子供の教育

子どもが「運動会、行きたくない…」と言ったとき、親がやってはいけない対応とは【元教員が解説】

子どもからの「運動会、行きたくない」の声は、本音を吐き出せた瞬間。親がやるべきは、焦らず“聞き切る”こと。そして自分の思いはアイメッセージで伝え、選ぶのは子どもに任せる。自己主張を認めて、自分軸を育てる。それが“信じて任せる”子育てです。

坂田 聖一郎

坂田 聖一郎

子育て・教育 ガイド

大学卒業後、芸人を目指し現在「しずる」村上純とコンビ結成するも解散。その後、教員を13年間経験。独立し「株式会社ドラゴン教育革命」を設立。「学校教育にコーチングを」をスローガンのもと、「ままためコーチング塾」をスタート。子育てや家事で忙しいお母さんや教員にも親しみやすい丁寧な指導が好評。

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秋といえば運動会。楽しみにしている子もいれば、「行きたくない」と顔を曇らせる子もいます。そんなとき、親としてどう声をかけるのがいいのか悩む人は多いと思います。

今回は教育者であり、元小中学校教員、そして「ままためコーチング塾」主宰として、コーチングを多くの方に教えている筆者の視点から、気持ちに寄り添いながら子どもの成長を支援する関わり方をご紹介します。
<目次>

「行きたくない」は“問題”ではなく“自己主張”

「運動会に行きたくない」という子どもの言葉を聞いたとき、多くの親は無意識のうちにそれを“問題”と捉えてしまいます。

でも実は、それを“問題”と捉えているのは親自身。子どもはただ、感じたことを素直に表現しているだけです。親としては「運動会に行かないこと=ダメなこと、残念なこと、恥ずかしいこと」と考えがちです。しかし、実際にはそれは「自己主張のサイン」なのです。子どもが自分の気持ちを言葉にした、その行動こそがすでに尊いのです。

大人でも「休みたい」と素直に言うのは、勇気がいりますよね。まずは、その一言を言えたことを肯定し、その声に耳を傾けてあげてほしいのです。
運動会 イメージ

子どもが自分の気持ちを言葉にしたというその行動自体が、すでにとてもすてきなこと

「聞き切る」ことと「視点を広げる」こと

「運動会に行きたくない」と子どもが口にしたとき、まず親がやるべきは“問いただす”ことではありません。“聞き切る”ことです。なぜ行きたくないのか。どんな気持ちが隠れているのか。それを丁寧に聞くことから全てが始まります。

例えば、「負けるのが嫌だから行きたくない」と言ったとしましょう。このとき、私たち大人が最初にやるべきことは、その気持ちを否定せずにそのまま受け止めることです。そして、「負けたくない」――これは、裏を返せば「勝ちたい」「うまくやりたい」「認められたい」という強い意欲の表れです。それ自体、実はとても健全で素晴らしい感情です。

その上で、子どもが勝ちにこだわり過ぎているようであれば、そっと視点を広げてあげることも大切です。

「本当に価値があるのは、勝ち負けそのものではなく、どんな結果でも自分のベストを尽くせたかどうかだよ」

「頑張った自分を、自分で認めてあげる。それが一番かっこいい生き方だと、私は思うよ」

このような言葉は、子どもが“勝ち負けの世界”で悩んでいるときに、新しい考え方を示す役割があります。また、コーチングでも同じく、子どもの話を丁寧に聞き、その子自身が自分の価値観や本音に気付けるようにサポートすることが大切です。無理に説得したり、大人の正解を押し付けたりするのではなく、「自分で考える力」を育てることが目指すべき関わり方です。

だからこそ、どんな理由であれ「行きたくない」と言った背景には、その子なりの“メッセージ”があるはずなのです。その声に耳を傾けること。それが、私たち大人の一番大事な役割です。
運動会 イメージ

「自分で考える力」を育てることを大切にして

親からの「アイメッセージ」で自分で考える子どもに

「でも、親として“頑張ってほしい”気持ちもあるんです」

そう思う方も多いはず。大丈夫、それもちゃんと伝えてOKです。ただし、「あなたはこうすべき」という形ではなく、「私はこう思っている」という“アイメッセージ”で伝えるのがポイントです。

「遅くても、一生懸命頑張ってる姿が見たいな」
「パパは、君がどんな結果でも応援してるよ」

こうしたメッセージは、子どもをコントロールするためではなく、あくまで“親の思いの共有”。それを伝えた上で、最終的な選択は子どもに委ねるのです。

「選ぶのはあなた。私は応援するよ」

このスタンスが、子どもにとって最も信頼できる土台になります。また、このような関わり方は「他人軸」ではなく「自分軸」を育てる基礎にもなります。「親の期待に応えなければならない」「みんなと同じでなければいけない」という他人軸ではなく、「自分はこうしたい」という自分軸。それは、「行きたくない」「やりたくない」という気持ちを丁寧に扱うことから育まれるのです。
運動会 イメージ

「自分はこうしたい」という自分軸を育もう

信じて、任せて、対話を続ける

運動会に行かない選択をしたからといって、それで子どもの未来が決まるわけではありません。むしろ、子どもが自己主張してくれたことで、親子で深く話せた、その機会こそが“教育”なのです。

運動会は、教育課程において必ずしも出席しなければならないものではありません。何よりも大切なのは、子どもが「自分の気持ちを大事にしていい」と実感できることです。運動会だけでなく、普段から「どうしたい?」と子どもに尋ねる習慣を持つことが重要です。

ただ、普段から「ああしなさい」「こうしなさい」が多いと、いざというときに本音は出てきません。逆に「どう思う?」「どうしたい?」と聞く習慣があると、子どもは安心して気持ちを言葉にできます。

「運動会、行きたくないんだね」
「どうしてそう思ったの?」
「他にも気になることある?」
「あなたはどうしたい?」

たったこれだけのやりとりが、子どもにとっては「分かってもらえた」という深い安心になります。

私たち大人にできるのは、「話をしっかり聞くこと」「自分の気持ちを伝えること」、そして「子どもを信じること」だけです。もしあなたのお子さんが「行きたくない」と言ったら、その言葉を大切な会話のきっかけとして受け止めてみてください。

>【動画で解説】子どもが「運動会に行きたくない」と言った時の正しい声掛けとは?
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