『【11の成功例でわかる】自分で自分の介護をする本』(小山朝子/河出書房新社)では、介護福祉士資格を持つ介護ジャーナリスト小山朝子さんが、介助が必要になっても一人暮らしを実現している人や、それを支える人の事例を、当事者へのインタビューをもとに再構成し紹介しています。
今回は本書から一部抜粋し、日常生活の困りごとを抱えながらも、楽しみながら一人暮らしを続けている安東洋子さん(83歳)の実体験についてお伝えします。
洋子さんは、買い物に行って何を買えばいいのか分からなくなったり、ごみの収集日を忘れてしまうことが続きました。そのため、近所で暮らす次女から介護保険の申請をするよう助言され、「地域包括支援センター」を訪れます。
介護保険申請のため「地域包括支援センター」へ
「買い物やゴミ出しなど多少困ることがありますが、次女の負担にはなりたくありません」洋子さんは窓口で対応してくれた秋山さんという職員に切々と訴えました。
秋山さんによると、地域包括支援センターでは明らかに介護保険の対象外となるような人には、介護を予防するための健康教室などをすすめる場合があるとのことでしたが、「洋子さんの場合は生活に困りごとが生じているため、申請の手続きを進めたほうがよさそうですね」といわれました。
要支援1と認定
介護保険の申請から約1か月後、洋子さんは「要支援1」と認定されました。秋山さんには、すでに困っていることを伝えていますが、「これからの生活に望むことはありますか?」と聞かれ、「楽しみを失わないためにも料理を続けていきたい」「運動などもおこなっていきたい」と伝えました。
その後、秋山さんが提案してくれたのは「介護予防通所リハビリ」と、ヘルパーによる生活援助のサービスを利用してはどうかという内容でした。
デイケアに通うことに
「介護予防通所リハビリ」は、一般的には「デイケア」とも呼ばれます。介護老人保健施設や病院、診療所で、日常生活の自立を助けるために必要なリハビリテーションをおこない、利用者の心身機能の維持回復を図ります。秋山さんが洋子さんに紹介した事業所では、はじめて利用するときと月初めに体力測定を実施しているそうです。その他の休み時間や空いた時間に頭の体操も実施しているらしく、認知症予防に力をいれていきたい洋子さんには効果が期待できそうです。
秋山さんが紹介してくれたデイケアに通い、決まった曜日に外に出ることで生活にメリハリができました。事業所でリハビリをしてくれる理学療法士や若いスタッフのみなさんと言葉をかわすことも楽しみになりました。
好きな料理を続けられる喜び
洋子さんは秋山さんから「介護予防通所リハビリ」と同時に、ヘルパーさんに買い物の同行や調理の補助をお願いしてはどうかと提案されました。たしかに、買い物に同行してもらうことで、スーパーで何を買えばよいか迷ったり、買い物のためのメモを忘れてしまうのを防ぐことができそうです。調理の補助をお願いすることで、好きな料理を続けることができるかもしれません。そう考えると洋子さんはうれしくなりました。
秋山さんによると、介護保険で「要介護」と認められた人はヘルパーによって提供される「訪問介護」のサービスが受けられるとのこと。内容としては、食事の介助や入浴の介助など利用者の身体に直接触れておこなう「身体介護」と、掃除や洗濯、買い物や料理など日常生活を支援する「生活援助」があります。
「要支援」では生活援助が提供される
一方、洋子さんのように「要支援」と認められた人がヘルパーさんを利用したい場合、各市区町村で実施する「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」を利用することになるということでした。洋子さんが住んでいる市には、「訪問型サービスA」というサービスがあり、身体の介助を必要としない人に生活援助(洗濯・掃除・調理など)が提供されます。洋子さんの場合、このサービスで困りごとを解消することができそうです。
小山朝子 プロフィール
東京都生まれ。小学生時代はヤングケアラーで、20代からは洋画家の祖母を約10年にわたり在宅で介護。介護福祉士の資格も有し、ケアラー、ジャーナリスト、介護職の視点からテレビなどの各種メディアでコメントするほか、ラジオのパーソナリティーをつとめるなど多方面で活躍。前著『ひとり暮らしでも大丈夫!自分で自分の介護をする本』(河出書房新社)も好評。日本在宅ホスピス協会役員、日本在宅ケアアライアンス食支援事業委員、東京都福祉サービス第三者評価認証評価者、All About 介護福祉士ガイド。