今回は、ソニーグループの制度変更を例に、「賞与の給与化」にともなう社会保険料と税金の負担についてファイナンシャル・プランナーの川手康義さんに試算してもらいます。
ソニーグループは「冬の賞与」を、「給与」と「夏の賞与」に振り分け
今回の報道によると、ソニーグループは冬のボーナスを廃止し、給与(最大14%アップ)と夏の賞与に振り分ける制度変更を行うようです。ソニーグループの平均年収は約1100万円とされていることから、給与60万円、ボーナス190万円(年間380万円)で年収1100万円の社員が、制度変更を受けた場合に、社会保険料や税金に変更があるかを考えてみます。
【制度変更前】年収1100万円
給与60万円
夏・冬のボーナス190万円(年間380万円)
【制度変更後】年収1100万円
給与68万4000円(14%アップ)
夏のボーナス279万2000円
※前後とも年収1100万円で変わりありません
社会保険料(厚生年金保険料)は約8万円減少!
社会保険料のうち厚生年金保険料は「標準報酬月額(上限65万円)」と「標準賞与額(上限150万円)」に本人負担割合の9.15%をかけて計算します。なお、上限を超えて支給された部分には保険料がかかりません。【制度変更前】厚生年金保険料:93万3300円
・月給60万円(標準報酬月額60万円)
→年間本人負担:60万円×9.15%×12カ月=65万8800円
・ボーナス190万円/1回(標準賞与額上限の150万円)
→年間本人負担:150万円×9.15%×2回=27万4500円
【制度変更後】厚生年金保険料:85万950円
・月給68万4000円(標準報酬月額上限の65万円)
→年間本人負担:65万円×9.15%×12カ月=71万3700円
・ボーナス279万2000円(標準賞与額上限の150万円)
→年間本人負担:150万円×9.15%×1回=13万7250円
年収は変わらないのに、制度変更で厚生年金保険料は約8万円減少する結果となりました。前述したように厚生年金保険料を計算する際の基準額には上限があり、上限を超えた部分に保険料はかかりません。

税金の負担はどうなる?
給与とボーナスの比率が変更になっても年間の税負担はほとんど(※)変わりません。なぜなら税金計算は年収がベースのため、賞与・給与比率の変更による影響を受けないからです。※社会保険料負担が少なくなる分控除が減るため、若干は上がります
まとめ
今回は給与もボーナスも高いソニーグループでの試算のため、年間の社会保険料(厚生年金保険料)が減る結果となりましたが、給与に比べボーナス比率が高い会社などでは、むしろ年間の保険料が増えることもあります。会社が制度変更する際には、ファイナンシャル・プランナーなどの専門家に試算してもらうことをお勧めします。