しかし、お金持ちほど、こうした心理に流されず「自分にとっての価値」を軸に選びます。たとえ“梅”が1番しっくりくると判断すれば、迷わずそれを選ぶのです。
今回は、そんな「価格や見た目に惑わされず、本質を見抜く選び方」のヒントをお届けします。
松・竹・梅を選ぶ心理に隠されるもの?
「松・竹・梅」と聞くと、なんとなく「松=高級」「梅=お手頃」といった印象を持つ方も多いでしょう。そして多くの人が選ぶのは、ちょうど中間の「竹」。実はこれ、人間の心理に基づいた行動であり、「松竹梅の法則」として営業やマーケティングの現場でもよく使われています。この法則は、価格やグレードなどの選択肢が3つ提示されたときに、人が“極端を避けて中間を選びやすい”という心理を利用したものです。行動経済学ではこれを「極端回避性」と呼びます。
例えば、レストランで「松:1万円」「竹:5000円」「梅:2000円」というコースがあった場合、最も高い「松」は、「ぜいたく過ぎるかも」「失敗したら痛手が大きい」と感じる人も。一方、最も安い「梅」だと「内容が物足りないかも」「ケチだと思われたくない」と気になる人もいるでしょう。
その結果、多くの人が“無難”な中間である「竹」を選びます。「安心感」や「適度な品質感」が、選びやすさにつながるのです。ビジネスシーンではこの傾向を逆手に取り、真ん中の選択肢が売れやすくなるよう価格や内容を設計していることも珍しくありません。
しかし、“無難”な「竹」を選ぶことが、必ずしも自分にとってベストな選択とは限りません。「松竹梅」の中から“自分にとって本当に価値がある”モノを選べているか?が、満足度のカギになるのです。たとえ最も安価な「梅」であっても、本当に必要なモノであれば、それは“賢い選択”と言えるでしょう。
「松竹梅の法則」は便利な考え方ですが、それに流されず、自分の感覚や目的に照らして選ぶことが、後悔しない消費につながっていきます。賢い選び方のヒントを2つお教えしましょう。
ヒント1:自分の優先順位を知る
「せっかくだし」「失敗したくないから」と、つい真ん中の「竹」を選ぶ――そんな行動は、実は“無難な選択”に逃げているだけかもしれません。でも、自分にとって何を大事にしたいのかが明確であれば、価格に左右されず“価値ある選択”ができるようになります。例えば、ランチ選び。親しい友人とゆっくり話す時間を楽しみたい日には、ちょっといい雰囲気の「竹」や「松」のお店を選ぶ。でも、普段の1人ランチや仕事の合間に済ませたいときには、迷わず「梅」に。カフェに入っても、ドリンク1杯だけで満足したり、デザートは付けずに出たりする、というふうに自分のルールを決めておけば、心にも財布にもやさしい買い方ができます。
「今、この買い物で1番大事にしたいのは“何”なのか?」を自分に問い掛ける――それが、賢い「梅」選びの第一歩です。
ヒント2:忘れず買った後に振り返りを
モノを選ぶときに慎重になるのも大切ですが、「買った後」に振り返ることも、賢い選び方には欠かせません。実際に使ってみてどう感じたか?満足できたか? この確認を重ねることで、自分にとって“本当に価値あるモノ”が見えてきます。例えば、奮発して買ったブランドバッグ。高級感はあるけれど、実際は重くて肩が凝る、カジュアルな服と合わない、持つのが気後れする……。そんな経験から「自分には、軽くてどんな服にも合わせやすいバッグのほうが使いやすい」と気付いたという人も多いもの。
このように、モノを選んだ“その後”に目を向けることが、自分に合う選び方を育ててくれるのです。ノートやスマホにメモしておくと、次の買い物に迷いがなくなります。後悔しない買い物は、経験と振り返りの積み重ねから生まれます。