厚生労働省によると、2023年度の人工妊娠中絶の件数は12万6734件。最も多いのは20代ですが、40代も全体の10%を占めており、10代より多いのです。
「もう妊娠することはないだろう」と考えがちな40代。ですが、閉経していない限りは妊娠の可能性があります。今回は40代の予期せぬ妊娠の実例をご紹介しましょう。
マヤさん(45歳・仮名)の場合
マヤさん(45歳・仮名)は夫と18歳の長女、16歳の長男の四人暮らし。会社の先輩だった夫との結婚と同時に退職し、28歳で最初の出産。30代は二人の子どもの子育てに専念し、下の子の中学入学の頃からパートで仕事も始めました。7歳年上の夫は穏やかで優しい人柄で夫婦仲は良好だったものの、次男出産後はずっとセックスレスが続いていました。「夫は仕事にもプライベートにもガツガツしていないおっとりした性格で、夜の頻度は、結婚した当初も2、3週間に1回という感じ。二人の子どもはずっと母乳オンリーで育てていたので、長い間子どもたちと私が添い寝をして、夫は寝室で一人で寝るというスタイルでした。
レス生活が続いてはいましたが、普通に会話もスキンシップもあり、夫とは穏やかないい関係を築けていました。周囲のママたちも『夫とは何年もご無沙汰』という方ばかりでしたし、これが普通の夫婦の姿だと思ってました」
そんな、プラトニックで穏やかな関係だったマヤさん夫婦。昨年、結婚20周年を機に石垣島へ夫婦で旅行に行ったそうです。
記念日旅行で17年ぶりに営みが復活
「子どもたちも大きくなり、夏休みに新婚旅行以来の夫婦二人きりの旅行に行ってきました。記念日旅行なので、ちょっと奮発して石垣島の高級リゾートホテルに泊まりました。その初日の晩、二人でワインを飲んでくつろいでいたときに夫がキスしてきたんです。体をゆっくりこちらに預けてきて、自然と押し倒される形になって。そしてそのまま、ソファーの上でおよそ17年ぶりの行為となりました。
久しぶりで私も動転していましたし、妊娠のリスクなんて、そのときには1ミリも頭にありませんでした。仮にもし『妊娠するかも』と思っていたとしても、久々に訪れたそんなロマンチックなシーンで『ゴム持ってきた?』なんてとても言えませんでした。そしてこの旅行がきっかけで、夫婦の夜の営みが復活したのですが、『あのときに大丈夫だったんだから問題ない』と思って、特に避妊はしていませんでした」
その後、生理が不順と思っていたところで不正出血があり、婦人科に行ったところ妊娠が判明したそうです。
「夫に正直に『妊娠した』と話したときの第一声は『マジで?』でした。そしてそのあと無表情で『どうするかは君の判断に任せるよ』と言ったんです。
夫にとっても“望まない妊娠”だったんだろうとピピっと感じました。私自身もまたイチから子育てをする気力はありませんでした。今産んでも、子どもが小学生になったときに夫は定年。2人の子どもは大学に行かせたい……。経済的に難しいと思い、諦めました。40代で妊娠なんてしないと思っていた自分の甘さに反省しています」
ノゾミさん(44歳・仮名)の場合
ノゾミさん(44歳・仮名)は2歳年下の夫と小学生の娘との3人暮らし。料理が得意でマメな夫と近所に住む実家の母のサポートで、産休・育休を取りながら好きな編集の仕事を続けているワーキングマザーです。「仕事柄、私は不規則な時間に働くことも多いのですが、子育てにも家事にも熱心。お酒が強く飲み歩きが趣味の私と、お酒が弱くゲームが趣味というインドア派の夫は正反対のキャラクターですが、夫婦仲は良好です」
そんなノゾミさんが2年前、高校のときの同窓会に参加して再会したのが高1の時に付き合っていた元カレ。
「高1の夏から付き合っていたのですが、高2の夏に親の海外転勤で彼がドイツに移住したことで別れました。当時はSNSなんてなかったですし、国際電話も高額でしたから、結局は自然消滅でした。
同窓会には40人ぐらい来ていたのですが、『彼だ!』ってすぐに分かりました。だいぶ恰幅(かっぷく)がよくなっていたけれど、笑顔が高2の夏のままでした。胸が大きくうずきました」
元カレもノゾミさんに気付き、二人は1次会が終わると、2次会のカラオケには参加せず、二人だけでバーに飲みに出かけたのだそうです。
「一晩だけ」だったのに……
「付き合っていた当時の私たちはウブな田舎の高校生で、キスもしていませんでした。私は彼と別れた後、『二人がそのまま付き合っていたら、どんな風に愛し合ったんだろう?』とずっと想像していたんです。だから、彼に『まだ時間大丈夫?』と聞かれたときに迷わず『一緒にいたい』と答えました。夫には『明日は日曜だし、みんなでカラオケでオールすることになったから、始発で帰ります』とLINEをして、彼とホテルに行きました。深い関係になるつもりはなく、ただ高校生のときにできなかったことを、この一晩だけ取り戻したいと思ったんです」ノゾミさんにとってその晩は本当に「特別な一晩」となりました。
「実はその晩、妊娠してしまって。ベッドの中で『避妊はしてね』と言いましたし、彼も『分かってる』と言っていたので、暗黙の了解でコンドームはつけてくれたかな、と思っていたのですが、確認していませんでした。膣外射精のようだったし、『ドラマみたいに一度きりで妊娠することはないでしょ』と思っていました。でも生理が不順になり怖くなって婦人科に行ったら、やはり……。不倫の末の妊娠ですから、さすがに中絶一択でした。
夫にも元カレにも何も伝えていません。夫には友人と旅行に行くと言って手術後の3日ぐらいは都内のホテルで一人で過ごしました。元カレとのLINEも削除しました。『一晩だけ特別……』なんてバカだったと思います。この秘密は誰にも言わず、墓場まで持っていくつもりです」
「まさか」が本当に起きるのが人生。私が運営する恋人・夫婦仲相談所でさまざまな声を聞いていると、「事実はドラマよりドラマチック」と驚くことが山程あります。
ノゾミさんのケースも、もしノゾミさんが元カレに「費用を出せ」と迫っていたらどうなったでしょうか? 夫に怪しまれて、ばれてしまっていたら? 元カレが「離婚して俺と一緒になれ」と言ったら? 泥沼化する可能性は大いにあります。
閉経までは望まぬ妊娠で自分を傷つけることがないよう、万全の対策を心がけてください。いえ、閉経してからも、気を付けることはたくさんありますが。
<参考>
・「令和5年度衛生行政報告例の概況」(厚生労働省)
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