人間関係

「実は会社を辞めた」夫の告白にイラッ。“心が優先”の夫に“生活が大事”な妻の反応は……

「会社を辞めたい」と言い出した夫が、実はそのときすでに退職していた。「経済的基盤がなければ小さい子ども二人を育てられない」と言う妻に、夫は「僕の人生より家計が大事なのか」と言う。優先したいものが違う夫婦の間には大きな溝がある。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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相談なく仕事を辞めた夫への怒りがおさまらない

相談なく仕事を辞めた夫への怒りがおさまらない

現実の生活を大事にしたい妻と、自分の心と人生を最優先したい夫。家庭があっても、人生は自分のものだが、家族を最優先してほしい妻の気持ちも誰もが理解できるだろう。家族と自分、どうやって向き合っていくのかについて、妻と夫との間に大きな溝があるのかもしれない。

夫が仕事を辞めたいと言い出して

半年ほど前、夫が急に「うちにはどのくらい貯金がある?」と聞いてきたと言うアミさん(42歳)。結婚して10年、8歳と5歳の子がいる。

「共働きですが、私は下の子が産まれてから非正規雇用。子どもたちのために倹約はしてきたけど、それほどの貯金があるわけではありません。夫に金額を答えると『そうか……』と。何かあったのと聞いたら、『いや、別に』って。でもそれから3カ月たったころ、夫がポツリと『会社を辞めたい』と言い出したんです」

夫は新卒で入った中堅企業で頼りにされてきたと、アミさんは思っていた。夫自身、仕事にやりがいを感じていたはずだった。自分が進めている仕事を誇らしげに熱く語ったこともある。

「ただ、上の子が産まれたあたりから、人間関係には悩んでいたそうです。私にはまったく分からなかったし、仕事熱心だと思い込んでいたから。夫が言うには、人間関係がよくなくて毎朝、行きたくないと思いながら行っていた、と。でも、どこに行っても人間関係がいいとは限らないし、詳しくは分からないけど、夫の考え過ぎかもしれないとも思っていたんです。『もうちょっと考えてから決めても遅くない、今から転職するのも大変だし』とそのときは話しました」

最優先させるべきことは……

ただ、夫は「会社を辞めたい」と言ったそのとき、すでに辞めていたのだと1カ月後に分かった。

いつも夫は給料日に生活費分を渡してくれていたのだが、「ごめん。もう隠していられない。実は会社を辞めた」と白状したからだ。

「辞めたいと言ったときにはすでに辞めていたというのがショックでした。どうしてもう少し前に言ってくれなかったのか。全部オープンに話してくれれば、今の家計の状況などを話し合えたのに、と。すると夫は『きみは僕の人生より、家計の方が大事なのか』と小声でつぶやいて……」

子どもたちはまだ小さい。経済的基盤がなければ、二人を育てていくことはできない。私たちにとって、今、最優先させるべきなのは子どものことでしょうとアミさんは言った。

夫は苦しんでいた

夫の身勝手さに腹を立てていたアミさんだが、子どもがいる以上、協力していくしかないと思い直して、詳しく話を聞いてみた。

「夫は苦しんでいました。自分の人生を考えると、精神衛生上、今の職場にはいられない。だけど子どもたちのため、生活のためを考えれば退職はできない。ずっと悩んでいたしつらかったと。気丈な夫が涙ぐんでいた。『自分の人生しか考えてないとアミは思っているだろう。でも僕は会社にいると息がつまる。自分の人生を他人に委ねているとしか思えなかった』って。私の本音は、『甘えたこと言ってるんじゃないよ。誰だってつらくても仕事をしているし、毎日、行きたくもないけど会社に行ってるんだよ』です。私だって職場の人間関係、いろいろありますけど、そんなことにかまっていられない。だって生活していかなければいけないんだから。だけど……」

アミさんは、「自分がそうだからって夫にそれを押しつけてはいけないのかもしれない」と感じたという。考え方や感じ方は人それぞれ。夫の「つらさ」はアミさんには分からない。同じ状況でアミさんは耐えられるかもしれないが、夫には耐えられないのかもしれない。だからといって夫が悪いわけではない。

「我慢できなくて辞めたのだったら、正直にそう言ってくれればよかったのにと言うと、『どうしても言い出せなかった。自分は弱い』と。またイラッとはきましたが、そういう人なのだから仕方がない。なるべく早く仕事を見つけてほしい、経済的な問題だけではなくて、人は仕事から嫌なこともいいことも学ぶと思うからと言ったら、夫はなんだか落ち込んでしまいました。『僕は仕事から学べることなんてないと思ってる』って」

夫が他人に見えた

寄り添いかけた心がまた離れるような気がした。10年、一緒に暮らしてきた夫が“他人”に見えた。

「今も夫は求職中です。納得がいくまで探している余裕はないと思うんですよね。私は仕事に人生を捧げる気はない。いろいろ学べることはあるけど、それはそれとして、仕事は生活のためだと割り切ってる。でも夫はそうではないんでしょう。自分のやりがいや心を満たすものが仕事だと思ってる。じゃあ家庭は、家族は? 夫にそう問いかけると、家族ももちろん大事だと言う。私は生活あっての家族だと思うよ、子どもたちにおなかいっぱい食べさせることもできずに仕事のやりがいなんて考えている余裕はない」

仕事と自分、家族と自分、それぞれとの距離感と向き合い方が夫と自分とでは違うとアミさんは感じている。それでも今は「この家族で協力しあう」以外の選択肢はないのだ。夫にはその覚悟がないと彼女はバッサリ斬った。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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