年金生活を見据えた住まい選びについて、住宅ジャーナリストの山下和之氏に教えてもらいました。
賃貸か?持ち家か?老後の安心を左右する決断
50代で住宅ローンを組むことに抵抗がある方もいるかもしれませんが、私は「資金を準備できるのであれば、買ったほうがいい」と断言します。なぜなら、家賃は生きている限り払い続けるコストだからです。65歳でリタイアして、年収がガクンと減った段階で家賃を払いながら生活するとなると、貯蓄を切り崩していくだけでしょう。そうなると、目に見えて生活が厳しくなっていくことになります。
賃貸のまま
・定年後も家賃をずっと払い続ける
・退去や更新の不安
持ち家(ローン完済)
・住居費は、ほぼ0円(※)
・終の棲家を確保できる
ローンを完済してしまえば、老後は「家賃0円」で住居費の心配がなくなります。これは、年金生活において最大の安心材料であり、老後資金の不安を解消する「最後のリスクヘッジ」なのです。
特に、個人事業主など国民年金がベースで年金受給額が少ない人は、「絶対買っておいたほうがいい」と強く推奨します。
※管理費・修繕積立金などは別途必要
終の棲家は、駅近中古マンション一択
現在の古い一戸建てが「住みにくい」「バリアフリーではない」という課題がある場合は、その自宅を売却して住み替えることも1つの選択肢です。その際、私が推奨する「終の棲家」の条件は、ローンを完済できる価格帯で、バリアフリー対応の駅近中古マンションに住み替えることです。この住み替えのメリットは次の通りです。
・ローン完済で住居費の不安が消える
・車の運転が難しくなっても生活しやすく、病院や買い物に困らない
・慣れ親しんだ家族の生活圏を、大きく変えずに済む
田舎で静かに暮らしたいと考える人もいますが、現実的には買い物・医療・交通の不便さから、再び都市部や利便性の高い場所に戻るケースも少なくありません。「(現在の自宅を)売れる価格の範囲内で買えるのであれば、駅近の中古マンションを買って移るのが一番いい」と私は考えます。
50代は、老後の安心を確保する最大のチャンス
50代の住宅購入は、単なるマイホームの購入ではありません。「家賃負担」という大きなリスクをゼロにするための、老後資金計画における最重要ポイントです。ローン審査の通りやすい50代のうちに動くことが、老後の安心を確保する最大のチャンスです。
教えてくれたのは……山下 和之氏(住宅ジャーナリスト)
新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトなどでの執筆・取材、セミナー講演、メディア出演など幅広く活動。著書に『よくわかる不動産業界』『「家を買う。」その前に知っておきたいこと』(いずれも日本実業出版社)、『マイホーム購入 トクする資金プランと税金対策』(学研プラス)、『2017-2018年度版 住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)など。






