亀山早苗の恋愛コラム

浮気も借金も許したけれど……。ある日突然出ていったダメ夫に、さんざん尽くした妻が思うこと

女性関係やお金にルーズなダメ夫。それでも妻は夫を許し、尻ぬぐいをした。彼は優しいし、家族を愛していたから。だが、あるときから夫の様子がおかしくなり、彼は家を出ていってしまった。それから半年、妻は今何を思うのか。サムネイル画像:PIXTA

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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ダメ夫にさんざん尽くして幸せだったけど……

ダメ夫にさんざん尽くして幸せだったけど…… 画像出典:PIXTA

夫婦のことは他人には分からない。ダメ夫であっても「しょうがないなあ」と言いながら楽しそうにしている妻もいる。

ダメ夫だけど楽しかった

「夫のタケシは商店を経営する両親のもとに生まれましたが、その店は妹が継いでいました。夫は大学を出てサラリーマンとなって、本人いわく『ごく普通に』働いていたそうです」

そういうカナさん(39歳)が、彼と知り合ったのは10年前。彼女の職場の同僚が、彼の妹と高校の同級生で、いろいろな人を集めた食事会に誘われたのだ。

「20代から40代まで10人くらい集まってわいわいとやって。それが楽しかったんですよね。そのとき私の隣にその妹さんがいて、いろいろ話しているうちに『兄がカナさんと同い年なんです。今度、会ってもらえませんか。二人、お似合いだと思うんだけど』と言い出した。同僚も、『そういえばそうだね』って。当時、私は結婚まで考えた恋人と別れたばかり。気分転換に会ってもいいかなと思って」

タケシさんと妹、カナさんの同僚と4人で食事をしてみたら、カナさんとタケシさんは意気投合。周りが驚く間もないほどに関係は進み、2週間後にはカナさんのマンションにタケシさんが転がり込んできた。

出会って1カ月で結婚

「1カ月後には婚姻届を出していました。タケシといると、それまでと違う世界が見えてきて楽しかった。私はもともとまじめな優等生タイプなんです。父と不仲の母が私にべったりで、母の理想の“自立した女性”になるしかなかった。でも私はもっと自由に、自分の意志で生きたいと思ってたんです。タケシは『自分の好きなようにするのが一番』という人。私のやることにもまったく反対しない、いつでも応援してくれるところがよかった」

結婚したことは、婚姻届を出してから両親に報告した。驚いた母親はいきなり上京してカナさんの会社に押しかけてきた。

「ランチまで待ってもらってタケシを呼び、二人で母とランチしようとしたけど、母は『私は許さない』と大声を出すばかり。仕方がないので公園に移動して母を説得しました。私は昼休み後に会社に戻りましたが、タケシはその後も説得を続けてくれたみたいで。あんなに頑なな母が、夕方、『あの人ならいいかもね』と帰っていったんです。タケシマジックでした。彼は人たらしというか、どこか憎めないところがあって、会った人はみんな彼を好きになってしまうんです」

新婚生活も楽しかった。彼はいつの間にか近所の人とも仲よくなり、地域に仲間を増やしていった。

浮気もあったけど

ただ、女性関係やお金にルーズなところは多々あった。

「ずっと共働きで一人娘にも恵まれましたが、夫はちょいちょいと浮気をする。相談されて親しくなって、すがりつかれてその女性とどうにかなっちゃうというのが多かったですね。そのたびに私が女性と話し合って別れてもらう。お金に関しては、困った人がいるとすぐ貸しちゃうんですよ。とはいえ、彼も裕福なわけではないので、貸すお金は微々たるものなんですが、生活に影響は生じる」

それでもカナさんは、夫の尻拭いをし続けた。面倒なことばかりしないでよ、それに私が巻き込まれるんだからと夫に言うと「ごめん。きみがいないと生きていけない」と抱きしめられ、怒りながらも許してしまう。そんな関係だった。

「娘も小さいころからよく夫に説教していました。夫はごめんごめんと娘に謝って。ダメ夫だったけど、仕事はちゃんとしていたみたいだし、何より家族を愛してくれている。しかも優しい。だから私はずっと彼をフォローしながらやっていこうと思っていたんです」

夫が浮気しようが借金しようが、彼女が夫を見捨てなかったのは、そこに彼の優しい人間性が垣間見えたから。そして家族を最優先してくれているのが分かっていたから。

100万円を置いて出ていった夫

だが昨年暮れ、夫らしからぬ言動が目立つようになった。どこかいらいらしていて冗談を言わなくなった。

「体調がすぐれないのではないかと心配して病院に行くよう勧めたんですが、『ほうっておいてくれよ』と声を荒げた。今までそんなこと一度もなかったんです。自分の思い通りに相手が対応していなくても、まず『ありがとう』という人だから。いつもとは違う何かがあったんだろうと思いました」

そうこうしているうち、夫が外泊した。浮気しても外泊だけはしなかったのに。

「本気で好きな人ができたんだろうと思いました。夫の同僚がやはり、いつもとは違う夫を心配して私に電話をくれました。その人も私と同じことを考えていたみたい」

ある日、カナさんは夫に言った。

「私は縛らないよ、好きにしていいから」

その日、カナさんが帰宅すると夫の身の回りのものがなくなっていた。

「テーブルの上に100万円が置いてありました。あの人、貯金なんてろくにしてないと思う。でも娘のための当座の費用とメモが置いてあって」

出ていくには、それなりの決意と覚悟があったのだろうとカナさんは推測する。あれから半年、夫は今、心底ほれた女性と一緒に暮らしているらしい。それでもカナさんから離婚を催促するつもりはないという。

「いつ離婚してもいいんですが、私からはしない。娘には正直に話しています。お父さんがどうするかはお父さんの意志、お母さんがどうするかはお母さんの意志、もちろんどうしたいかあなたの意志も聞くよと」

急ぐ必要はないとカナさんは言う。不安が先に立ちそうな状況だが、カナさんはどっしりと構えていこうと思っている。
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