ただし、どんな場合も返戻金があるわけではありません。保険の種類や契約内容、加入期間によって返戻金の有無や金額、返戻率は異なります。
今回は、生命保険を解約したときにお金が戻る仕組みや、返戻金がある保険の種類、解約時に注意したいポイントを分かりやすく解説します。
解約返戻金とは?
解約返戻金(かいやくへんれいきん)とは、生命保険を途中で解約したときに受け取れるお金のことです。保険会社は、契約者が支払った保険料の中から一部を積み立てて、将来の保険金の支払いに備えています。解約返戻金は、その積み立ての一部を、契約を途中で解約した人に返すお金のことです。
解約返戻金の金額は、どの保険に入っているか、どのタイミングで解約するかによって異なります。特に、加入してすぐに解約すると、戻ってくる金額は少なくなるか、まったく返ってこない場合もあります。
一般的に、解約返戻金があるのは「貯蓄性のある保険」で、終身保険、養老保険、学資保険などがその代表です。一方、掛け捨て型の保険(例:定期保険や医療保険など)では、解約返戻金がないか、あってもごくわずかです。
解約返戻金の返戻率とは?
解約返戻金の「返戻率」とは、これまでに支払った保険料の合計に対して、解約するとどれくらいのお金が戻ってくるかを示す割合のことです。例えば、返戻率が100%なら「払った保険料と同じ金額が戻ってくる」、80%なら「払った保険料の8割が戻ってくる」、という意味になります。
返戻率は、次の式で計算できます。
・解約返戻金÷払込保険料の総額×100(%)
一般的に、保険を早い段階で解約すると、保険会社が手数料や経費を差し引くため返戻率はわずかという場合が多いです。しかし、長期間継続していた保険を解約した場合は、100%を超える(支払った保険料より多く戻る)契約もあります。
解約手続きを行うときの2つの注意点
生命保険を解約してお金(解約返戻金)を受け取るときは、以下の2つのポイントに注意しましょう。●解約手続きを行うときの注意点1:解約返戻金だけでなく、保険の目的も見直して
保険を解約する前には、「解約返戻金がいくら戻るのか」を確認することが大切です。金額は、保険証券や設計書に記載されているほか、保険会社に問い合わせれば詳しく教えてもらえます。
ただし、ここで注意したいのは「返戻金があるからおトク」という考え方にとらわれ過ぎないこと。生命保険は、あくまで「万が一のときの保障」が目的のものです。返戻金は、その保障に“おまけ”としてついてくるようなもの。
「お金が戻ってくるから」「貯蓄代わりになるから」といった理由だけで保険に入るのは、本来の目的からズレてしまいます。
加入時には、その保険が本当に必要な保障内容かどうか、自分や家族にとって適切な金額かどうかを、しっかり見極めることが大切です。
●利益が出ると「税金」がかかることもある
解約返戻金がこれまで払った保険料の総額を上回る場合、「利益が出た」とみなされ、税金の対象になることがあります。生命保険契約を満期または解約した際、保険料負担者と受取人の関係によって、所得税(一時所得)または贈与税のどちらかがかかる可能性があります。
例えば、保険料の支払う人、解約返戻金の受け取る人が同じ場合は「所得税」がかかる場合があります。また、親が保険料を支払い、子どもが解約返戻金を受け取るなど、「払った人」と「受け取る人」が違うときは、「贈与税」がかかることもあります。
以下で、実際の計算例を見てみましょう。
・解約するときまで支払った保険料:400万円
・解約返戻金:500万円(返戻率125%)
この場合、差額の「100万円」が利益となります。
【所得税がかかる場合】
一時所得の金額は、受け取った保険金の総額から既に払い込んだ保険料または掛金の額を差し引き、さらに一時所得の特別控除額50万円を差し引いた金額です。課税の対象になるのは、この金額をさらに2分の1にした金額です。
上記の場合であれば、
・100万円-50万円(特別控除額)×1/2=25万円【課税対象】
これより、25万円以外のほかの所得があれば合算され、確定申告が必要になります。ただし、一時所得の合計が20万円以下の給与所得者なら申告不要となるケースもあります。
【贈与税がかかる場合】
親が保険料を支払い、子どもが解約返戻金500万円を受け取った場合、解約返戻金の全額が「贈与されるもの」とみなされます。贈与税には110万円の基礎控除があり、それを超えると税金がかかります。
上記の場合であれば、
・500万円-110万円(基礎控除)=390万円【課税対象】
基礎控除を差し引いた390万円に対して贈与税がかかります。なお、もし解約返戻金で利益が出ても、基礎控除(110万円)以下であれば、贈与税はかかりません。
上記の税務の取り扱いは2024年12月時点の情報です。課税の可否や金額は所得状況や商品タイプにより異なるため、詳細は税理士や保険会社に確認するのが確実です。
参照:国税庁「生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき」