『部下からの逆パワハラで“もう無理”と思ったときに読む本 悩める上司への処方箋』(加藤京子著)では、「逆パワハラ」をしてくる部下に見られる特徴的な3つのゾーン、11のタイプについてお伝えしています。
今回は本書から一部抜粋し、逆パワハラをしてくる部下の具体的なタイプとその言動について紹介します。その特徴を知ることで、心の余裕を取り戻しましょう。
モンスター社員の特徴的な11のタイプ
このあと登場する部下は、組織やメンバーの時間や感情を多大に消費させる人たちです。組織全体から見たときに、その生産性低下のダメージは計り知れないでしょう。しかし、あくまでも各々のパターン内の「傾向性」という理解に留めてください。このセリフを言ったから「彼はモンスター社員だ」とか、こんな態度を示したから「彼女はモンスター化しつつある」と一面的に捉えないでください。
また全ての部下がこんなモンスターだとお伝えしているわけではありません。そういう因子があるということ、そして、あなたの心の余裕に繋げるためにお伝えしているということを忘れないでください。
ここからは「逆パワハラ」部下を、「部下からの奇襲(突発性の高いもの)」「部下からの反抗(継続性の高いもの)」「部下からの排斥(陰湿性の高いもの)」の3ゾーン11タイプに分類して紹介します。
突発性が高い逆パワハラ「部下からの奇襲」
あなたの粗探しをします。一概にいえませんが、自尊心が高いタイプです。ただし、「安定している」自尊心ではありません。「不安定な」自尊心から、防御反応が強く出てきます。タイプ1. 自己防衛的な部下
自分の過ちや弱点を認めたくないタイプです。自己防衛のために過度に反発することで、自分の責任を回避しようとします。いつも、成功したいと考えているので、「失態を見せたくない」という欲求が強くなっています。
タイプ2. 競争心が強すぎる部下【逆パワハラの例】
上司からの正当な指導を受け入れず、自分の非を認めず、上司を批判したり、自分のミスを他者に転嫁したりします。その他、他の社員の前で上司の決定を繰り返し非難する、改善策のない否定的なコメントを続ける等があります。
自分の立場や業績を過度に重要視し、他者と競い合う姿勢が強いタイプです。
タイプ3. 弱者意識が強い部下【逆パワハラの例】
上司からの指導を競争心から反発し、自分の能力を過信して批判します。また、自分の成果や評価が他の部下より低いと感じると、上司に対して攻撃的になります。「評価、納得いかないです。ちゃんと見てるんですか」等、挑発的です。
自分が職場で不利な立場にあると感じるタイプです。やや被害妄想的です。上司が部下に不利な指摘をしたとき自分の立場や評価が低くなると感じ、上司に対して逆転的な態度を取ることがあります。
タイプ4. 上司との関係に不満を抱えている部下【逆パワハラの例】
「自分が損をしている、不利な状況である」という意識を強く持ち、意見や要求権利を押し通そうとします。「あの人のせいで精神的に病んだ」と根拠なく責任を押しつけることもあります。
過去の経験やコミュニケーション不足が原因で、不適切な感情が溜まり、逆パワハラ行動を引き起こすことがあります。マウントをとったり、粗探しをしたりします。
【逆パワハラの例】
上司からの指示やフィードバックを素直に受け入れません。「またそのパターンですか」「はいはい、どうせ聞く耳持たないですよね」等、一触即発状態です。
いかにも「ハラ・ハラ(ハラスメント・ハラスメント)」を起こしそうなタイプですが、あくまで「そういう因子がある」という例です。
継続性の高い逆パワハラ「部下からの反抗」
対人関係を築く際に、ぶつかることが多いようです。自分の感情を知覚し、適切に表現し、他者の感情を理解し、自他の感情を調整することが不得手です。タイプ5. 感情的な部下
上下関係や縦社会が苦手で、自分の気持ちに振り回されやすいタイプです。ストレスや不満が溜まりやすく、非論理的です。喜怒哀楽関係なく、感情を表し過ぎます。言葉・態度が不躾で批判的、配慮をしません。
タイプ6. 無自覚な部下【逆パワハラの例】
自分のプライドを傷つけられた、と感じ、過剰に反応しますが、本人は至って正当な主張のつもりです。「なんでそんな言い方されなきゃいけないんですか?」等。
自分の行動が他人にどのように影響を与えるかを理解していないタイプです。マイワールドタイプで、どうやって育てたらよいか、掴みどころがありません。
タイプ7. 秀才タイプの部下【逆パワハラの例】
自分がどういう影響を与えているかを自覚できていないため、何を言っても、意に介しません。
「まあ、そういうふうに言われても、自分としては普通だったんで……」「課長って、真面目すぎて疲れませんか?」等。
頭は良いが、知的な面で傲慢です。言葉による嫌がらせが多く、なんとなく仕事が頼みづらいタイプです。上司よりも専門的な知識やスキルに自信を持ち、プレッシャーを与えます。意図的に反抗してくるタイプもいれば、そうではない(逆に、出し惜しみする)タイプもいるようです。
タイプ8. 自信過剰な部下【逆パワハラの例】
上司の提案に対して、「あの時ちゃんと指示してくれていれば」「非効率的ですね。私はもっと良い方法を知っています」と公然と反論し、周囲の評価を自分に引き寄せようとします。
自分の能力や実績に過信しており、上司の指導を必要としないと感じているタイプです。自己評価が高すぎるため、上司からの指導やアドバイスを不快に思うことがあります。
【逆パワハラの例】
上司の指導や指摘を受け入れません。場合によっては、上司の指導を無視したり、馬鹿にしたりする態度を示します。「リーダーとしての力量、正直あまり感じません」とストレートにぶつけてきます。
陰湿性の高い逆パワハラ「部下からの排斥」
あなたを「さあ、とっちめてやるぞ」と無力化させようとします。自分ができることとできないことを弁(わきま)えていて、自分の個性を活かし、他人をうまく活用しながら成果を目指します。権力者やキーマンを取り込むのが上手く、対人能力は相当に高いレベルにあります。タイプ9. 心理操作タイプの部下
表面的には友好的ですが、裏で上司を陥れる行動を取ります。人に対して操作的であり、情報隠蔽や業務妨害、他の部下や同僚と共謀して、不満を増幅させます。口頭表現も独特です。
タイプ10. 集団で圧力をかけるタイプの部下【逆パワハラの例】
逃げ場のない交渉術で上司を追い詰めます。貸し借りの感覚が鋭敏です。自己主張しながら、ちょっと逃げ道をつくる巧妙な言い方と語彙力が豊かです。愚直で正直で、口下手の上司だとしたら、太刀打ちできなくなります。
職場で自分の存在や仕事に価値を見出せず、上司に対して反発的、かつ支配的な態度を取ることがあります。または、直接的な反抗ではない、やる気のない態度を見せる、最低限の返事のみに留める等があります。
タイプ11. 組織や権威への反感が強いタイプの部下【逆パワハラの例】
上司や組織のルールに従うことを拒否したり、わざと仕事を遅らせたりします。受動的であり、無防備に放置しているようですが、水面下では、とても攻撃的です。
「え、それ、そんなに怒ることですか」「私達、別に困ってませんけど」と関係ないふりをします。
企業文化そのものに懐疑的で、批判します。会社全体の意思決定に対する不満を直属の上司にぶつけます。
【加藤 京子(かとう・きょうこ)プロフィール】【逆パワハラの例】
「どうして、盾になって守ってくれなかったんですか」「正直、上からの指示に従っているだけですよね」「私たちの立場なんてどうだっていいんでしょう」と超批判的です。たとえば、会社のリストラや統廃合等、上司はコントロール外の事案になります。事あるごとにその件が蒸し返され、間に挟まれた上司への攻撃が執拗に続きます。
H・Rサポート、株式会社クレドコラ(credocara)代表。青山学院大学文学部フランス文学科卒業後、日商岩井株式会社(現・双日株式会社)入社。1998年に社会保険労務士資格取得、2000年に独立開業~現在H・Rサポート(港区西新橋にて社会保険労務士事務所経営)、2004年には研修講師として活動開始し、管理職選抜・昇格審査事業の一環として、部下育成の相談(面談)を受託。年間約100日(20年間)、約2万人対応。現在、研修講師および人材アセスメントのチーフコンサルタントとして活動中。著書に『Z世代に嫌われる上司 嫌われない上司』(ぱる出版)がある。