綾瀬はるかの「美しい背中」もNG?
このところ、女性有名人の「露出」にさまざまな声が上がっている。綾瀬はるかさんのユニクロのエアリズムのCMもかなり話題になった。上半身裸で窓から外を見ている綾瀬さんの美しい背中が映し出されており、その後、エアリズムのタンクトップにシャツを羽織って出掛けていくのだが、「なぜ上半身が裸なのか」「必要?」などという言葉がSNSに踊った。CMとして上半身が裸というコンセプトは分かりやすいのだが、美しい背中であっても女性からの拒絶反応はあるようだ。肉体というものは、それほど隠さなくてはいけないものなのだろうか。
そういえば外国から来ている観光客の中には、かなり露出度の高い服装で街を闊歩(かっぽ)している女性たちも多い。だが、日本ではなかなかタンクトップのみ、あるいは薄いシャツを羽織っただけの大人の女性は見かけない。
イタリアで見かけた光景
「何年か前、夏のイタリアに行ったことがあるんです。街を歩く女性たちの多くがタンクトップ1枚。腕はもちろん、胸元も大きく開いていた。それが若い人じゃないんですよ。暑いんだからしょうがないでしょっていう感じ。ある種のおおらかさを感じました」笑いながらそう言うカヨさん(39歳)。もちろん、観光で教会などに入るときはきちんと肌を隠していたという。
「私も思い切って、街中ではタンクトップで歩いてみましたが、もちろん誰も気にしない。その格好でアイスクリームを食べていたら、目が合った地元民に親指を立てられました。片言の英語で話してみると、日本の女性は肌を露出しないよねと。確かに私の周りでも、休日にノースリーブは着るとしても肩がきちんと隠れているデザイン性のあるものが多い。イタリアで見かけたような露出度の高いタンクトップで街に出ることはないですね」
露出していると性被害に遭いやすいという思いがあるからなのだろうか。それ以前に、「はしたない」と思うのだろうか。
「見せたい」わけではない
「私自身は、きれいであれば出したいですけどね。ただ、あのイタリアでの女性たちはきれいであるかどうかなんてたぶん、考えていない。暑いからという理由だけだと思う。考えてみれば、暑いから薄着、寒いから厚着というのは自然だと思いますけど。ただ、友人たちに言わせれば、『プロポーションがよくなければ見せられない』『変な目で見る男性が必ずいるから不安』と言っていますね」本来、「自然であること」ができない、してはいけないと、抑圧されているのが現状なのかもしれない。
もともと「見せたい」わけではないのだ。暑いから薄着になりたいだけ。何を着ようが本人の自由であるはずなのに、それができないのはやはり生きづらいと言えるだろう。上半身裸の背中だけというCMにさえ、「あんなに見せるべきではない」と考える人が多いのだから。
真夏でもストッキング?
最近はさすがに真夏にストッキングをはく女性も少なくなっているが、それでもはいている人たちはいる。「職場の先輩がそうですね。冷え性だとかそういうことではないようです。女性が素足ではみっともないと考えている。服装は自由なので、生足におしゃれなサンダルで行ったら『生足はやめなさい。若くないんだから』と言われました。別に超ミニスカートだったわけじゃないんですよ。しかも若ければよくて若くないとダメというのは、女性自らが自分の首を締めているような言葉でしょ。だから『そういう言い方はおかしいと思いますよ。接客業ではないし、内勤で外部の人と会わない日は、別に好きな格好でいいんじゃないですか』と言ったら、『女らしくない』と言われました。久々に聞いた言葉でしたね」
若ければどんなファッションでも許されるが、若くないとみっともないというのも誤解と偏見のなせるわざ。カヨさんが言うように、TPOに応じて好きなファッションで出社してもいいはずだ。そもそも会社の規定がそうなっているのだから。
「若くないんだから、は堪えましたね。いいかげん、年齢を気にするのはやめましょうと言いたい。しかも大して年齢の変わらない女性先輩に言われると、なんだかなあとがっかりします」
いつになったら、好きなファッションで出掛けても「露出し過ぎ」「みっともない」と言われない時代が来るのだろう。自分のことは自分で決めたい。ただそれだけのはずなのだが……。