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【世界陸上】リレー決勝で桐生選手に感じた異変。再び9秒台を記録した「厚底特許シューズ」ではなく…(2ページ目)

【“特許”という視点から見る世界陸上 #4】東京2025世界陸上の最終日に行われた男子4×100mリレー決勝では、桐生祥秀選手にいつもと違う変化が起きていました。そんな桐生選手に起きていた異変を考察しながら、桐生選手が履く厚底特許シューズについて解説します。※写真:長田洋平/アフロスポーツ

藤枝 秀幸

藤枝 秀幸

弁理士 ガイド

弁理士・行政書士。IT会社等でのプログラマ・SEとしてのシステム開発等を経て、2009年に当事務所(現:藤枝知財法務事務所)を開業。現在はIT分野やエンタメ分野のクライアント様を中心に契約書業務や知的財産業務を日々行わせて頂いております。

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8年ぶりに9秒台を出せるようになった理由

桐生選手は、東京2025世界陸上の100m走も含め、最近はasicsの厚底シューズを履いて走っています。
東京世界陸上2025 100m走日本代表の桐生選手が履いていた「METASPEED SP2」 ※画像出典:桐生選手の公式Instagram

桐生選手が履いているasicsの赤い厚底シューズは「METASPEED SP 2」 ※画像:桐生選手 Instagram

マラソンや箱根駅伝では厚底シューズが一般的となっていますが、実は100m走などの短距離走でも、今では多くの選手が厚底シューズを着用しています。

今回の東京2025世界陸上の男子100m走でも、1位のセビル選手(ジャマイカ)と3位のライルズ選手(アメリカ)がadidasの厚底シューズ、2位のトンプソン選手(ジャマイカ)がNIKEの厚底シューズを履いて走っていました。

東京2020五輪あたりから海外勢を中心に厚底シューズで走る選手が増えてきたのですが、そうした中でも桐生選手は従来通り薄底シューズで走っていました。しかし、海外勢が厚底シューズで好記録を次々と出している様子を見て、海外勢と戦うために、厚底シューズに対応する必要性を強く感じるようになったと、インタビューなどで語っています。

そして、桐生選手は厚底シューズを履いてベストパフォーマンスを出せるよう、日常生活でもさまざまな厚底シューズで歩くなどして、厚底シューズに体を慣らしつつ、自分に合う厚底シューズを探したといいます。

そのような中、asicsの厚底シューズ「METASPEED SP 2」と出会い、今年の4月になってこの厚底シューズに慣れてきたと、自身のX(旧Twitter)にて述べていました。 そうした流れの中で、今年8月の記録会で8年ぶりとなる9秒台(9秒99)を記録したのです。

素晴らしい走りを見せてくれた2025世界陸上の男子4×100mリレーの予選でも、桐生選手はこのasicsの厚底シューズ「METASPEED SP 2」で走っていましたが、実は決勝ではこの厚底シューズを履いていなかったのです。

桐生選手は競技後のインタビューなどで、リレー決勝では雨が降っていたため、いつもの厚底シューズではなく、薄底のシューズに履き変えて走ったと語っていました。

実際に筆者がテレビで見ていても、桐生選手が緑色の薄底シューズで走っていることは確認できました。

そして、桐生選手はリレー決勝で3走として走り出した瞬間に右ふくらはぎをつってしまったとも語っていました。長い時間をかけて肉体や走り方を厚底シューズに合わせるようにし、実際に厚底シューズに慣れて良いタイムが出せるようになってきた中で、急に薄底シューズに変えて走ったことが、タイムが振るわなかった要因の1つとなったのかもしれません(雨の中でも、優勝したアメリカや2位のカナダの選手などの他国の選手は、いつもどおりの厚底シューズで走っていました)。

とはいえ、桐生選手は久々の9秒台を出すことができて、厚底シューズにどんどん慣れてきている状態ですから、今後さらに好記録を期待できそうです。

そんな桐生選手の久々の9秒台にも貢献したasicsの厚底シューズ「METASPEED SP 2」は、実はasicsのさまざまな「特許」が用いられており、日本人の走り方を考慮して作られたと考えられるのです。

>次ページ:日本人の特性を考慮した技術の結晶
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