今回は、私の主宰する「恋人・夫婦仲相談所」に寄せられた更年期夫婦の悩みと、その解決法をご紹介しましょう。
<目次>
「閉経後の人生」をより快適に
世界メノポーズデーは、1999年に開催された第9回国際閉経学会において、「21世紀を目前に高齢化社会の到来を受け、今後更年期の健康に関わる情報を全世界へ提供する日」として定められました。日本国内では、毎年10月18日から24日までの1週間を「メノポーズ週間」として、さまざまな啓発活動が行われています。メノポーズとは「閉経」の意味で、場合によっては「更年期(閉経前後の約10年間)」を指すこともあります。
平均寿命が延びるに従い、女性の「閉経後の人生」も長くなっています。それに伴い更年期に関する情報も増え、閉経後の毎日をいかに快適に過ごすかに注目が集まるようになりました。私は夫婦仲相談所を主宰しているので、夫側に「妻がダルそうにしてたり、いらついた発言を長期間したら、女性ホルモンについて調べてみて」と発信しています。
「男性更年期」も
最近では女性だけでなく男性にも更年期があることが知られてきました。女性は閉経という大きな節目で女性ホルモンの量が激減するのですが、男性の場合は加齢に従って少しずつ男性ホルモンが減っていきます。主な症状には、「性欲の減退」「勃起障害(ED)」などの性的症状がありますが、女性と同様、ホットフラッシュのほか、イライラする、やる気が出ないといったメンタル面での不調もあります。私は「セックスレス要因の1つとして男性更年期がある」と長年発信しており、東京テストステロン研究会の立ち上げに関わったり、男性更年期の勉強会を開いたりしています。
そんな更年期について、夫婦間での認識の違いなどからトラブルになる事例も増えています。
トラブル例1:「めまい、ダルさ、疲労感」から生活リズムが乱れる
更年期の影響の一番厄介なところは、このような「目に見えない不調」ではないでしょうか。「咳が出る」「出血する」など、周囲からも一目で分かる病気やケガとは違い、本人以外には自覚しにくく、言語化して周囲に伝えることが難しい。また症状が一人ずつ違うために共感も得られにくいというのが更年期の体調不良の特徴です。見た目には問題がなさそうなのに「朝起きられない」「夜眠れない」「ちょっと動くと疲労感が激しく休息が必要」「めまいがひどくて外出できない」など、今までと同じような日常の活動が難しくなり、生活リズムの乱れが起きることもあります。その影響で「仕事を休みがちになる」「家事がおろそかになる」こともあります。そのため、夫は「妻がさぼっている」と感じ、関係性が悪くなるような事態が起きるケースもあります。
対策としては、まず、更年期にありがちな体調不良について調べ、夫婦で情報を共有しておくことです。知識があれば、不調に直面したときに、「これはホルモンバランスの乱れのせいだな」と原因を認識し、投薬や休息などの対処をすることができます。
また、パートナーも「本人が悪いわけじゃない。ホルモンの乱れによるものだから仕方がない」と寛容な気持ちになれるはず。互いに「同世代の自分にも起きること」と思いやりの気持ちを持ち、無理をしない、させないことが大切です。
トラブル例2:「イライラ、情緒不安定」から夫婦喧嘩になる
更年期の影響は体だけではなくメンタルにも現れます。すぐにイライラしてつっけんどんな態度になったり、怒りっぽくなって、周囲に怒鳴り散らしたり、情緒不安定になって、すぐに涙を流したり。症状の出方はさまざまです。「普段通りの軽いジョークを言ったつもりなのに、夫が地雷を踏まれたかのように怒りを爆発させて暴言を吐いた」
「妻が急に泣き出したり、家事放棄したりして、どうしたらいいか分からないので放っておいたら、最後はケンカになった」
このように、夫婦間のもめごとも起こりやすくなってしまいます。これらのメンタル不調への対策としては、各自が個別セルフケアの方法を持っておくことが大切です。
自分はどうしたら気分よくなれるか? まずは5つ書き出してみて、それを速やかに実行しましょう!
「隣町までウオーキング」「ネカフェでコミックを読む」「好きなスイーツをデパ地下でオトナ買い」「推しの歌を大音量で流す」「スーパー銭湯に泊まる」など、各自がそれぞれ、自分の気持ちをやわらげ、落ち着かせる選択肢を持つのです。
まずは自分自身で自分をいたわってあげることがファーストステップです。
さらには、パートナーによるケアも活用します。食事作りを1週間任せるなど、家事面だけでなく、手をつなぐ、背中を撫でてもらうなど、スキンシップも地味ながら効果を発揮します。
具体的な行為がなくても、相手のメンタル不調が更年期によるものだと理解し、静かに受け止めてあげるだけでもケアになります。無視ではなく、気遣いながらそっと見守ることが大切です。
ただし、不機嫌も伝染することを覚えておいてください。もしパートナーといることで相手の不機嫌のパワーに飲み込まれそうだなと思ったら、いったん違う部屋に移るなど、物理的に相手と距離を置いてください。
ひどい場合は、投薬やカウンセリングなど医師や専門家の診断を受けることも重要な対策であることは言うまでもありません。
トラブル例3:「男性:勃たない、女性:痛い」でレスが深刻化
ホルモン量の変化は、夫婦の夜の営みにも影響を及ぼします。男性側は男性ホルモンであるテストステロンの分泌の減少により、性欲の減退、勃起障害(ED)などが起こりやすくなります。一方、女性側は女性ホルモンのエストロゲンが急激に減少することで、性欲の減退、皮膚粘膜の乾燥が起こりやすくなります。
株式会社ウェルファーマが全国の50代~60代の女性600人に行った調査によれば、更年期後の性欲については、約65%は「性欲が減少傾向」にあり、「変化はない」と回答したのは32%でした。
さらに、「性交痛を感じたことがあるか」という問いには、50代、60代女性の約2人に1人(53.1%)が、「経験がある」と回答しいています。「皮膚粘膜の乾燥」が夜の営みにも大きな影響を及ぼしていることが分かります。
例えば、更年期で性欲ダダ下がりの妻が拒否したにもかかわらず、何とか性欲を解消したい夫が「すぐに終わらせるからいいだろ」と急いで無理やり挿入しようとする。そうなると、女性は乾いたまま受け入れざるを得ず、性交痛を感じ、さらに次回も誘いを拒否して……という悪循環に陥ります。
この「粘膜の乾燥」への対策については、妻側の日頃のフェムケアはマストですが、夫側は潤滑剤を利用することが有効です。それ以外にもゆっくりと丁寧に、時間をかけて丁寧に刺激を与えることで、粘膜の潤いを引き出すことが可能な場合もあります。夫自身の指では自信がない場合、潤滑剤と共にビギナー向けプレジャーグッズを使うのもおすすめです。
大切なのは、くれぐれも自分の性欲処理だけを目指さないこと。
セックスレスが標準仕様な現代ニッポンで、更年期になっても、夫婦で互いの温かさを感じ合う機会がある人生は恵まれています。いたわりあって、ゆったりと寝室タイムをお過ごしください。
<参考>
・東京テストステロン研究会(みらいメディカルグループ)
・更年期以降の女性の恋愛・性生活に関する調査(株式会社ウェルファーマ)








