
出産後すぐに知らされなくなった血液型。なぜ?
医療を支える上で欠かせない献血。特定の血液型は不足傾向にあり、安定的な血液供給のために、より多くの人の協力が不可欠な状況です。日本赤十字社の関東甲信越ブロックのサイトによると、特にA型とO型の血液が不足しており、さまざまなキャンペーンを通じて献血への協力が呼び掛けられています。
一方で、近年では「自分が何型なのか知らない」という人も珍しくありません。以前は、出産後すぐに親に伝えられていた子どもの血液型は、なぜ知らされなくなったのでしょうか? 今回は血液型に関する、意外と知られていない事実を、分かりやすく解説します。
「出生時の血液型は変わることがある」 血液型分類のしくみ
「出生時の血液型」は、「本来の血液型」と違うことがあります。産後すぐに子どもの血液型が調べられなくなったのは、そのためです。そもそも血液型は、「赤血球の違い」で判定されます。現在、日本国内で一般的な「ABO式血液型」の分類法が発見されたのは1900年のことです。オーストリアの学者であるLandsteiner博士が、ヒトの赤血球と、血液の液体部分である血清を使い、赤血球が集まって塊を作るかどうかで4つの型に分ける分類法を見つけました。当時はA、B、「C」、ABの4つでしたが、現在ではA型、B型、AB型、O型に分類されています。
少し専門的な話になりますが、赤血球の表面にあるのは「A型抗原」と「B型抗原」で、液体部分の血清にあるのは「抗A抗体」と「抗B抗体」です。
ABO式血液型の血液型判定試験では、「おもて試験」と「うら試験」の2つが行われ、おもて試験では赤血球の状態、うら試験では血清状態を見ます。この抗A抗体と抗B抗体は、「IgM」と呼ばれる免疫グロブリンというものです。
そしてIgMは生まれてから作られるため、新生児や生後6カ月程度までの乳児では、血清中に抗A抗体も抗B抗体もありません。したがってこの時期には、ABO型血液型を調べる上での「うら試験」ができないのです。おもて試験でも正確とは言えますが、おもて試験だけできてもダブルチェックができないため、生まれた時に調べた血液型が1歳になってから調べると変わってしまう可能性があります。
血液型を知らなくても大丈夫? 緊急時は必ず行われる血液型検査
血液型は親子で遺伝します。そのため誤った血液型が伝えられると、親子関係が疑われてしまうことも起こりますし、これは親御さんの精神面でも望ましいことではありません。いずれにしても不確かな情報にしかなりませんので、現在では緊急時を除いて、産後すぐに子どもの血液型を調べることはなくなりました。一方で、病気や事故などの輸血が必要になるような緊急時においては、必ずすぐに血液型の確認が行われます。これは、血液型の自己申告があってもなくても、必ず行う検査です。「血液型が分からないせいで、適切な医療がすぐに受けられなかった」ということはありませんので、ご安心ください。