子育て

「徒競走でビリだった……」早生まれのハンデは褒め方次第で自信に変わるが「褒めるだけ」はダメ

「うちの子、早生まれだから何でも人より遅くて……」その悩み、あなたの「褒め方」が原因かもしれません? 脳科学者が明かす、早生まれの子のやる気を引き出し、自己肯定感を育む魔法の声かけとは。※サムネイル画像:PIXTA

執筆者:All About 編集部

「徒競走でビリのとき、どう褒めればいい?」あなたの「声かけ」一つで、早生まれのハンデは大きな自信に変わるかも! ※画像出典:PIXTA

「徒競走でビリのとき、どう褒めればいい?」あなたの「声かけ」一つで、早生まれのハンデは大きな自信に変わるかも! ※画像出典:PIXTA

「うちの子は早生まれだから、みんなよりできなくても仕方ない……」そんな風にお子さんの可能性にフタをしていませんか? 実は、親の「声かけ」一つで、早生まれのハンデは大きな自信に変わるかもしれません。その驚きの方法とは?

東北大学加齢医学研究所教授で脳科学者の瀧靖之さんの著書『本当はすごい早生まれ』では、早生まれの子どもたちが持つ隠れた可能性や、その自己肯定感を育むための科学的なアプローチについて、具体的な研究結果を交えながら解説しています。

今回は本書から一部抜粋し、「結果」ではなく「努力」を褒めることが、特に早生まれの子どもの成長にとって重要な理由、自己肯定感を本当に高めるためには「褒める」ことと「叱る」ことのバランスが大切という驚きの研究結果について紹介します。
<目次>

褒めるべきは「結果」ではない!

「徒競走でビリのとき、どう褒めればいいの?」

そんな風に思われた方はもしかすると、いつも「結果」にフォーカスしているのではないでしょうか。「結果」だけを見ていると、確かに褒める部分は限られてしまいます。実は脳科学的には、「結果」や「状態」を褒めることは必ずしも良い成果を生まないことがわかっています。

結論をいえば、褒めるべきは「努力」です。

ちょっと根性論のように思われるかもしれませんが、これは科学が証明していることなのです。1位だったから、100点をとったからと、その「結果」だけを褒めていると、人はできることしかしなくなってしまいます。

あの有名なアドラー心理学でも、「結果を褒めてはいけない」と主張しています。

「褒めること」の2つの問題点

アドラー心理学の研究者である哲学者の岸見一郎氏は、著書『叱らない、ほめない、命じない。―あたらしいリーダー論 ―』の中で、次のように述べています。

ほめることの問題点は二つあります。

一つには、ほめられるために頑張ろうとする人が出てくることです。上司からほめられた人たちは、無意識のうちに、上司からほめられることだけをするようになります。

逆にいえば、ほめられないことは、何もしません。ほめてくれる人がいないかぎり、自分の判断で動くことがなくなると、子育ての場面でも、職場でも、困ったことになります。

1位をとれることだけをする。100点をとれる簡単な問題しかしなくなるなど、課題の継続という面で、悪影響が出てしまうのです。一方で、「努力」を褒められた人は、意欲が高まり努力し続けることがわかっています。

小学5年生を対象とした研究では、「努力を褒められた子ども」は、「知能を褒められた子ども」よりも、最終的に学業成績が向上したことが示されています。

失敗をしても、「努力」を褒められた子どもは、粘り強く、楽しみながら課題に挑戦し、最終的には成績が向上したといいます。一方で、「知性」を褒められた子どもは、成績が伸び悩む傾向がありました。「やればできる」と思い、頑張ったのは、「努力」が評価された子だったのです。

お子さんが今、運動や勉強などでいい成績をとれなくても、問題ありません。なぜなら、自己肯定感を高め、人の能力を伸ばすためには、その「努力」に着目することが大切だからです。

「足が速いね」「頭がいいね」と、「結果」や「状態」を褒めるのではなく、「最後まで頑張ったね」「一生懸命勉強していたね」と、その「努力」を見つけて伝えていきましょう。

これはもちろん、遅生まれの子にも、会社の部下にも効果がある褒め方です。子どもの自己肯定感を高めるために、「努力」を褒めるのがよい、ということがわかりました。

「褒める」だけでは足りない

では、褒め続けるだけでいいのでしょうか。実は、褒められるだけでは、十分ではありません。同時にしっかりと叱ることが大切なのです。

国立青少年教育振興機構が2018年に行った「子供の頃の体験がはぐくむ力とその成果に関する調査研究」という研究があります。

子どもの頃の「親」「先生」「近所の人」からの、「褒められた経験」と「厳しく叱られた経験 」を調査し、その割合と、「現在の自己肯定感」「現在のへこたれない力」を比べたものです。

まず、「現在の自己肯定感」に注目して見てみます。「親」「先生」「近所の人」のいずれの場合も、最も自己肯定感が高く育った大人は、「たくさん褒められ、たくさん叱られた群」でした。

「褒められてばかりで、叱られなかった群」より、叱られた人の方が自己肯定感が高い大人に育ったということです。もしかすると、褒められてばかりだと、その褒め言葉自体を軽く捉えてしまうのかもしれません。

親には、「褒めるときには褒める、叱るときには叱る」というメリハリが求められそうです。

さらに見ていくと、全体的に自己肯定感が低く出ているのは、「褒められもせず、叱られもしない群」でした。褒めも叱りもしないということは、子どもに興味を示さないということです。

周りの大人からの子どもに対する興味関心は、将来の自己肯定感に大きく関わってくるのです。
  瀧靖之(たき やすゆき)プロフィール
東北大学加齢医学研究所教授。医師。医学博士。1970年生まれ。東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。東北大学加齢医学研究所臨床加齢医学研究分野教授。東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター長。早生まれの息子の父。脳科学者としてテレビ・ラジオ出演など多数。
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