<目次>
Q1. うなぎの流通の現状はどうなっていますか?
高嶋編集長(以下、高嶋):国内のうなぎ流通量(2024年データ)のうち、約70%が輸入(生きたままの鰻である「活鰻(かつまん)」と加工品)で、国産の養殖うなぎは30%ほどになります。ただし、国産の養殖うなぎの稚魚も約60%が輸入の稚魚なのです(年によって変動)。うなぎの養殖は、天然で捕獲する稚魚(シラスウナギ)を養殖場で大きく育てて出荷しています。
Q2. そもそも「ワシントン条約」ってなんですか?
高嶋:ワシントン条約とは、野生動植物の国際取引がその種の絶滅を招かないように規制することを目的とした国際条約です。二ホンウナギについては、2014年に「国際自然保護連合(IUCN)」の「絶滅危惧IB類(EN)」に分類され、現在もそのままです。2025年現在、ニホンウナギはワシントン条約の「附属書II」には掲載されていませんが、国際的な規制対象にするべきではないかという議論は継続して行われてきました。
2025年7月下旬ごろに国連の下部組織「国際連合食糧農業機関(FAO)」が、EUの提案内容が適切かを審査します。11月のワシントン条約締結国会議で、FAOの審査レポートを判断材料に附属書への掲載の可否が決まります。
Q3. 「附属書II」とはなんですか?
高嶋:ワシントン条約掲載の附属書には「I」から「III」までのランクがあります。「I」は絶滅のおそれがあり、国際取引は原則禁止。「II」は国際取引は規制されているが、禁止されてはいません。ただし、輸出国による輸出許可書の発給が必要になります。「III」は特定の国の要求によって記載された種で、規制は緩やかです。Q4. 日本として対策はしているの?
高嶋:稚魚に対し、水産流通適正化法によるトレーサビリティの強化(12月1日から適用)、東アジア3か国1地域(日本、中国、韓国、台湾)による、シラス池入れ量の制限、天然うなぎの漁獲規制、ダムや堰(せき)への魚道設置などを行ってきました。近年はうなぎの完全養殖技術の向上や人口稚魚の開発も進み、大幅なコストダウンにさらなる大量養殖技術も進んできました。
そして、最近話題の「メスうなぎ」の取り組みも行っています。餌に大豆イソフラボンを混ぜてうなぎの性別のメス化を促すという養殖技術の向上により、養殖うなぎの約9割がメスになるように調整することが可能となりました。
メスうなぎはオスよりも大きく育ちます。従来は、1尾分のうなぎを使用してうな重を作っていたのを今までの半分の身で作れるようになれば、消費する個体数を抑えられるのではという期待があります。
また、たまに「日本はうなぎを食べ過ぎだ!」という声が聞かれますが、2000年の16万トンをピークに、2024年には約6万トンと大幅に減少しているのです。いずれにしても、これらの取り組みや現状を11月の本会議までに各国にアピールしていくということが大切かと思います。
Q5. 今後、うなぎは食べられなくなってしまいますか?
高嶋:そのようなことはありません。また、「附属書II」への掲載が確定しても「留保」を表明することで、附属書II掲載種は非掲載扱いになります。ただ、国際取引を合法的に行うためには、輸出国・輸入国の両国が留保している必要があります。デメリットとしては、三分の二以上の多数決で決まった事項を履行しないという国際批判を受ける可能性があります。
「附属書II」の掲載により最悪な場合は、うなぎの流通量は減りますが、国内で獲られたうなぎは流通します。うなぎを食すことは古くからの日本の食文化です。皆さんは過度に心配せず、うなぎ愛をもって食べたいときに食すのがよいと思います。
<取材協力>
「日本養殖新聞」高嶋編集長