亀山早苗の恋愛コラム

「気前がいい男性」は魅力的? “男のプライド”不要の現代、それでもおごるべきなのか

バブル期の男女は「デートでは男性がおごる」のが常識であり、女性が支払うのは「男の沽券にかかわる」ことだった。だがそんな価値観も消えて久しい現代、「おごること」について男女はそれぞれどのように考えているのだろうか。※サムネイル画像:PIXTA

亀山 早苗

亀山 早苗

恋愛 ガイド

どうして男女は愛し合うのか、どうして憎み合うのか。出会わなくていい人と出会ってしまい、うまくいきたい人とうまくいかない……。独身同士の恋愛、結婚、婚外恋愛など、日々、取材を重ねつつ男女関係のことを記事や本に書きつづっている。

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デートでは男性がおごるべき?(画像:PIXTA)

デートでは男性がおごるべき?(画像:PIXTA)

バブルがはじける前の男女の“常識”は、多くの場合「デートでは男性がおごる」ことになっていた。

学生であっても、男性は必死でアルバイトをして好きな女性におごっていたはずだ。ネットなどほぼない時代、あまたの雑誌を繰って人気店を調べ、予約をするのも男性の役割だった。念を入れる人は、1度、試食に行くこともあった。なんせデートである。女性に嫌われないためには「マメに尽くして金も出す」ことが必要だった。今思えば、女、何様ではあるが。

ただ、女性には女性のマニュアルがあった。おごってもらうことを当然とするな、とりあえず財布を出すフリくらいはすること、きちんとお礼を言う、もし2軒目にバーなどに行くなら「私が出す」と言え(だが結局、そこも男性が出すのが通例だったが)等々。自分が負担に思うなら、次に小さなプレゼントをするのもいいけれど、という程度のノリだった。当時は男性がおごるのが当然であり、レストランなどで女性が払うのは男性にとって「沽券にかかわる」ことだったのだ。

そのころ学生、もしくは若手会社員だった人たちは親となり、娘には「ケチな男とは付き合うな」と言っているかもしれない。だが、当時は同じ正社員であっても、あからさまに女性の方が給料が安かった。「稼げる女」も少なかった。今は事情が違う。派遣社員、契約社員にアルバイトと非正規労働者が大幅に増え、正社員でさえ一向に収入は上がらない。収入の多くを税金や社会保険料という名目で吸い取られ、挙げ句の果てに物価は高騰するばかり。こんな時代に「男はおごるものだ」という方が陳腐なのかもしれない。

最初のデートはおごってほしい

「せめて最初のデートくらいは男性に払ってほしいなと思うんですよ。それで楽しい時間を過ごせたら、次は私が払ってもいいし、今後は割り勘にしようとも言える。ただ、好きだと告白して食事に行こうと向こうから誘ってきての割り勘はないんじゃないのと思う。なんていうのかな、男として少しはかっこつけたらどうなのと……。まあ、女友達には非難されますけどね」

笑いながらそう言うヒロミさん(33歳)は、現在、「ゆるく婚活をしているような状態」だという。男がかっこつけていた時代は、社会に余裕があったのかもしれない。ムダをよしとする時代であり、男がおごってフラれたとしても「高い授業料」で済んでいたのだ。

「今どき、男性がおごり続けるのは不可能でしょうし、おごられ続けて平気でいられるほど私もお嬢なわけではない。でも『私のことを好きなんだ』『私を喜ばせようとしてくれているんだ』という実感がほしいんですよ。もちろんおごられればそれでOKということではないけど、最初のデートではその気持ちを見せてほしいんです」

「気前がいいこと」とは

気持ちは形でしか伝わらないこともある。互いにまだよく知らない状態であればよけいに、「おごる」という行為は気持ちを表現する1つの手段にはなり得る。自分のために何かをしてくれる人だと分かればポイントも上がるというもの。

「だからといって必ずしもうまくいくわけではないですけどね。以前、3カ月くらい付き合って別れた男性が、ちょっとした口げんかのときに『オレはおまえのためにどれだけ手間と金をかけたと思ってるんだ』と言ったのでビックリしました。いきなりのおまえ呼ばわり、しかも手間と金って……。その彼はずっとおごってくれていたから、私は時々彼の好きなワインを持って部屋を訪れていたんです。そういうときは私が食材を買って行って料理もしたし。五分五分とは言わないけど気持ちは分かっていると思っていた」

そんな経験もしたが、やはり「気前がいいこと」は男性の魅力の1つではないかと彼女は言う。その価値観は、女性なら分からないでもないという人が多いかもしれない。

割り勘を主張する彼女

「以前は僕も、男は女におごるものだろと思っていましたが、あるときからそうやって自分を縛るのをやめました」

シンイチさん(36歳)はそう言った。それは3年前、今の彼女と付き合い始めたころからだ。彼女は「男におごってもらうと借りができたようで嫌だ」と最初から割り勘を主張した。シンイチさんは「そんなに突っ張らないで、甘えたっていいじゃん」と言い続けた。だが彼女は譲らない。

「おごってもらったら、これイマイチだねと味について文句も言えない。好きなものも頼めない。私は人に遠慮して食べたいものも食べられないことにストレスを感じると、彼女は言い張った。遠慮しないで何でも頼めばいいと言っても、それはできないと」

男はプライドを捨てた方が楽

分かった、今日は割り勘にしようと言って、彼女が行きたがっていた洋食屋さんを訪れた。すると彼女はいつもよりずっとのびのびとメニューを選び、追加で料理も頼んでいる。今まで少食だと思っていた彼女が、実はかなりたくさん食べるタイプだと知ったのもそのときだ。

「親しくなっていくにつれ、きっちり割り勘からアバウト割り勘になりました。例えば5千円だったら僕が3千円、彼女が2千円、8千円なら僕が5千円というように。それは僕の方が少し収入が高いから。互いに少しずつ譲った感じで落ち着いています。ただ、彼女は昇進して給料が上がったから、今度、私がおごるねと言ってくれた。男が払うものだから彼女におごられたくないと昔は思っていたけど、今はありがたくおごられます。こういうのも気楽だなと思うようになりました」

そういえばかつては、たとえ女性が払う場合でもテーブルの下で男性にお金を渡し、男性に払ってもらうというのが定番だった。男の「沽券」を重視しなくなった今の時代、彼が言うように男女ともに気が楽かもしれない。
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