今回は、個人向け国債「固定5年」と、ネットで預け入れられる銀行の高金利「5年満期定期預金」に焦点を当て、それぞれ10万円を預けた場合、満期となる5年後に受け取れる利息はどの程度違うのか、具体的な金額で比較します。さらに、5年満期を選ぶ理由や注意点についても考えてみましょう。※金利などの情報は2025年12月時点。
個人向け国債・固定5年を「金利1.35%」で10万円購入、5年後にもらえる利息はいくら?
個人向け国債の大きな特徴は、利息が「半年ごと」に支払われる点です。満期時にまとめて受け取るのではなく、5年間のうちに計10回、定期的に利息が指定口座へ振り込まれます。個人向け国債・固定5年(金利1.35%/年)を10万円購入した場合、5年間で受け取る利息の「合計額」は以下のとおりです。
・税引き前の受取利息:6750円
・税引き後の受取利息:5379円
実際には、半年ごとに支払われる各利息から税率20.315%分(所得税および復興特別所得税15.315%と住民税5%)が差し引かれます。5年間で差し引かれる税金の総額は「1371円」となります。
参照:固定5年「第177回債」財務省
ネット銀行の定期預金に10万円預け入れたら、5年後の満期時にもらえる利息はいくら?
安定資産である定期預金でも、ネットで預け入れができる銀行の中には魅力的な商品があります。今回は、「5年満期」が選択でき、少額から利用できる例として、きらやか銀行SBIさくらんぼ支店(インターネット専用支店)の「さくらんぼ定期預金」で利息を計算しました。ちなみに、きらやか銀行は「第二地方銀行」ですが、ネット支店としてSBIさくらんぼ支店があります。きらやか銀行さくらんぼ定期預金は、1口10万円以上1000万円未満で利用可能。SBIさくらんぼ支店に口座を持っている方なら誰でも対象になります。預入期間は、1年、3年、5年が選択できますが、いずれの場合も金利は、「0.8%(2025年12月時点)」です。
ただし、この定期預金の利息の計算方法は、1年が単利、3年・5年は複利で以下の違いがあります。
・単利:元本にのみ利息がつく計算方法
・複利:毎年発生する利息を元本に組み入れて計算する方法
参照:SBIさくらんぼ支店(インターネット専用支店)の「さくらんぼ定期預金」
きらやか銀行SBIさくらんぼ支店(インターネット専用支店)の「さくらんぼ定期預金」に10万円預け入れした場合、満期となる5年後の利息は以下のとおりです。
・税引き前の受取利息:4072円
・税引き後の受取利息:3246円
実際は、受け取った利息から、税率20.315%分の「826円」が差し引かれます。税率の内訳は、「所得税および復興特別所得税15.315%と住民税5%」です。
「5年満期」を選ぶ理由とは?
ここまでの税引き後利息の比較では、個人向け国債・固定5年の方が多くの利息を受け取れる結果となりました。個人向け国債と5年満期の定期預金は、いずれも元本保証があり、安全性の高い運用先として人気があります。特に現在(2025年12月時点)の利息面では、個人向け国債・固定5年が優位な状況です。
「利息が多いなら、個人向け国債一択では?」と思うかもしれませんが、検討の際には以下のポイントが重要になります。
【複利の有無による差】
今回の結果は主に金利差によるものですが、計算方法にも違いがあります。個人向け国債は利息を半年ごとに受け取り、計算方法は「単利」です。一方、もし同水準の金利で、利息が利息を生む「複利」計算の定期預金があれば、最終的な受取額は定期預金の方が高くなる可能性があります。
預ける金額や期間によって、最適な選択肢は変わってくるため、商品比較をしましょう。
●「5年満期」に向いているのは、目的が決まっているお金
5年満期の商品を選ぶ大きな理由の1つは、「使う時期が明確な資金」を、確実に増やしながら安全に保管しておける点です。例えば、以下のようなケースが該当します。
・5年後の子どもの進学費用:教育資金を確実に準備しておきたい。
・住宅購入に向けた頭金:決められた時期に合わせて計画的に貯めたい。
・留学や記念旅行の費用:明確な目標のために、着実に資金を積み立てたい。
・老後資金の一部:将来の備えとして、長く手を付けずに管理したい。
このように、目的と期限がはっきりしている資金は、人によっては値動きがある投資信託などに預けるよりも、「元本保証」で堅実に増やせる選択肢が適していると感じる場合があります。そんなとき、個人向け国債の「固定5年」や、ネット銀行の高金利な定期預金は有力な選択肢となります。
忘れてはいけないのが、「もし急にお金が必要になったら?」
長期で預けることを決めていても、人生には予期せぬ出費がつきものです。急に資金が必要になった場合、解約のしやすさ(流動性)が重要になります。●個人向け国債の場合
個人向け国債は、購入から1年が経過すれば、1万円単位で中途換金(解約)が可能です。必要な額だけ取り崩せるため、急な出費が発生した場合でも、比較的スムーズに対応できます(通常、申請から3営業日ほどで払い戻しが完了します)。
ただし、中途換金の際には、「直前2回分の各利子(税引き前)相当額×0.79685」が差し引かれる点には注意しましょう。
なお、災害救助法の適用対象となった大規模な自然災害により被害を受けられた場合、または保有者本人が亡くなられた場合は、「中途換金の特例」に該当するため、1年を待たずに換金が可能です。
参照:個人向け国債の中途換金についてのよくある質問 財務省
●定期預金の場合
定期預金は中途解約するとなれば、原則として「預け入れたお金の全額」が対象になります。さらに、中途解約をする際は、当初約束されていた高金利ではなく、「中途解約利率」が適用されます。その結果、ほとんど利息がつかない、または優遇金利を完全に失ってしまうといったデメリットがある点に注意しましょう。
金額より「使い方の柔軟性」を重視して選ぼう
個人向け国債とネット定期預金、5年間預けたときの利息差は、それほど大きくありません。どちらか迷ったときは、資金をいつ、どのように使いたいかで選ぶことが重要です。・安心して預けておきたい目的資金には、どちらも有力な選択肢。
・途中で取り崩す可能性がある場合は、柔軟に換金できる個人向け国債の方が安心。
・最初に決まっている金利で確実に受け取りたいなら、定期預金も魅力的。
ご自身の資金計画と流動性の希望に合わせてよりよい預け先を選びましょう。








