鉄道も地下街も多くて複雑なラビリンス
迷いやすい理由の1つが、交通事業者が多いこと。鉄道だけでも9路線、他に路線バス、高速バス、観光周遊バスなどが乗り入れます。市営地下鉄は東山線、桜通線の2路線があり、フロアが分かれているため意外や複雑。名鉄名古屋駅にいたっては3面2線しかないホームに、行き先の異なる4路線の列車が次々と入ってくるという全国でも類を見ない構造と運営で、うっかり乗り間違えてしまったら目的地とはまったくの別方向へ行ってしまう、なんて悲劇も。このように難易度の高い構造の割には構内の案内が十分とはいえず、すいすいと乗り替えたり使いこなしたりするのは至難の業です。
「迷駅」と呼ばれるもう1つの理由は地下街の多さ。とりわけ表玄関に当たる東側には「サンロード」「ミヤコ地下街キタチカ」「ダイナード」「ユニモール」「ゲートウォーク」と5つの地下街があり、縦横無尽に交錯するのに加えてカーブしている通りもあるため、方向感覚が怪しくなってしまうのです。
名古屋は地下街が多いことでも有名で、その大半は名古屋駅に集中する。写真は日本最古の本格地下街とも称される1957(昭和32)年3月開業のサンロード。写真のように斜めに交錯する通路が多い ※画像:筆者撮影
床サインの設置で地下鉄からの乗り換えが分かりやすく
「迷駅解消」は名古屋にとって積年の課題。名古屋市営地下鉄は、今年7月に解決策として名古屋駅の改札周辺に大きな「床サイン」を設置しました。 「名古屋駅は複数の鉄道が乗り入れているため、地下鉄から乗り換える際、どちらへ進むかで迷う方が多い。そこで『新幹線=青』『JR線=オレンジ』『あおなみ線=水色』『名鉄線=赤』『近鉄線=黄色』と色分けした床サインを、改札を出た箇所ごとに設置し、スムーズに誘導するようにしました」と名古屋市交通局担当者。床サインは最大横4m×縦2.33m。ピクトグラムとカラフルな色分けですぐに目に飛び込んできます。
「改札を出た後の1歩目がスムーズになるので、改札前のお客さまの滞留が減りました。何よりお客さまから各方面への行き方を尋ねられる回数が大幅に減少しました」
地下鉄を降りた後の誘導だけでなく、地下鉄東山線ホームには、地下鉄に乗る際の並び方を案内する床サインも設置。3列乗車を促すもので、ホームの混雑を軽減し地下鉄移動をスムーズにしてくれます。
「スーパーターミナル・ナゴヤ」に向けた計画が目白押し
今後も、迷駅解消のために数々の再整備計画が控えています。名古屋鉄道は名鉄名古屋駅の4線化を発表。2040年代前半には、中部国際空港への空港アクセスホームも設置します。2026年2月には名鉄百貨店本店が閉店し、商業施設やホテル、オフィスが入居するターミナルビルを2033年以降の開業を目指して建設。駅も含めた再開発が本格的に始まります。 名古屋市による「名古屋駅駅前広場の再整備プラン」はリニア中央新幹線の開業に向けて、名古屋駅および周辺を再整備し、「スーパーターミナル・ナゴヤ」を構築しようというもの。リニア開業は工事の遅れなどによって当初計画の2027年から大幅に後ろ倒しになってしまいましたが、再整備の計画は継続して進められています。 市の再整備プランで最も特徴的なのが東側エリアの「ターミナルスクエア」です。現在のタクシー・一般車スペースを分離配置して、ロータリー交差点がある場所にまで広場空間をつくり、現在は地下や地上に分散している公共交通機関の乗り換えを分かりやすくします。完成はまだ先ですが、実現すれば駅内での移動や乗り換え、さらには町中への周遊もスムーズになることが期待できます。さらには名古屋駅と、名古屋駅南側の「ささしまライブ24地区・名駅南地区」を結ぶ約300mの地下通路の整備が、2032年度完成に向けて進められる予定となっています。
今、迷いたくない人向け「名駅簡単ガイド」
「脱・迷駅」化は今後どんどん進んでいきそうそうです。とはいえ計画が一通り完了するのはまだ先のこと。とりあえず現状でもできるだけ迷うのは避けたいところです。各路線などの詳細な攻略法はさまざまなサイトで紹介されているのでそちらを参考にしていただくとして、ここでは主要交通機関を利用する際に便利な出口と待ち合わせ場所を挙げておきます。【桜通口】
・JR在来線
・地下鉄東山線・桜通線
・路線バス、なごや観光ルートバスメーグル(名古屋駅バスターミナル)
★待ち合わせ場所/金の時計 【広小路口】
・JR在来線
・名鉄線
・近鉄線
・高速バス、空港バス、基幹バス(名鉄バスセンター)
★待ち合わせ場所/ナナちゃん人形

名鉄百貨店メンズ館前の巨大マネキン、ナナちゃん人形。ほぼ1週間サイクルでさまざまな衣装に着せ替えられるので、待っている間も楽しい。JR名古屋駅広小路口からは徒歩約3分と少し距離があるので注意。また2026年の名鉄の再開発計画では、現在の居場所は工事エリアに入り、去就は2025年8月時点では未定 ※画像:筆者撮影
・新幹線
・あおなみ線
・地下鉄桜通線
・高速バス(名古屋駅ハイウェイバスのりば)
※待ち合わせ場所/銀の時計 以上を参考にスムーズな乗り換え、移動、そして名古屋観光をお楽しみください。