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【上司ガチャ】「部下を犯人のように追い詰める上司」の標的にされた時、どうやって対処するべき?

自分の非を認めず、部下のせいにする“問題のある上司”の心理的背景とは? 理不尽な状況から自分を守り、冷静に対処するための具体的な方法を紹介します。※サムネイル画像:PIXTA

All About 編集部

自分のミスを部下のせいにする理不尽な上司の心理的背景とは?※サムネイル画像:PIXTA

自分のミスを部下のせいにする理不尽な上司の心理的背景とは? ※サムネイル画像:PIXTA

自分のミスを部下のせいにする「理不尽上司」。なぜ、彼らはそのような行動をとるのでしょうか?

あなたの職場を憂鬱にする人たち』(舟木彩乃著)では、「この人さえいなければ、もっとストレスなく働けるのに」と思わずにはいられない“問題がある職場の人たち”の事例と解決策を紹介しています。

今回は本書から一部抜粋し、「自分の非を決して認めず、すべて部下のせいにする上司」の心理的背景について解説します(全2回の後編/前編を読む)。
<目次>

心理的背景|部下を犯人のように追い詰める上司

「自分の非を決して認めず、すべて部下のせいにする」上司(以下、B役員)にはどのような心理的背景があるのでしょうか?

彼は、劣等コンプレックスを持っていて、自分自身がそれに振り回されている印象があります。劣等コンプレックスとは、自分が他者と比較したときに劣っていると感じたり、自己肯定感に不足感や疑いを持っていたりする状態です。B役員は、一代で今の会社を築いた創業社長である父親に、強い劣等感を抱いているのでしょう。

彼は、経営方針への不満を度々口にしながらも、社長の方針にはずっと逆らえず、それどころか会議で仕事の不手際などを指摘されるなど、父親からコンプレックスを刺激されるような環境に身を置いています。

B役員は、同社の社員、なかでも自分に逆らえない沢田さんのような立場の人に対して、自分が上位であることを誇示していないと、自分を保てないのだと思われます。

父親に対して抱く〝攻撃心〞が抑えきれなくなったとき、怒りのはけ口や機会を、自ら作り出している可能性すらあります。そのようなとき、怒りの矛先となるターゲットにされてしまうのが、沢田さんのようなおとなしいタイプだといえるかもしれません。

被害者の心理|冤罪に似た虚偽自白の心理

今回の沢田さんの状況は、刑事事件の冤罪が起きる状況に近いと考えられます。法心理学に詳しい浜田寿男氏(奈良女子大学名誉教授)によると、容疑者が犯行の覚えがないにもかかわらず、罪を認める噓の自白(虚偽自白)で冤罪になるケースがあるそうです。この虚偽自白は、誰もが案外容易に陥っていく自然の心理だということです。

取り調べで一定の圧力をかけられて虚偽自白するケースでは、事件に関係ない事柄についてまで責めたてられ、容疑者は罪悪感を募らすことになります。理不尽な取り調べだとわかっていても、自分の処遇が相手に握られていることで、容疑者は取り調べ官に敵対することができない心理状態に陥るそうです。

また、取り調べ中に「もしかしたら本当に自分が犯人かもしれない」と自分を疑いはじめて自白すること(強制—自己同化型)もあるそうです。

筆者は沢田さんから相談を受けましたが、そのときは役員室の清掃担当から外されて、落ち込んでいました。虚偽自白の話などをしたうえで、役員とは力関係の差が歴然としているので、記憶が曖昧になったり、自分にはミスがないのに謝罪してしまったりしても仕方がないことだと説明しました。

そして、役員の前でそのような反応をみせてしまったことは、沢田さんの弱さゆえではないことを伝えると、少しホッとした様子でした。

対処法|このタイプの上司にどう接すればいい?

もしB役員のような上司を持ってしまった場合は、コンプレックスを刺激しないようにしながらも、基本的に毅然とした態度で接する必要があります。秘書を何時間も立たせた状態で愚痴や不満を言うのは、パワーハラスメントに該当する疑いがあります。

勇気がいることかもしれませんが、そのような状況に置かれたときは、「恐れ入りますが……」と言って、いったんその場所から離れるようにしましょう。その場所にとどまっていると、さらに悪い状況に陥り、いつの間にか心までその状況に巻き込まれていきます。

このような上司に対して普段から気をつけることは、なにごとに関しても基本的には2人以上で対応し、メールなど記録に残すことです。施錠の確認についても、たとえば必ず複数の人間で一緒にチェックしたり、社員証などで施錠してその記録が残るシステムに切り替えてもらったりすることを、会社側とも相談するべきでしょう。

そもそも、このような問題が頻繁に起こるようであれば、清掃の外部委託をすることで社員の心理的負担が減りますし、防犯カメラを設置することも検討すべきかもしれません。
  舟木 彩乃(ふなき・あやの)プロフィール
心理学者(ヒューマン・ケア科学博士/筑波大学大学院博士課程修了)。博士論文の研究テーマは「国会議員秘書のストレスに関する研究」/筑波大学大学院ヒューマン・ケア科学専攻長賞受賞。メンタルシンクタンク(筑波大学発ベンチャー)副社長。官公庁カウンセラーでもあり、中央官庁や自治体での研修・講演実績多数。文理シナジー学会監事。AIカウンセリング「ストレスマネジメント支援システム」発明(特許取得済み)。国家資格として公認心理師、精神保健福祉士、第1種衛生管理者、キャリアコンサルタント技能士2級などを保有。Yahoo!ニュース エキスパート オーサーとして「職場の心理学」をテーマにした記事、コメントを発信中。
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