さて、そんな昔の五千円札がなぜ高額落札となったのでしょうか。実は新渡戸稲造の五千円札といっても1種類ではなく、複数の種類があり、マニアにとってはこうした複数種類あるものはすべて集めたくなるといった心理もあったのかもしれません。
では、具体的に確認していきましょう。
新渡戸稲造の五千円札は実は6種類ある

12万円で落札された実際の五千円札(表面) ※画像:第123回入札誌「銀座」 Lot番号:568 新渡戸稲造5000円札 茶番・大蔵 1桁 C666666T/UNC
そしてもう1つのポイントは、実は新渡戸稲造の五千円札は6種類あるということ。その6種類とは、大蔵省黒一桁、大蔵省黒二桁、大蔵省茶一桁、大蔵省茶二桁、財務省茶二桁、国立印刷局茶二桁です。今回の落札品は、五千円札の下真ん中辺りに「大蔵省印刷局製造」とあります。また、記番号を見ると最初にC、最後にTと表記があります。これは一桁に該当します。二桁の場合は、最初がCF、最後がTKのように英文字部分が二桁となります。番号は茶色です。
つまり、「大蔵省茶一桁」であることが分かります。茶色(褐色)の数字は、1993年12月1日から発行されたものです。数はあるものの、今から30年程度は経過しているものであるため、プレミアムが付いたと言ってよいでしょう。欲しい人はゾロ目全種類、時代ごとに全種類集めたりするため、入札による評価が高かったと言えるのではないでしょうか。
紙幣1枚とっても私たちが知らないことはたくさんある
今回は、新渡戸稲造の五千円札について紹介してきました。紙幣1枚とっても、実は何種類かに分かれます。可能な番号をすべて発行したために記番号の色を変えて発行することは今後も十分考えられます。樋口一葉の五千円札では、ホログラムの形が途中で変わるということも生じています。偽造防止措置も至る所にちりばめられています。ぜひ一度現行紙幣で構いませんので、じっくりよく見てみてください。あ、こんな所にこんな表記が……など、紙幣の面白さに気付くかもしれませんよ。
<参考>
第123回入札誌「銀座」 Lot番号:568 新渡戸稲造5000円札 茶番・大蔵 1桁 C666666T/UNC
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