これに対して無責任だと批判が殺到したのは、SNSあるあるだが、賛同するお母さんたちの声も多く寄せられていた。
子ども最優先でやってきたのに
「子どもに私の人生を阻害されたとは思っていません。結婚して産んで育てる決意をしたのは、私自身。でも人一人を大人にしていくのは本当に大変ですよね。うちは3人目に娘が生まれたとき、上が6歳と2歳の男の子たちで。次男と0歳の娘をかまっていると、6歳長男が急に子ども返りしたり反抗したりで大変でした」サツキさん(46歳)は振り返ってそう言う。年齢が上がれば、みんな聞き分けがよくなったかといえばそんなことはない。
「長男は、なぜか自分が愛されていないと思い込んで育ったみたいで……。彼が14歳のころ、猛烈な反抗期を迎えました。外ではケンカ三昧だったし、荒れていた。そのとき10歳だった次男はやたらと私にうそをつきましたね。私に心配をさせまいとしたうそだったことにあとで気づかされたけど、当時はイライラしました。夫と二人で子どもたちに必死に手を差し伸べていたつもりなのに、二人とも親の心子知らずで」
それどころか長男には「お母さんが悪い」と責められたりもして、「私はあなたの親をやめたい」と何度も面と向かって言いそうになった。だが、今はそれを言ってはいけないと思っていたという。
長男が高校を中退すると言い出して
「長男がせっかく入った高校を中退すると言いだしたので、ここが勝負だと、夫と3人でとことん話しました。親と子ではなく、人間同士として徹底的に話そうじゃないかと。おまえも自分が大人だというなら、オレたちを説得してみろと夫も本気でした」1カ月にわたって毎日のように議論を交わした。そのときサツキさんは、長男は親に愛されていないと思っていると感じた。だから長男が産まれたときの映像や写真をこれでもかというくらい見せた。
「10代半ば、生きることに悩む時期だから、徹底的に悩んでもいいと思う。でも親や環境のせいにして逃げるのはやめなさい、どんな生き方をしてもいいけど自分に恥じるようなことはするなと私は言いました。親に恥をかかせるなとは言わない、自分自身に恥じるなと」
長男はそれ以来、態度を軟化させた。今は19歳の大学生、すっかり優しい青年になっている。
「お母さんやめる」は夫に言うべき
サツキさんは、過去を振り返って、「私もお母さんをやめたくなる時期がしょっちゅうあったけど、幼い子に言ったらたぶん傷つくと思う」と言う。それならいっそ、夫に言った方がいいとも提案した。「私は子どもたちが小さくて、物理的にも精神的にも追いつめられたとき、夫に『お母さんやめたい』と泣いて訴えました。夫は分かった分かったとなだめてくれたけど、それだけでは改善しない。結局、実母と義母が入れ替わり立ち替わり来てくれて手伝ってくれたことで、少しずつ楽になりました。3人目が生まれたころ、地域ママみたいな制度ができて、そこにもずいぶん助けてもらった。第三者を入れるのも1つの方法かもしれません」
子どもたちが少し大きくなってからは、「お母さんの休業日」として月に2回くらいは完全に家事をしない日をもうけた。夫が子どもたちと協力して料理を作り、家事を分担してくれた。
「当時、私も再就職していたので、この“休業日”は本当にありがたかった。美容院へ行ったり、ただ寝転がって本を読んだり、丸1日、自分のためだけに時間を使える日があるだけで、エネルギーチャージができるんですよね」
自分を犠牲にする必要はない
そして、我慢しないことも重要だとサツキさんは言う。お母さんはつい我慢しがちなのだ、家族のために、家族がうまくいくようにと気を配り過ぎて自分が疲弊してしまうのだと。「家族それぞれの意見を聞くのは大事だけど、自分を犠牲にする必要はない。私もそれに気づくのは遅かったんですが。私が我慢し過ぎたために、次男や娘に不要な気遣いをさせてしまったこともある。みんながのびのび、自分らしくいられることが大事。最近、ようやくうちの家族もそのあたりに気づいたような気がします」
夫婦が力を合わせて子どもたちと向き合う。「その姿勢を感じ取ってくれれば、うちの長男のように一時はグレても、自分で考えてなんとか戻ってくるんじゃないかなと思います。お母さんやめたいと思うのはごく自然なことですよ」とサツキさんは笑った。








