聖徳太子の一万円札が額面の22倍で落札
通常一万円札は、使えば一万円の価値です。しかしオークションに出品したら数十倍の価値になることもあります。高値が付きやすい紙幣の特徴としてよく知られているのは、紙幣に記載された番号がすべて同じであるゾロ目になっているもの。ゾロ目を集める収集家がいるため、プレミア価格がつきます。 ゾロ目は見てすぐにその珍しさに気付きやすいのですが、第124回入札誌「銀座」で高額落札された紙幣はゾロ目ではありませんでした。落札されたのは聖徳太子の一万円札で、その価値は22万円(手数料込みで25万6300円)。聖徳太子の一万円札を見る機会は今やほとんどないと思われますが、今回落札された一万円札をひと目見るだけでは、なぜ珍品なのか気付かない人が多いのではないでしょうか。カギは「ZX-R」にある
聖徳太子の一万円札は、1958年12月1日から発行され始めました。そして、1986年1月4日に発行が停止されました。発行停止からすでに40年近く経過しているため、一度も見たことがない、使ったことがない人のほうが多いかもしれません。縦が84mm、横が174mmとサイズが大きいのが特徴です(ちなみに、新紙幣の渋沢栄一の一万円札は縦が76mm、横が160mmです)。さて、この紙幣が珍品たるゆえんは、 4カ所に記載された記番号(アルファベットと番号)「ZX019689R」にあります。現在私たちがよく見る紙幣では、記番号は左上と右下の2カ所ですが、当時の聖徳太子の一万円札は4カ所に記番号が記載されているのが通常なので、それだけではエラーでもなんでもありません。
ポイントは、記番号のアルファベット部分「ZX-R」にあります。実は記番号の最初が、ZS、ZT、ZU、ZV、ZW、ZX、ZY、ZZのいずれかで、最後がRと表記されているものは、「沖縄復帰特殊記号券」と呼ばれる特別な紙幣です。沖縄が本土復帰する際に、米ドルと日本円を交換するために用いられた紙幣で、沖縄県内でのみ流通したものなのです。
残存数は極めて少ない状況に
新紙幣が登場するたびに、旧紙幣は回収されていくことになるため、そもそも古い紙幣を保有する機会は減っていきます。沖縄復帰特殊記号券は当時機密扱いとされ、沖縄県内のみで流通したこと自体が民間に知らされていなかったため、普通の一万円札として利用されたのでしょう。結果的に、その多くは回収され、残存数は極めて少ない状況となっているために高値がつく状況となっています。なお、さらに貴重となってくるのは岩倉具視の五百円札ZZ-P、ZZ-Q、ZZ-R、聖徳太子の五千円札ZY-R、ZZ-Rです。これらはそもそも一万円札や千円札と比べて交換された枚数が少ないため、さらに貴重となることでしょう。
なかなか機会はないかもしれませんが、もし見つかればお宝になります。ぜひ記番号の番号だけではなく、アルファベット部分にも注目して古い紙幣を確認してみるとよいでしょう。
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<参考>
第124回入札誌「銀座」 Lot番号:562 聖徳太子10000円札 2桁 沖縄復帰特殊記号券 ZX019689R | EF+