結婚が破談になってもいいしと思っていたのですが、そこまで調べられなかったみたいで。この機会を逃したら、もう結婚なんてできないと思い込んでもいました」

夫が多少威張るのは許せたが、「おまえらの生活、人生はオレが握っている」という夫の考え方は嫌だった。夫は毎朝のように、メモを残して出勤する。そこには汚れているから掃除しろ、冷蔵庫の中をきれいにしろと事細かに書かれていた。

「キッチンの窓際の桟が汚れているとか、バスルームのシャンプーなどが置いてある棚が汚いとか、本当に細かいんです。子どもたちが4歳と0歳というときにも、メモはしょっちゅう置いてあった。こっちは昼食抜きでも子どもたちの面倒を見なければいけないのに、そんなことはまったく想像もしなかったみたいです」

つらいとは言えなかった。そんな中で、なんとか二人の子を育て上げたのだ。これからは自分のために生きてもいいのではないか。そう感じていた。

夫を「利用」して生きていこうと決めたワケ

1年間、考えた末にリカコさんは離婚は避けようと決めた。パートしかしたことのないリカコさんが、離婚後も今の生活を保てるとは思えなかったからだ。

「子どもたちは私が離婚を決めるのではないかと思っていたようで、『応援する』と言ってくれたんですが、子どもたちに迷惑をかけたくはない。生活費を少しずつ残したりパートで稼いだお金をやりくりして貯めたりもしたので、今後は自分のために少しお金を遣ってみたい、何か好きなことをやりたいと思っています。一気に離婚しても、たぶん、私は生活できない。きれいごとを言っても自立できないんです。だったらそれを前提にして、夫を“利用”した方が賢いのではないかと……」

ずるいのは分かっている。愛情もないし、もし夫が病気になっても面倒を見る気になれるかどうか自信はない。ただ、今すぐ全部手放して自由になったとしても決して幸せを感じることはできないだろうとリカコさんは判断した。

自分も夫に利用されている

これもまた選択肢の1つだろう。子どもたちが二人とも家を離れたら、また考えは変わるかもしれない。夫は自身の休日にリカコさんが出掛けることを極端に嫌がる。

「家政婦がいなくなったら、オレの三食はどうするんだということなんでしょう」

リカコさんは冷たい口調でそう言う。

自分は夫の生活のために「利用」されている。だったら自分も夫を「利用」しよう。そう考えて、今は静観しようと決めたと彼女は言った。

「悔しいけど、あんな夫を選んだのは私ですから」

諦めたような、それでもまだ何かを期待しているような表情だった。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

カテゴリー一覧

All Aboutサービス・メディア

All About公式SNS
日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
公式SNS一覧
© All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます