亀山早苗の恋愛コラム

「君とは分かり合えない」という夫の“定年後の希望”にゾッ。“学び続けたい”妻との深い溝

子どもたちが手を離れ、また始まる二人きりの生活を意識しだした夫婦。だが、これからしたいことに胸を膨らませる妻に対し、夫はなぜか過去ばかり振り返るのだ。妻にはそれが我慢できない。夫に今後の希望を聞いてみたところ、その返事に妻はゾッとする。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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子育てを終えたら好きなことをしたい妻に対して夫は……

子育てを終えたら好きなことをしたい妻に対して夫は……

子どもたちが成長すると、夫婦二人きりの時間が長くなる。このとき、どんなふうに共に過ごすかによって老後の生活が見えてくるようだ。

夫との長い歴史は感じるけれど

大学時代の同級生と卒業後に再会、28歳のときに結婚したマリさん(49歳)。娘は大学生、息子は高校2年生になった。夫の母が協力してくれたため、ずっと共働きで頑張ってきた。その義母も見送り、まだ学費はかかるが夫婦二人の時間が多くなった。

「週末なんて、娘はバイトだの友達と遊びに行くだのでほとんどいないし、息子は部活に夢中。私も高校時代の友人に会ったりジムに行ったりしますが、それでもやはり夫との時間が激増しました」

これからは二人きりになるんだという実感が湧いてきている。夫も同じ思いなのだろう。独身時代に一緒に観た映画をまた観ようと言ったり、昔のアルバムを整理したりしている。ただ、気になるのは夫の目が過去にばかり向いていることだ。

過去を振り返ってばかりの夫

「振り返ってばかりいるんですよ。あの頃はああだった、こうだったと。『そういえば、オレたちが結婚したときさー』とか、『娘が産まれたころにさあ』とか。昔話ばかりすると職場で嫌われるよと遠回しに言ってみたのですが、職場ではしないよ、と。いや、家庭内でしても同じなんだけどと言いたくなります」

昔はよかった、子どもたちが小さいころはあんなこともこんなこともして楽しかった。夫は週末になるとそんな話を繰り返す。

「聞いている方が疲れてくる。だいたい私は昔話が嫌いなんですよ。義母が昔話をしていたときも『でもお義母さん、私たちは今を生きているんだから、これからの話をしましょうよ』と言って『あんたは冷たい』と怒られていました。昔話をすることに何の意味があるのか分からないんです」

昔話ばかりする人はこれからを生き生きと生きられない。マリさんの持論だという。

先の話を促してみたら

あるとき夫にも伝えた。「昔話ばかりするより、今とこれからの話をしようよ」と。

「すると夫は、『半世紀も生きてきたんだ、あとは余力だよ。今後は子どもたちが結婚して孫ができるのを楽しみにするだけ』と答えたんです。ものすごく嫌だった。だって子どもが結婚するかどうかは子どもの自由だし、自分の生き方ではなく、子どもという他人によって孫という存在を期待するなんて、なんだかさもしいじゃないですか。夫は『君の考え方はおかしい。子どもがいるんだから、孫を期待して何が悪い』って。そういうの、私は本当に嫌で……。自分の人生なんだから自分が何をするか考えたいと言ったら、『君とは一生、分かり合えない』とまで言われてしまいました」

子どもがいれば孫を期待するのは当たり前という夫の考え方も分からないではないが、期待される子どもたちがプレッシャーを感じるとしたら気の毒だ。結婚も子どもを持つかどうかも本人の意志なのだから。

「あなたはこれから何かやってみたいことはないのと尋ねると、『定年まで無事に勤めて、子どもたちの結婚を見届けて、孫のお守りをする』って。それはあなたの願望であって、自分の行動指針ではないよねと言ったら嫌な顔をしていました」

思えば家庭を大事にする夫ではあった。今後も家庭や家族を中心にしていきたいのかもしれない。だが、家庭を大事にすることと自分が何をしたいかは別の話だとマリさんは思っている。

離婚するつもりはないけれど

「息子が高校を卒業してその後の進路が決まったら、もう私の役割は終わったと思いたい。でもまだ50代初めだから、それからは自分の好きなことができる。社会人入試を受けて大学に再入学するか大学院へ行くか。少し長い休みをとって海外一人旅もするつもりです。できる限り、長く社会人として活動していきたいので、定年にとらわれず学びと労働は続けていきたいんです。定年になったからといって趣味だけの人生になるのは嫌なので」

いつまでも社会で学び、社会に貢献したいという意欲をもつマリさんと、家庭内だけに目を向ける夫。この先、一緒にやっていけるのだろうかと考えることもあるそうだ。

「まあ、長い付き合いですから離婚するつもりはありません。でも年をとったからといって夫婦だけで家にこもりたくはない。『あなたと私の生き方はどうやらかなり違いがあるから、とりあえず健康でいて。面倒は見られないから』と伝えました。夫は怯えたような顔をしていましたけど」

子どもが成長して1つの家庭が一段落したとき、その中軸を担ってきた夫婦のありようがどうなっていくのかは興味深い。マリさんは「形は持続しながらも、また一人に戻った感覚で生きていきたい」と願っている。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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