人間関係

夜間高速バスの“席ガチャ”にハズレ地獄……。「相席ブロック」する人の言い分とは

高速バスの「相席ブロック」が問題となっている。長時間の移動で隣席が空けば快適だろう。だが、その快適は誰かの不快になっているかもしれない。当事者は何を思っているのか、相席ブロックをしたことがある女性に話を聞いた。※サムネイル画像:PIXTA

亀山 早苗

亀山 早苗

恋愛 ガイド

どうして男女は愛し合うのか、どうして憎み合うのか。出会わなくていい人と出会ってしまい、うまくいきたい人とうまくいかない……。独身同士の恋愛、結婚、婚外恋愛など、日々、取材を重ねつつ男女関係のことを記事や本に書きつづっている。

プロフィール詳細執筆記事一覧
「相席ブロック」する人の心理とは(画像:PIXTA)

「相席ブロック」する人の心理とは(画像:PIXTA)

高速バスの座席を2席予約、乗車直前に1席をキャンセルすると隣が空席になる確率が高い。そこで2席ひとりじめしてゆったり座る。そんな「相席ブロック」がバス会社を悩ませているという。

気持ちは分かる

高速バスのキャンセル料は100円から数百円という安さなので、キャンセル料を払っても、「隣に誰かに座られたくない」人にはメリットがあるのだろう。

バスの予約システムの盲点を突いた「賢い」方法なのだろうが、厳密に言えば偽計業務妨害にあたる可能性もある。そもそも、もともと1人で乗るつもりなのに2席予約して1席キャンセルするのは、他の乗りたい人を阻害する行為でもある。

入学する気はないが、運試しとしての大学受験をする人に対して「そのせいで他の誰かが落ちている」とバッシングする風潮があるが、こういったバスキャンセルについては大きなバッシングが起こらないのも不思議である。つまりは「こうやれば自分だけ損しない」という考えが働くからだろう。

「高速バスって時間も長いし、“拘束バス”じゃないですか。安く行けるのはありがたいけど、隣に不潔なオッサンが座ったら地獄のような苦しみが待っている。それならキャンセル料を払っても、隣を空席にしたい。その気持ちはよく分かる」

20代の女性はそう言った。彼女は以前、関西の実家に帰るときに夜間高速バスを利用、隣に座った50代とおぼしき男性から話しかけられ、無視して寝ようとしたらネチネチと文句を言われた。さらにその男性は頭をボリボリと掻き続け、気持ちが悪くて寝られなかったのだそう。

友達に聞いて

30代のヨウコさんは、次のように話してくれた。

「私も高速バスを時々利用しますが、隣の席に誰が座るか分からないのがネックです。友人にそんな話をしたら『私は2席とって1席キャンセルしてるよ』と。最初は何それ、それは迷惑じゃないかと思ったんですが、実際、友人はそういうことをして得をしているわけですよね。私だけ、まじめに1席予約して、隣に変な人が来たら目も当てられない。短時間じゃないから苦痛も大きい。そこで昨年、実際に2席とって1席キャンセルしてみたんです。快適でした……。でも別の友人に『それは倫理観がなさすぎる』と言われて、それもそうだなと思い、もうやっていません。でも例えば予約するときに、隣が男性か女性か、年齢層はどのくらいかが分かるとありがたいと思うことはあります」

新幹線で自由席に座る理由

隣に誰が座ろうと気にならない人もいれば、性別や年齢が気になる人もいるだろう。だったら利用しなければいいというのは横暴だ。みんなが快適に乗れればそれに越したことはないが、明らかに「不潔そう」な人、やたらと独り言を言う人など、多くの人にとって「不快な」人は現実にいる。それを回避したいと思うのもまた、人の常ではある。

「だから私は新幹線に乗るときは指定席をとりません。早く行って並んで通路側の自由席に座る。万が一、隣に変な人が座ったら移動します。自由席ならそれができるから」

ヨウコさん自身、自分が人より神経質なのは自覚しているからこその行動だ。だからバス予約については、納得がいかないところもあるのだろう。

運が悪いこともいいことも

「高速バスは、席ガチャですよね。でも私は、あるときから運がいいこともあれば悪いこともあると達観するようになりました。昨年、帰省するときにたまたま隣に座った男性と会話が弾み、意気投合して、今、つきあっているんです。神の配剤だと思いました(笑)」

カナさん(31歳)はそう言って顔をほころばせた。ところがそれまでは、いろいろな人と隣り合わせになった。

「飲酒を禁止していないバスもあるから、隣に座った男性がやたらガンガンビールやワンカップを飲み始めてびっくりしたこともあります。酔って寝てくれればまだしも、ブチブチと何かつぶやいたり、急に『ねえねえ、おねえちゃん』と話しかけてきたり。さすがに運転手さんから注意されていましたが、酒臭いし、本当に嫌でした。年上の女性に説教されたこともありましたね。いろいろな人がいて、たまたまそのバスに乗り合わせただけだから、長時間とはいえ必ず解放される。よほどのことがない限りは仕方がないと諦めたところで、今の彼に遭遇した。いいこともあるんだなというのが本音です(笑)」

バスという限られた空間の中で、いかにマナーが徹底されるかは時と場合によるから、確かに「バスガチャ」「席ガチャ」なのだろう。

「だから相席ブロックしたくなる気持ちは本当によく分かる。でも私、親戚がバス会社に勤めているから、そういうことをされると会社の業績に関わると聞いていて。だからしたくてもできない」

自分の快適は誰かの不快かもしれない。みんながそう考えられれば、少しは状況が変わってくるのではないだろうか。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

カテゴリー一覧

All Aboutサービス・メディア

All About公式SNS
日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
公式SNS一覧
© All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます