推薦校への進学を考える際、「評定平均値がとりやすいから有利」という認識は実は間違い。指定校推薦を狙うライバルが多く、校内選考が激戦化することは珍しくありません。『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(杉浦由美子 著)から、指定校推薦の裏側について解説します。
「偏差値40台の高校に慶應や上智の指定校推薦」はなぜ起きる
高校受験や中学受験をする際に、選択が必要となります。進学校か、推薦校か。「大学に推薦で進学をすることを考えると無理して進学校に入るより、難易度が高くない推薦校を狙う方がいいのでは? 推薦校は評定平均値がとりやすいでしょうし」と考える親御さんや受験生も出てきます。
推薦校は公式サイトに指定校推薦の一覧を載せていて、大学名学部学科、そして何人の指定校推薦枠がきているかを掲載しています。
それを見ると、「この学校で真面目に頑張ればここに載っている大学に行ける!」と思ってしまいそうです。
しかし、推薦校には、指定校推薦を目指して入学してくるライバルが多いので、指定校推薦の校内選考が激戦になっていきます。
推薦校はオール5でも希望の大学の指定校推薦がとれないという事態になるケースもあります。一般大学への推薦も人気がある大学学部学科ですと生徒同士でとりあいになります。
ある一般大学の看護科の指定校推薦が1名に対して3人が希望してきて、厳しい戦いになったという話もあります。
偏差値40台の高校に慶應の推薦が来る理由
MARCHの指定校推薦も難易度がなめらかな高校ですと5.0近い評定平均値が求められます。「上智大学は偏差値40台の高校に指定校推薦を出している」と揶揄するYouTuberがいましたが、そういうケースの場合、その高校でトップの優等生が指定校推薦をとっていくので、学力的にも人格的にもまったく問題ありません。
指定校推薦は、大学と高校の信頼関係の上に成り立つものです。
高校側が模範的な生徒を指定校推薦で大学に送り込みます。その学生が真面目に勉強し良い成績をとってちゃんと就職をしていくと、大学はまたその高校に指定校推薦の枠を出します。
昔より偏差値が下がっている女子校に、今でも慶應義塾大学などの難関大学の指定校推薦がきていますが、それはその高校が長年にわたって、毎年、優秀な学生をその大学に送り出しているから信頼関係が失われないのです。
杉浦 由美子 プロフィール
受験ジャーナリスト ノンフィクションライター2005年に朝日新聞社でライター活動を始める。月刊誌や週刊誌で記事を書き、『女子校力』(PHP新書)のヒットをきっかけに教育関係を中心に取材と執筆をするようになる。現在は数多くのWEBニュースサイトで連載をし、週刊誌や月刊誌にも寄稿している。最新刊に『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(青春出版社)。