年金

老後2000万円で本当に足りるのか?インフレ時代のリアルを専門家が解説

今やすっかり定着した老後資金の目安のひとつ、老後2000万円問題。しかし、物価上昇が続く今、その金額は妥当と言えるのでしょうか。※サムネイル画像:PIXTA

All About 編集部

今やすっかり定着した老後資金の目安のひとつ、老後2000万円問題。しかし、物価上昇が続く今、その金額は妥当と言えるのでしょうか。

経済ジャーナリストで、All Aboutマネーガイドでもある酒井富士子氏の最新著書『60分でわかる!新・年金 超入門』(技術評論社)では、年金制度のしくみや改正の動きをふまえながら、賢い年金生活をおくるためのヒントを紹介しています。

今回は本書から一部を抜粋し、年金世帯のリアルな収入と支出を紹介します。

支出も増えたが、収入も増えた年金世代

図表1は、総務省「家計調査」の2023年の結果。65歳以上の高齢夫婦(無職)世帯の1カ月の収入と支出の数字です。「2000万円問題調査」(便宜的にこう呼ぶ)は2017年の調査をもとにしているので、6年が経過したことになります。

その間にあった大きな変化は、コロナ禍を経て、日本にも物価高、インフレが到来したことでしょう。最初は、ウクライナ紛争の影響でエネルギー価格や小麦など一部の食材の値上がりでしたが、その後の円安も重なり、ありとあらゆる商品・サービスの価格が上がりました。

図表1
2023年における65歳以上の高齢夫婦(無職)世帯の1カ月の生活費と収入 ※出典:『60分でわかる!新・年金超入門』

2023年における65歳以上の高齢夫婦(無職)世帯の1カ月の生活費と収入 ※出典:『60分でわかる!新・年金超入門』

2023年の消費者物価指数は、前年比3.1%(生鮮食品を除く)の上昇で、1982年以来41年ぶりの大きな上昇となったのです。現在60歳の人が19歳の時以来のことですから、記憶にとどめている人も少ないでしょう。

それにより、年金世帯には大きな影響が出ているかと思いきや、支出は2017年より7%ほど増加していますが、実収入も16.9%上がっており、月5万4000円の赤字は3万7917円に減少しています。
 
高齢者夫婦(無職)世帯の実収入と実支出( 2017年と2023年の月平均比較) ※出典:『60分でわかる!新・年金超入門』)

高齢者夫婦(無職)世帯の実収入と実支出(2017年と2023年の月平均比較) ※出典:『60分でわかる!新・年金超入門』)

実収入が上がっているのは、勤め先収入や事業・内職収入、社会保障給付などが3万円以上増えているので、65歳以降でも、何かしら勤労収入を得る人が増えているのかもしれません。ただ、「老後2000万円なんて必要ない」と考えるのは早計。

もし、このまま物価が2%上がり続けるとすると、5万円の不足額は30年後には10万円になるという試算もできます。2000万円も5万円も、あくまで参考数値ともいえるわけです。
  酒井 富士子(さかい ふじこ)プロフィール
経済ジャーナリスト。金融専門の編集プロダクション・株式会社回遊舎 代表取締役。日経ホーム出版社(現日経BP社)にて「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長を歴任。近著に『知りたいことがぜんぶわかる!新NISA&iDeCoの超基本』(Gakken)『60分でわかる! 新NISA 超入門』(技術評論社)など。
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