では、なぜこのように評定平均値が信用されなくなってしまったのか、そして受験生は今後どう対策すべきなのか? 『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(杉浦由美子著)から、大学側が直面する「評定平均値インフレ」の実態と、推薦入試で合格を掴むために本当に必要な対策ポイントをご紹介します。
「評定平均値が信用できない語り手」になってきた
推薦入試では総合型選抜や公募制でも評定平均値が高い方が有利になることが多い。これは確かに事実ではあります。ほかで差が出ない場合は評定平均値で合否を決めるからです。
しかし、ここにきて、大学は頭を抱えています。評定平均値が「信用できない語り手」になってきているからです。
新学習指導要領で生まれた「評定平均値インフレ」
従来の評定平均値は高校の定期テストの点数で決まりました。ところが新学習指導要領の施行によって、「観点別評価」が取り入れられました。
「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」といった観点で評価します。
この最後の「学びに向かう力、人間性等」の点数はどうしても教師の主観が入りますから、盛ろうと思えば盛れることもありましょう。
推薦入試が増えてきて、評定平均値が重要になってくると、高校の先生としては評定平均値を高めにつけて、生徒を推薦で有利にしようとすることもできてしまうわけです。
こういった事情もあってか、多くの高校で「以前よりも評定が高くなる」という状態になってきました。
関西の大学は以前から「評定平均値はあまり信用できない語り手」と扱ってきましたが、全国的にそうなってきているわけです。
推薦入試は「関西は学力重視、関東は評定平均値を重視」という傾向があったのですが、関東、いや、全国的に高校の評定平均値が信用できなくなってきたので大学は頭を抱えています。
そんな中、「評定平均値が厳格」な高校は、大学側からの信用度が増すわけですが、そういった高校ばかりではありません。
ある私立の伝統校も「評定平均値の計算方法が変更になりましたが、その通りに計算すると高くなってしまう」と話していました。
歴史ある真面目な伝統校がそういうのだから、全体的に今、評定平均値はインフレ状態になりつつあります。
「評定平均値」から「試験重視」へ転換する大学入試
そのため、ある最難関大学の関係者はこういいました。「うちの総合型選抜には評定平均値オール5の学生が出願してきますが、それをもって学力が高いとは評価できなくなってきています。
ただ、全科目ちゃんと手を抜かずにやってきたという勤勉さの指標にはなります」
また、都内の一般大学の入試の責任者はいいます。
「評定平均値3.5以上あれば真面目にやってきたことの証明になると考えています」
つまり、「評定平均値が高ければ学力が高い」とは評価できなくなっていますが、「勤勉である」とは評価できると見る大学はあるわけです。
評定平均値が「信用できない」ものになっているため、今、各大学は総合型選抜や公募制でしっかり試験をするようにしています。
高校や塾の先生方が口を揃えていいます。
「一般大学だから準備が楽なわけではないです。志望理由書の文字数も多いですし、課題レポートやプレゼン、小論文がある場合も。それなりに対策が必要なんです」
その通りです。
桜美林大学の総合型選抜も課題を出し、それに関するレポートや志望理由書をしっかりと書かせます。
また津田塾大学の総合型選抜も志望理由書は1200文字程度で、学科によっては事前課題の提出も求められますが、英語の資料を読み1200文字ほどで答えるものもあります。
今後はより「評定平均値」以外の部分が重要になってくるでしょう。
杉浦 由美子 プロフィール
受験ジャーナリスト ノンフィクションライター2005年に朝日新聞社でライター活動を始める。月刊誌や週刊誌で記事を書き、『女子校力』(PHP新書)のヒットをきっかけに教育関係を中心に取材と執筆をするようになる。現在は数多くのWEBニュースサイトで連載をし、週刊誌や月刊誌にも寄稿している。最新刊に『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(青春出版社)。