転職のノウハウ

大学教授、医師、弁護士、政治家…パワハラ体質の「先生」が多い職場を賢く辞めるタイミングと伝え方

医師、弁護士、大学教授など「先生」と呼ばれる専門職が多い職場には、パワハラが常態化しやすいリスクがある。特別な立場がパワハラ体質を生む背景と、その職場から効果的に離脱するための「辞めるタイミング」と「退職理由の伝え方」を解説する。※画像:PIXTA

小松 俊明

小松 俊明

転職のノウハウ・外資転職 ガイド

東京海洋大学教授。専門はグローバル教育/キャリア教育。サイバー大学客員教授を兼任。著書は「できる上司は定時に帰る」「35歳からの転職成功マニュアル」「人材紹介の仕事がよくわかる本」「エンジニア55歳からの定年準備」他。元ヘッドハンターで企業の採用事情に詳しい。

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パワハラ気質の職場から効果的に抜け出すには一体どうしたらいいのか ※画像:PIXTA

パワハラ気質の職場から効果的に抜け出すには一体どうしたらいいのか ※画像:PIXTA

世の中にはパワハラの気質が強い職場が存在する。特に「先生」と呼ばれる専門職が多い職場は、注意が必要だ。例えば、医師、弁護士、会計士、大学教授、政治家など、強い立場にいる人の中には、「先生」と呼ばれるうちに自分の言動がパワハラになっていることに気付かなくなる場合がある。

今回は、そうした職場を効果的に辞めるタイミングや退職理由の伝え方について、キャリアの専門家である筆者が解説する。

「先生」と呼ばれるにふさわしい人材なのか常に自問自答

今まで「先生」と呼ばれた経験はあるだろうか。呼ばれたことがある人は、そのときどんな気持ちだったか思い出してみてほしい。最初は気恥ずかしくても、繰り返し呼ばれるうちに慣れてしまったのではないだろうか。そのうち、自分のことを「先生」と呼ばない人と会うと、違和感や不快感を持つ人もいるかもしれない。

筆者も日常的に「先生」と呼ばれる職業に就いている。最初は気恥ずかしさを感じたが、慣れとは怖いもので、街中で「先生」と呼ばれると自分のことかと反射的に振り向いてしまうことがある。

「先生」と呼ばれること自体は、慣れてしまえば不快なことではない。ただし、自分が本当に人の役に立っているのか、「先生」と呼ばれるにふさわしい経験や見識があるのかについては、常に懐疑的である。

なお、学校の先生については少し事情が違うかもしれない。特に未成年の子どもにとって、「先生」は明確な指導者であり、親代わりの存在でもある。本稿では、先生について語る際は高校までの学校の先生は除き、それ以外、例えば大学教授や専門学校の先生などを対象に論じていく。

有資格者や特別枠が生むパワハラ体質

「先生」と呼ばれてふんぞり返る人は少なからずいる。彼らが職場で王様のように振る舞う理由の1つは、有資格者や特別枠での採用という特別な立場から、自分を他の社員と違う存在だと感じているからだろう。また、専門知識があり、さまざまな決定権を有していることも理由の1つだと考えられる。

こうした先生ならではの立場は、いわゆる特権や権力とも言えるだろう。一般的な課長や部長といった管理職は定期的に人が入れ替わるが、先生はほとんど入れ替わることがない。オーナー企業の社長のような存在で、なかなか扱いが面倒である。

例えば、大学などの教育現場におけるパワハラ、いわゆるアカデミックハラスメント(アカハラ)はなかなか深刻だ。アカハラとは、教育・研究上、優位にある立場の教授が、学生や他の教員に嫌がらせをしたりいじめをしたりすることを指す。

筆者の経験上、アカハラは国立大学に多い傾向があるように見受けられ、ハラスメントだとしても黙殺されているケースは少なくないようだ。

アカハラをする先生らは、自分は正論を述べていると思いがちだが、実際に大学職員や若手研究者に話を聞くと、多くの人がその先生の言動はパワハラだとして、苦しんでいる現状が見えてくる。

高学歴で専門知識も豊富な大学教授が集まる職場は、その特徴柄どうしても関係者間で優劣がつきやすい。自らの立場を乱用しやすい環境がゆえに、パワハラが起きやすいと言えるだろう。

もちろん、すべての大学教授がパワハラに関与しているわけではない。謙虚で誠実、尊敬できる素晴らしい先生のほうが多いということを、ここで強調しておきたい。

パワハラ職場の辞め時と効果的な辞め方

パワハラ気質の職場では、多くの社員が自分自身を守るために殻に閉じこもる姿がよく見受けられる。自分がパワハラの標的になりたくなかったり、実際に被害に遭いながらもじっと耐えていたりする。こうした職場は活気がなく、コミュニケーションも少ない。

パワハラ上司の陰口をたたく気力さえも残されていないことが多く、その場合、パワハラは既成事実となって職場に定着してしまう。会社生活の日常となり、誰もが慣れてしまう。

実際、パワハラの存在に気付きやすいのは、その職場に入りたての頃。時間がたつにつれて自然と防衛本能が働き、自分を守る最も手っ取り早い方法を探す傾向にある。きっとその方法が「殻に閉じこもる」行動なのだろう。

中には限界まで我慢し、心身に不調をきたしてやっと辞める決断をする人もいるが、心身の健康を崩すことは、なるべく避けたいところ。

では、実際に辞める場合にはどんな点に気を付ければいいのか。ポイントは2つある。

まず、「辞めるタイミング」に気を付けたい。辞めるとなった場合、会社側が引き止めに入ることもあるが、それに惑わされず、会社の規則(例えば1カ月前の退職通知など)を確認されたい。

そして、最短期間で退職日を決め、事務的に話を進めるのがポイントだ。パワハラを働く先生は、その人の評判を落とすような言動を取るかもしれないが、それが最後のパワハラになるだろう。退職時のパワハラは周囲にも伝わりやすく、他の社員も「自分も同じ目に遭うかも」と思って同情を集める場合がある。社内規則を無視してまで引き止めるようなことがあれば、かえってパワハラの存在が明らかになりやすい。

次に、注意したいのが「退職理由」だ。パワハラが原因で心身のバランスを崩したことをはっきり伝えても構わないだろう。しかし、加害者の名前までは無理して明かす必要はないと、筆者は考える。

そもそも退職理由は個人情報であり、上司がそれを他の社員に漏らすことは許されない。ただし、プライドの高いパワハラ上司は、職場にパワハラがあることを認めたくないため否定しようとするだろう。「事実無根の罪をでっちあげたお前のほうが野蛮だ」などと、報復を仕掛けてくることもあるかもしれない。

心と体の安心、安全を得るための退職のはずなのに、無理して加害者の名前を伝えたばかりに、不利益を被ってしまったら、本末転倒ではないだろうか。

筆者の経験上、パワハラ上司、とりわけ職場の「先生」タイプには改善の見込みはほとんどない。早期に避難し、自分を守ることに集中するのが最善の策だと思われる。
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