『「まだ伸びる!」をあきらめない 中学受験 子どもの成績の本当の伸ばし方』(ユウキ先生著)では、中学受験で成果を出すために大切な親の関わり方や学習法について紹介しています。
本書から一部抜粋し、今回は、最適な入塾時期の見極め方と、早期入塾のメリット・デメリットについて紹介します。
入塾時期はいつがベスト?
「塾に入るにはいつがよいか」というのは、多くの保護者から受ける質問の1つです。私の息子は小学校1年生のときから、難関中合格実績で名高い進学塾に週1回通わせていました。当時は偏差値でいうと50前後と、その塾における偏差値基準としては満足のいく数字で、クラスでも比較的安定した成績をキープできていたように思います。
妻には電車での送迎で負担をかけてしまいましたが、宿題や月例テストの難易度もまだそれほど高くなく、下の子のお世話があっても、家庭でのサポートもなんとか回っていました。
その後2年生の春、引越しをしたため通塾を一度やめ、3年生の夏から再び同じ大手進学塾に復活しました。しかし、たった1年のブランクで偏差値は50台前半から40台前半に急落。
関西でもトップクラスの指導内容を誇る塾とはいえ、できていたはずの基礎すら忘れてしまっている状態でした。
しかし、まだ中学年の段階だったため、私は焦らず「難しい教材だから仕方ない」と気持ちを落ち着け、あえて関与を少なくしていました。
そして、4年生直前の春期講習からは、別の首都圏の大手進学塾に通い始めました。このように子どもの個性や環境によって塾に入るベストタイミングというのは「いつ」と断定が難しいのが正直なところです。
・お子さんの現状の学習状況
・ご家庭のサポート可能な時間
・目指す学校レベル
これらによって、最適なスタート時期は変わってくるといえるでしょう。ただし、遅すぎる入塾は子ども本人が大変な思いをすることになります。
一般的な中学受験のカリキュラムは、4年生(3年生の2月)からスタートします。遅くともここからスタートできる準備はしておくといいでしょう。
最近は、その1年前の2年生の3月から入塾を推奨する風潮もあるようですが、この年齢での入塾がよいかどうかは、その子のキャパシティ次第だと思います。焦らず、最適なタイミングを見極めましょう。
低学年での早期入塾のメリット・デメリット
早期入塾の最大のメリットは、「学びのリズム」をいち早くつかめることです。たとえば、小学1年生の秋、算数の新単元に初めて触れたとき、お子さんが好奇心にあふれ、一生懸命ノートに書き写す姿を想像してみてください。
子どもたちは早期入塾で、学ぶ楽しさを味わいながら、自然に授業の進め方やノートのまとめ方、質問の仕方を体得できます。
また、4年生から飛び込むより、土台がある分、安心感があります。
さらに、周囲に同じ目標を持ち頑張る仲間がいるという環境に低学年の頃から身を置くことで、「みんなについていこう」「自分も頑張ろう」という前向きな気持ちが芽生えやすくなります。
しかし、その一方で、早期入塾には気を付けたい点もあります。
まだ体が小さい子どもにとっては体力、集中力の消耗は生活に大きく影響します。
慣れない塾へ通い、学校の教科書とは全くちがうテキストと向き合う中で疲れてしまい、夕食や風呂の時間が大幅に後ろ倒しになり、生活サイクルが乱れることがあります。
また親の負担も少なくありません。
塾によりますが低学年の授業は予習前提では進まないものの、授業のペースについていくため、家庭で「教科書の基本例題を一緒に解く」「ノートの書き方を確認する」というサポートが必要です。
親も学び直しの必要が生じるため、想像以上に手間と時間を取られます。そして精神年齢の差も塾の学びに影響します。
低学年クラスの中にはすでに学習経験豊富な子もいれば、塾で初めて学習に向き合う子もいます。そのため“塾慣れ”するまでに時間を要する子は授業に集中できなかったり、通塾に不安を感じ始め、勉強がストレスになったりする可能性があります。
「子どもの学ぶ意欲と集中できる時間」「家庭のサポート可能時間」「通塾距離と生活リズムの両立」を総合的に見極めて、「うちの子らしく頑張れそうだ」と心から思えるタイミングこそが、いちばん自然なスタート地点といえるでしょう。
ユウキ先生(ゆうきせんせい)プロフィール
三浦祐輝。中学受験スリースターズ代表講師。2006年より関東の大手進学塾にて算数の講師を担当、数多くの合格者を輩出。現在は「中学受験スリースターズ」を運営し、SNSなどを通じて算数の解説動画や学習法を発信するほか、全国の受験生や保護者への個別相談やサポートを行う。自身も保護者として子どもの中学受験を支えた経験を持ち、指導者・保護者という両面からの具体的かつ実践的なアドバイスで多くの支持を集めている。







