2017年、2020年に次いで3回目の調査となり、がん治療の現場において、治療の苦痛とは別に「お金の悩み」が深刻な問題となっている実態が改めて浮き彫りになりました。
収入が減った人は約半数、平均20%減
がん罹患により「自身の収入が減った」と回答した人は全体の53%で約半数となりました。罹患前の平均年収482万円に対し、罹患後は388万円となり、平均で約20%の収入減が生じています。収入減の理由は、「休職」「業務量のセーブ」など、働き方の変化が大きく影響していました。 また、「収入減少や治療費の負担で生活が苦しい」と感じた人は75%にのぼり、そのうち約半数は治療開始から半年以内に生活の苦しさを感じています。
公的制度の利用だけでは「治療費が足りない」約4割
日本の医療制度では、高額療養費制度などの公的サポートが充実していますが、それでも金銭的な負担は重いことが判明しました。調査では、高額療養費制度の利用率が74%と高い一方で、公的制度を利用したものの、「どちらかといえば足りない」「まったく足りない」と回答した人は合わせて39%に上りました。
また、経済面で困ったこととして、治療費や生活費のほかに「社会保険料の支払いがきつかった」という声も挙がっています。
加入者でも2割が「給付金を受け取れなかった」理由
がんによる経済的負担を軽減するため、がんに備える医療保険・がん保険に加入していた人は全体の85%でしたが、そのうち20%が「給付金を受け取れなかった」と回答しています。理由として最も多かったのは「通院治療の保障がなかった」で、次いで「上皮内新生物(初期がん)が対象外だった」でした。
入院なしの内服治療は給付対象外だった、30年前の契約内容が現在の治療形態に合わなかったといった声も見られ、医療の進歩と保険保障のズレが課題となっています。
入院だけでなく通院で治療を続けるケースが増えている近年、自身の保険が最新の治療実態に対応しているかを確認することがより重要となりそうです。
意外な「治療費以外の出費」も負担に
がん罹患後に増えた支出は200万円未満が約9割を占めていますが、その内容は治療費だけではありません。最も多かったのは「入院時の日用雑貨」で、「入院や通院に伴う交通費やタクシー代」「ウィッグなどの外見ケア(アピアランスケア)」が続きました。
治療そのものに直接かからない費用も、家計に重くのしかかっています。特に外見ケアは、髪や肌の状態が変化する中で、精神的な支えとなる重要な費用です。
がん罹患後の働き方:離職者は15%、半数が半年でフルタイム復帰
がんをきっかけに離職した人は全体の15%で、前回(2020年)の18%から減少。治療を続けながら働く人が増えている一方、遠回しに退職を促された、体力的に勤務を続けられなかったといった声も寄せられました。ライフネット生命は、「時代や制度の変化にあわせて、がんの治療をしながら働き続けるためにも、民間の保険の定期的な見直しが必要」と指摘しています。がん治療をしながら働き続ける社会を支えるため、制度や職場の支援のほか、個々の保険の見直しが重要になりそうです。
【調査概要】
ライフネット生命保険『がん経験者に聞いた「がんとお金」の調査2025』
調査対象: がん経験者で、診断時に勤労していた方 719人(有効回答数)
調査期間: 2025年7月24日~8月14日
調査方法: インターネット調査
調査協力: 認定NPO法人キャンサーネットジャパン