
秋になっても夏バテのような症状が続く……疲れが取れない意外な原因は? ※画像:Shutterstock.com
夏の終わりに「なんとなく体が重い」「疲れが取れない」「気分が落ち込む」──そのような不調を感じていませんか? その原因は「腸疲れ」かもしれません。
実は腸の働きは、食べ物を消化・吸収するだけではありません。免疫やストレス応答、メンタルバランスまで司る重要な器官で、「第2の脳」とも呼ばれます。夏の間は、冷たい飲み物の取り過ぎや冷房の冷え、夏休みなどの不規則な生活で、腸にじわじわとダメージが蓄積するケースが少なくありません。
腸疲れのサインは? 注意すべき症状のチェックリスト
次のようなサインはありませんか?- 食欲がわかず、食後におなかが張る
- 便秘や下痢が続いている
- 朝スッキリ起きられず日中もだるい
- 肌荒れやニキビが増えた
- 夏の疲れが抜けず、イライラしやすい
腸が「第2の脳」と呼ばれる理由……双方向でつながる腸と脳
「腸を整えるとパフォーマンスが上がる」と聞いたことはありませんか? これは単なる都市伝説ではなく、科学的に裏付けられています。腸の働きは、脳の支配下にある自律神経でコントロールされていますが、逆に腸から脳に影響を与えるホルモンや神経伝達物質も存在するのです。
例えば一般的に「幸せホルモン」として知られるセロトニンの大部分は腸で生成されるため、腸内環境が乱れると、不安や抑うつの症状につながる可能性があります。さらに腸で作られるSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)という酵素は、疲れの原因となる活性酸素を除去する働きもあります。つまり腸の状態が悪いと、活性酸素が除去されにくくなり、疲労が蓄積しやすくなるのです。
「夏バテ」と「腸疲れ」を併発しやすいのはなぜ? 悪循環に陥るケースも
腸内には大量の細菌が棲みついており、「腸内フローラ」と呼ばれる細菌群があります。腸の環境は善玉菌・悪玉菌・日和見菌のバランスによって変わり、免疫力や栄養吸収、さらにはメンタル面も影響を受けることが、近年の研究で明らかになってきました。夏は暑さ・室内外の寒暖差、脱水、睡眠不足などで自律神経も乱れやすく、全身的なだるさ・倦怠感が蓄積しやすい季節です。いわゆる「夏バテ」の状態ですが、このタイミングで腸の機能が低下すると、免疫や疲労感に大きな影響を及ぼします。夏バテと腸疲れは、それぞれ異なるメカニズムで起こる不調ですが、結果として、夏バテと腸疲れを併発した状態になってしまうのです。
自律神経が乱れて冷たいものばかり欲しくなる→腸が冷え、腸の機能が低下する→免疫力が落ちて、体調不良が続く……という悪循環に陥っている可能性もあるため、注意が必要です。
医師がすすめる3つの「腸リセット法」で効果的に対策!
夏の終わりに腸疲れを回復させるには、どのような方法が効果的でしょうか? 医師の立場から、おすすめの対策法をご紹介します。■「発酵食品」を味方につける
ヨーグルト、納豆、味噌などプロバイオティクスを含む発酵食品は、腸内環境を整える強い味方です。特に食物繊維と一緒に取ることで、腸内細菌のバランスが整いやすくなります。
■睡眠の質を上げる
腸の働きは自律神経と深く関係しています。睡眠不足や夜更かしは腸にとってもストレスになるため、少なくとも6時間以上、可能なら7~8時間を目標にしっかり休みましょう。腸の回復にもつながります。
■軽い運動を取り入れる
ウオーキングやストレッチなどの軽い運動で、腸のぜん動運動を活性化しましょう。血流もよくなり、体全体の代謝も向上します。
腸を制する者は、パフォーマンスを制す! 体調の土台を整えることも
腸は、消化・吸収だけでなく、免疫・ストレス耐性・疲労回復・メンタルなどの全てに関わる臓器です。特に、夏の終わりは腸がもっともダメージを蓄積しやすい時期。日々の小さなケアの積み重ねが、疲れにくく、回復しやすい体づくりにつながります。
現状を知ることは、腸疲れ予防の第一歩。「腸内フローラ検査」で見える化する方法も
また、生活習慣の見直しやセルフケアとあわせて、腸の状態を医学的にチェックするのも有効な手段です。近年では、便を提出するだけで腸内環境を分析できる「腸内フローラ検査」なども普及してきました。腸内にどのような菌が多いか、善玉菌と悪玉菌のバランスはどうか、炎症の傾向はないかといった「腸の個性」が可視化できるため、自分に合った食事や生活習慣の改善ポイントを知る手がかりになります。慢性的な不調や便通異常がある場合は、医療機関での血液検査や超音波検査、大腸内視鏡などの精密検査が推奨されるケースもあります。その場合は自己判断せず、受診をするようにしましょう。腸の状態はふだん目に見えないからこそ、データで確認することが予防の第一歩です。
夏の疲れをしっかりリセットし、不調を繰り返さないためにも、一度「いまの腸の状態」を確認してみるのも、戦略的予防の1つとしておすすめです。