「お兄ちゃん、何人いるんだ」
「けん兄」「めい」と呼び合うきょうだいのような二人と言われていただけに、世間の反応は驚きと共に「やはり」というものだった。さらに、永野さんは窪田正孝さんのことも「お兄ちゃんのような存在」と言っていたらしい。案の定、「お兄ちゃん、何人いるんだ」との声がネット上に散見された。事務所が所属俳優の過去の恋愛を認めるのはレアケースだという。田中さんとの不倫に関して徹頭徹尾、否定してきたのとは真逆の対応だ。相手が独身かどうかで、永野さんのイメージは乱高下するのが分かっているからこその反応なのだろう。
それにしても不倫騒動から半年近くがたって、実質的に仕事ができなくなっても、なぜか永野さんの話題は尽きない。実はみんな、彼女が気になっているのかもしれないと穿った見方もできるのではないか。
永野さんはもうじき26歳。母子家庭で育ち、実際に兄がいる。とびきり明るい母親に育てられたそうで、彼女も天真らんまん、あっさりした性格だと言われていた。9歳のときにスカウトされて芸能界入り。子どものころから芸能界に入り、周りの大人に気に入られる術を自然と身につけたのではないだろうか。「お兄ちゃん」「お父さん」と慕えば喜ばれることも。
存在自体が男性を惹きつける
彼女の趣味を見ると、なんとも興味深い。サーフィン、バイク(ハーレーダビッドソンに乗っていた)、ドラム、ギター、ピアノと楽器演奏も器用にこなす。この趣味なら、男性と話も弾むだろう。しかも、ずっと言われているように、人との物理的距離が近いのが彼女の特徴でもある。そこから「魔性」とも言われているが、相対した年上の「お兄ちゃん」たちから見れば、やはり「かわいい」存在なのだろう。最初は妹のように接しているが、心許したところで、ふと女が垣間見えれば、男としては惹かれるのもやむを得ないのではないだろうか。彼女自身が計算しているというよりは、彼女の存在が男を惹きつけてしまうのかもしれない。
「お兄ちゃん呼び」をすることで、相手との距離を縮める女性は、彼女に限らず、実際に珍しくはない。
するりと相手の懐に入り込む
「いましたね。新卒で入社した会社で同期、同じ部署だったミカという女性がそういうタイプだった。部署での最初の飲み会のときに、部長には『お父さんみたい。私、父親の顔をよく覚えていないから、うれしい』と言ったり、年の近い先輩には『お兄ちゃんみたい』とうっとりした目で見上げたり」リナさん(35歳)は、当時を振り返ってそう言った。言葉でいうと気持ち悪く聞こえるかもしれないが、ミカさんはごく自然に相手に顔を近づけたり、笑顔でかわいく「お兄ちゃん」と言うので、つい相手も顔がほころんでしまうのだという。
「そのあたりは天性の甘え上手なのかもしれない。彼女の素直さに、相手も『おお、オレにも妹ができた』と喜ぶ。酒の席だから、そのくらいの軽口は許されるし。そうやって彼女に落とされた男性は、私が知っているだけでも3人くらいいます。同じ部署と隣の部署だけで」
いつの間にか「お兄ちゃん」が「彼氏」になっているのだが、彼女は誰からも恨まれていなかったのがすごいとリナさんは言う。
嫌われたくない気持ちの裏には……
「たぶん彼女、かなりの寂しがり屋だったんじゃないかと今になって思うことがあります。愛されていないと気がすまないというか……。小学生のころに親が離婚して、彼女は母親と二人暮らしだったけど、男性との距離のとり方が分からないまま、愛されたい気持ちが先走っていたのかなと思います」そのミカさんは、入社して5年で転職したが、どうやら転職先でも男性のうわさは絶えなかったようだ。
「つい先日、仕事帰りにばったり会ったんですよ。また転職してうちの会社の近くに勤めているそうです。ちょっと1杯と一緒に飲んだんですけど、彼女は『もう恋愛も男もいらない』と言ってました。あんなに『お兄ちゃん』と男性に懐いていたのにどうしたのと聞いたら、『私は恋心をもっていない人にも、嫌われたくなくてつい懐いたふりをするんだけど、それが誤解されてストーカーまがいの被害にあった』って。嫌われたくない気持ちの裏には、物心つく前からの父親からの暴力、近所の男性からのセクハラなどがあったんだそうです。思いがけない壮絶な話だったので、彼女を単なる男好きと思っていた私は反省しました」
人には他人に分からない事情を抱えながらも、明るくふるまってしまうことがある。ミカさんもそういうタイプだったようだ。
「互いに独身同士、これからも会おうねと別れました。いい友達になれそうです」
リナさんはそう言って笑顔になった。