人間関係

綾瀬はるか主演『ひとりでしにたい』結末に驚きの声。アラフォーの「終活」、当事者の事情とは

綾瀬はるかさん主演の土曜ドラマ『ひとりでしにたい』(NHK総合)で描かれたアラフォー女性の「終活」。自身の今後の人生を選択する中で終活について考え、悩み、さまざまな決断を下した当事者たちの話を紹介する。(サムネイル画像:NHK公式Webサイトより)

亀山 早苗

亀山 早苗

恋愛 ガイド

どうして男女は愛し合うのか、どうして憎み合うのか。出会わなくていい人と出会ってしまい、うまくいきたい人とうまくいかない……。独身同士の恋愛、結婚、婚外恋愛など、日々、取材を重ねつつ男女関係のことを記事や本に書きつづっている。

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先日最終回を迎えた綾瀬はるかさん主演のドラマ『ひとりでしにたい』(NHK総合)。39歳、美術館の学芸員という仕事をもち、マンションを買って猫と暮らす鳴海(綾瀬はるか)。一人での生活を楽しんでいたが、キャリアウーマンだった伯母が孤独死したことで婚活に目覚める。ところが婚活がうまくいかず、いきなり180度転換して「一人で生きて一人で死ぬ」と「終活」にチェンジした。

アラフォー女性が終活とはなんとも早過ぎるのだが、「よりよく生きるために」終活を考えた鳴海は、まず自分より親に終活させなくてはと思い至る。

その結果、彼女は今までの人生をより深く考えることとなる。両親の夫婦関係、親と自分の関係、さらには自分が以前付き合っていた恋人との関係……。

アラフォーは複雑な時期である。独身でいるのか結婚するのか、子どもを産めるぎりぎりの時期かもしれない、親は介護が必要なほどではないが老いが目立つようになっている。ここでの選択が、今後の人生を決めると言っても過言ではないと、当事者たちは焦りと諦めに悩まされるかもしれない。

アラフォーの決断

「私は42歳の時に結婚しました」

そう言うのはモモコさんだ。相手は顔見知りだった3歳年上の仕事関係者だ。たまたま世間話をしていたら、互いに演劇が好きと分かり、一緒に見に行くようになって交際に発展した。

「当時、私は母と二人で暮らしていました。私は一人っ子で、中学生の時に父を病気で亡くしています。それ以来、母は苦労しながら私を育ててくれた。それもあって結婚して母を見捨てることができなかった。でも40歳を過ぎた時、私は一生、母のもとで生きていくしかないのかと愕然とした。そのころすでに立場が逆転して、母は私がいなければ生活できないくせに、文句ばかり言うようになっていて。会社からの帰りが遅いだけで家の中で泣いていたりするんですよ。少し認知症になりかけていたんです。もう耐えられないと思っていました」

だからプロポーズされた時、結婚はできないと彼に言った。話を聞いてくれた彼は「一緒に住んでもいいよ」と軽く言ったという。

「でも私は三人で住む気はありませんでした。私だって好きな人と二人で暮らしたい。ちょうど彼の会社が早期退職者を募っていて、彼はそれに応募したいと。実家が空き家になっているからそこに住みたいという。昔の友達と仕事を始めることもできるというから、じゃあ、私も行くと決めました」

母と別れ新たな生活に

母には家を売って施設に入ることを勧めた。抵抗した母だが、1年かけて説得した。その間、彼は実家のリフォームを進め、いつモモコさんが来てもいいように準備していてくれた。

「彼の実家の近くの施設に母を入れようと思ったんですが、母は『私はあんたと縁を切るから、こっちにいる』と住んでいる自宅近くの施設に入ると決めていました。それならそれでいいと私も複雑だったけど、縁を切るように別れ、私は彼のもとへ行きました」

夫は新しい仕事を始めていた。モモコさんは夫の友人の紹介で別の仕事を得ることができた。二人で仕事をしながら、週末はのんびり家で過ごしたり、彼の友人夫婦とホームパーティーをしたり。今まで知らなかったような穏やかで楽しい時間を過ごすようになった。

「いずれ私たちも終活に直面するんでしょうね。子どもがいないから家はどうするのかとか、お墓はどうするのかとか。夫にそう言ったら、『僕たちはまだ新婚だよ。まだまだ老いや終活を考えるのはやめて、今を楽しく暮らしていこうよ』って。ごもっとも。結婚してよかったと思うのは、そういうときですね。私はどちらかというと暗い側面ばかり見てしまうけど、夫は明るい方を向いて歩いていく。それに助けられています」

縁を切ったはずの母のもとへも、彼女は数カ月に一度は面会に行く。母もすっかり諦めたのか、ようやく対等な目線で会話ができるようになったそうだ。

40代、終活を進めていたけれど

45歳、終活真っ盛りだと言うのは、マサミさんだ。40歳直前に、両親を相次いで亡くした。「両親は一人っ子の私を大事に育ててくれたけど、大人になってからはそれがうっとうしくもあった。母は『結婚なんかしないで、ずっと私たちと暮らそう』という人でしたから。両親がいなくなったのは寂しいけど、私の自立のスタートでもありました」

定年まであと20年あるが、彼女はすでに終活にいそしんできた。一軒家を一人で維持していくのは難しいと判断、家を売って、リノベーションされたマンションを購入した。

「1LDKで十分ですから。両親のお墓も、購入したマンション近くの納骨堂にしました。私もそこに入れてもらうつもり。引っ越した時に親のものはほぼ断捨離して、今はすっきりと暮らしています」

とはいえ、写真だけは捨てられず、今も整理しきれていなかった。だがつい先日、整理しようと見ているうちに、両親のものをほとんど捨ててしまったことを激しく後悔した。

一人で生きていく不安

「父が大事にしていた大きなテーブルや、母がずっと弾いていたピアノなども売ってしまったんですが、とっておけばよかったんじゃないかと……。もちろん、テーブルもピアノも今の私の部屋に置くのは無理なんですが、二人が一番大事にしていたものをあっさり売ったことが悔やまれて」

親がいなくなって、ある意味、解放されたような気持ちになった状態のまま、さまざまなものを処分し過ぎてしまったのだろう。だが実際にはとっておくことができなかったものなのだから仕方がない。

「でもどこかに贈呈することもできたのに……。確かに親から解放されたい気持ちはあったけど、実際に一人で生活をしてみると、やはり寂しいんですよね。あんなに親との間に葛藤があったのに、それを言葉にしてももう親には届かない。ケンカもできない。もし80歳まで生きるとしたら、あと35年も一人での生活が続く。親と暮らすより孤独の方が地獄なんじゃないかと思うと、ひどく怖くなってしまって……」

婚活したいとは思わないが、一人で生きるのもつら過ぎる。この不安をどうやって払拭(ふっしょく)すればいいのかとマサミさんは暗い表情になった。
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