人間関係

「妻を奴隷扱い」したモラハラ元夫を“いい人”と言う実母。現夫への「ひどい皮肉」に愕然

弁当に前夜の残り物を入れたら「お前が食え」。生理用品も生活費として認めない。ひどいモラハラ夫と離婚し再婚した50歳女性だが、元夫の外面にだまされ今でも「いい人」と言う実母が現夫へ冷たく当たるのが苦しくてたまらないという。※サムネイル画像:PIXTA

亀山 早苗

亀山 早苗

恋愛 ガイド

どうして男女は愛し合うのか、どうして憎み合うのか。出会わなくていい人と出会ってしまい、うまくいきたい人とうまくいかない……。独身同士の恋愛、結婚、婚外恋愛など、日々、取材を重ねつつ男女関係のことを記事や本に書きつづっている。

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夫のモラハラ、暴力などに耐えかねて離婚する妻たちは少なくない。自分の心身の安全を考えれば当然のことだ。だがモラハラ夫は外面がいいことが多く、それにだまされてきた妻の両親は、当然のことながら離婚に反対するものだ。

両親の反対を押し切って離婚

ひどいモラハラ夫と離婚したが(画像出典:PIXTA)

ひどいモラハラ夫と離婚したが(画像出典:PIXTA)

「親から勧められた見合い相手と結婚しました。収入は確かによかったし、うちの両親にも優しかった。でも私に対してはモラハラ、ときには暴力とひどい男だったんです」

27歳で結婚、二人の子をもうけたが40歳のときとうとう耐えられなくて離婚したミナミさん(50歳)。もちろん両親は離婚に大反対だった。

「前夫は父が入院したときも、毎日のように見舞いに行き、退院時には会社を半休にして車を出して迎えに行った。地元では町内会の役員も積極的にこなし、誰からも『すてきなダンナさんね』と言われるタイプ。でも私のことは奴隷扱いでした」

毎日、夫が弁当を持っていくので早起きして作ったが「ありがとう」と言われたことはない。前夜の残り物など入れたら怒鳴られる。「残り物はおまえが食え」と言われた。

朝晩の食事は全て手作りでなければならない。冷凍餃子を出したら、テーブルの上のものを全て手で払われた。床に落ちたものは、ミナミさんの夕飯となり、その日は再度、夕飯を作らされた。

夫の仕打ちを両親に訴えたが……

「生活費として10万円もらっていましたが、1週間単位で家計簿とレシートを精査されました。1度だけハンドクリームを買ったら、こんなものは認めないと返金させられて。自分のものは独身時代に貯めたお金で買いました。生理用品も認めてもらえなかった」

それでも子どものためと頑張っていたが、上の子の目の前で夫がミナミさんを平手打ちした。子どもはショックを受けて言葉を発しなくなってしまった。

「数日後、二人の子を連れて実家に戻りました。両親に訴えたけど、二人とも信じないんですよ。子どもに聞いてみてほしいと言ったけど、上の子は言葉を発しない。それでも信じてくれなかったので、仲よくしていたいとこを頼って泊めてもらい、そこから仕事を見つけて家を見つけて……。離婚は裁判になりましたが、私が克明に日記をつけていたこともあり、2年がかりでようやく離婚できました」

それでもなお、両親は「いい人だったのに」と話していた。

思いがけず同僚と再婚することに

その後、ミナミさんは朝から晩まで必死に働いた。元夫は養育費だけは支払ってくれたが、生活は苦しかった。

「それでもようやく下の子が大学に入れてホッとしたのが2年前。会社でいろいろ相談に乗ってくれていた同い年の同僚がいるんですが、下も大学に入ったと話したら『付き合ってもらえませんか』と。私は男女を超えた友達だと思っていたので驚きました。彼はずっと独身で結婚なんて興味がないと思っていたし。すると『ずっとあなたが好きだったけど、頑張っているあなたに付き合おうとは言えなかった』って。何くれとなく相談に乗ってくれたり、子どもたちを気にかけてキャンプに連れて行ってくれたりしていたんですが、私のことが好きだったなんて気づかなかった」

子どもたちに話すと「よかったね」「私は前から彼はお母さんが好きなんだなと思ってた」という反応。それに背中を押されて付き合ってみると、彼は今までと変わりなく優しくしてくれた。

「それでも、彼から結婚という話がでたときは怖かった。結婚すると豹変(ひょうへん)するかもしれないし。彼にそう言ったら、僕は変わらないし、あなたを下に見たこともない。人はみんな対等だと思うと」

ただ1つ、気になったのは数年前に父親が亡くなったため、一人で暮らしている母のことだった。すっかり気弱になった母をこのままにしておいていいのかと思っていた矢先だったのだ。母との間には離婚のころから軋轢(あつれき)があったが、それでも70代後半になった母を一人で放っておくわけにはいかないとも思っていた。

「私が何も言わないのに、彼は『お母さんも一緒に住んだらどうかな』って。母に言ったら、『一緒に住んでほしいというならいいけど』と上から目線。夫は『ぜひ一緒に住んでほしいです。みんなでにぎやかに楽しく暮らしましょう』と大人の回答でした。下の子は家から大学に通っているので、母と再婚した夫、息子、私の四人暮らしになったんです」

前夫の話を繰り返す母

それから1年あまり。母は今でも前の夫のことをよく話に出す。ミナミさんとしては聞きたくもない名前だから、「もうやめて」と言うのだが、「あの人はいい人だった」と繰り返す。

「今の夫に申し訳ないし、母の言っていることは全然違うし……。でも夫は鷹揚に聞き流してくれている。それが申し訳なくて」

やはり母には施設に行ってもらうしかないとミナミさんは考えている。だが夫は「まあ、もう少しいいんじゃないの? そのうちお母さんも変わるかもしれないから」と穏やかに言うそうだ。

「ただ、私が苦しくてたまらない。こんないい人に、母は皮肉や文句ばかり言うから。息子が諫めても母は耳を貸さない」

それでも最近、母が地域のサークルなどに入って外へ出るようになり、いろいろな人と話すことが増えたせいか、夫への皮肉が少し減りつつあるのだという。

「この分なら大丈夫だよ。僕のことは気にしなくていいから。きみもお母さんさんに少し優しくしてあげなよと夫が言うんです。私だけ再婚、しかも親も子もついてきて、なんだか夫には申し訳ない気持ちだけが募っていたんですが、とにかく気にせず楽しく暮らそうと言われ続けて甘えています。人生の折り返し地点で、こんないいことがあるとは思ってもみなかった」

頑張ってきたんだから、これからは少し気楽に過ごしなさいと言ってくれる夫に、ミナミさんは感謝の念しかないという。
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