単に評定平均値が高ければ選ばれるわけではありません。高校は大学との信頼関係を守るため、評定だけでなく、模試の成績や英検の級、さらには日常の行いまで、多角的な要素を見て候補者を決定します。
『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(杉浦由美子著)から、指定校推薦の校内選考で実際に何が重視されているのか解説します。
指定校推薦の校内選考は何が基準になるのか
指定校推薦の条件をクリアしているから出願したいと希望を高校に出します。1名の枠に複数が希望した場合は、校内選考が行われます。
この校内選考は何が基準になるのでしょうか。
評定平均値が高ければいいわけではありません。
指定校推薦は、大学と高校の信頼関係の上に成り立っています。
一般選抜で入学した生徒が留年や退学をしても高校にはあまり関係ありませんが、指定校で入学した生徒がそうなると高校側の信頼が損なわれます。また、学力がいまいちな学生を送りこんでも信頼は失われます。
そのため、高校はいろんな要素を見て校内選考を行います。
とくに昨今では、評定平均値が「信用できない語り手」になっています。
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かつては評定平均値が高いことは学力が高いという証明になりましたが、今はそうもいかなくなっています。
ですから、大学の求めるものも評定平均値の高さだけではなくなっていきます。
そのため、最近では指定校推薦でも条件として、英検2級以上といった評定平均値以外の要素を付加するケースが出てきました。
こうなってくると、校内選考でも英検で高い級を持っている生徒が優先されるケースも出てきます。
評定平均値4.3より評定平均値4.1が選ばれた理由
もう一つの傾向は模試偏差値が高い生徒をセレクトすることです。ある高校では、成成明学獨國武のある大学の指定校推薦の枠に3人が希望しました。
評定平均値がAさんは4.3、Bさんは4.1、Cさんは4.0。
選ばれたのは4.1のBさんでした。理由は模試偏差値が安定して高かったからです。
その大学の学部学科の一般選抜の3教科型の偏差値は55.0で、Bさんは偏差値53から54をキープしていました。ほかの2人は偏差値が50に届いたことがなかったそうです。
ある人気の一般大学の教授がこう話していました。
「一般選抜、総合型選抜、指定校推薦。すべての入試方式で同じ学力の学生を選抜していくのが理想」
これはすべての大学が考えていることです。
高校側もこれを理解しているから、単に評定平均値が高いだけではなく、模試偏差値が高い生徒を選ぶケースもあるわけです。
中1でいじめをして、大学の指定校推薦がとれないケースも
指定校推薦において、校内選考で選ばれる要素として、学力以外に「普段の行い」を見るのは昔も今も同じです。スカートの丈を短くしていたり、髪を染めたりしている生徒よりは、校則を守っている生徒の方が優遇されるのは当然です。また、授業中に寝ていたり、騒いでいたりしてもマイナスになります。
この「行い」での評価で、少し気の毒だと思ったケースがありました。
ある中高一貫校の女子生徒は、中学1年のときに仲間と同級生にいじめをしていました。
同級生の鞄や体操着を隠すということをしていました。
見かねた学級委員長がクラスメートと結託し、ホームルームの時間に彼女たちを糾弾し、いじめをやめさせました。
彼女は深く反省し、それ以降はまったく問題を起こさなかったのに、高校3年のときに指定校推薦を希望しても校内選考で負けたそうです。
彼女の高校は指定校推薦は評定平均値が高い生徒が選ばれる方針で、彼女は真面目に全教科、手を抜かず頑張って、評定平均値は4.5ありました。
希望者がもう一人いて、評定平均値は4.3でした。
中高一貫校の多くは「中学時代の過ちはリセットする」という姿勢なのですが、彼女が通っていた学校は厳格な名門校なので、事情が違ったようです。
ともあれ、このように日常の行動が影響することもあるので、指定校推薦を狙うならば、日常から校則を守り、いじめなどの問題行動を起こさないことは大切です。
先生から見て、「この子なら安心して大学に送り出せる」という生徒であることは非常に大切です。
杉浦 由美子 プロフィール
受験ジャーナリスト ノンフィクションライター2005年に朝日新聞社でライター活動を始める。月刊誌や週刊誌で記事を書き、『女子校力』(PHP新書)のヒットをきっかけに教育関係を中心に取材と執筆をするようになる。現在は数多くのWEBニュースサイトで連載をし、週刊誌や月刊誌にも寄稿している。最新刊に『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(青春出版社)。