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【世界陸上】厚底特許シューズでNIKEを打倒!? マラソンで「asics」が“ゼロ”から逆襲できた理由(3ページ目)

【“特許”という視点から見る世界陸上 #3】東京2025世界陸上の男子マラソンは、最後まで結果が分からないほど激しいレースとなりましたが、その裏側で各シューズメーカーの激しい戦いがあり、日本メーカーasicsが躍進しました。※画像:amanaimages(画像はイメージ)

藤枝 秀幸

藤枝 秀幸

弁理士 ガイド

弁理士・行政書士。IT会社等でのプログラマ・SEとしてのシステム開発等を経て、2009年に当事務所(現:藤枝知財法務事務所)を開業。現在はIT分野やエンタメ分野のクライアント様を中心に契約書業務や知的財産業務を日々行わせて頂いております。

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asicsの厚底シューズに使われているさまざまな特許技術

asicsの厚底シューズ「METASPEED」には、さまざまな技術が用いられています。

例えば「METASPEED」に用いられていると考えられる特許出願中(2022-171333)のソールに関する技術では、ソールのクッション素材の各部位の配合率、厚さ、硬さなどを絶妙に調整することで、高いクッション性を実現しながらも蹴り出し時の沈み込みを抑えるソールというものを開発しています。

クッション性を高めるとどうしても蹴り出し時の沈み込みが深くなることで速く走るのに多くのエネルギーが必要になってしまうのですが、上記の技術によりクッション性を高めつつも沈み込みを抑えてより少ないエネルギーで速く走れるという理想的なソールを実現しています。

asicsは、NIKEやadidasなどの海外大手メーカーに劣らず、ランニングシューズに関する特許を非常にたくさん取得しており、とりわけCプロジェクト発足以降のここ数年は、とても多くの特許を出願しています。このことは、asicsがそれだけ熱心にスピード感をもって日々技術開発を行っていることの表れだと言えるでしょう。

また、ほかにも「METASPEED」には非常にユニークな技術が用いられています。
METASPEED SKY ※画像:asics 公式Webサイト

METASPEED SKY ※画像:asics 公式Webサイト

目を引くMETASPEED SKYのソール前方部分にある斜めの赤色ラインは、実はasicsが特許出願中の技術(特願2023-32918)なのです。

斜めのラインを施す位置が重要で、ソールの前方部分に配置することで、走っている際にランナーが足を踏み込む意識を高め、より効率的に走行することができる効果があると、特許文献に書かれています。

実際に筆者もこの「METASPEED SKY」を履いて走る際、足元に視線を移すとこのラインが見え、確かに踏み込む意識を持ちやすいと感じます。

このように、asicsは細部に至るまでさまざま技術を用いており、そうした技術の積み重ねが今回の躍進につながったのではないかと筆者は考えます。

今後もasicsからどんどん素晴らしいシューズが開発され、そして多くの世界中のランナーらがそれを履いて好記録を出していくことでしょう。

【“特許”という視点から見る世界陸上】
#1 汗をかくほど冷却される?女子マラソン銅・パテルナインが頭に着けていた「Omius」の秘密
#2 日本人向けの技術がハマった!競歩銅・勝木選手が履く「かかとのない厚底シューズ」とは?


>次ページ:“ゼロ”からの逆襲を果たしたasicsの厚底シューズ「METASPEED」
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