もともとお湯には浸からなかった
「若者向けと言われますが、湯船なしのマンションは30代もけっこう入居しています。私自身も引っ越しの際、湯船なんて必要ないなと思って決めました。というのも私が育った家庭では、誰も浸からなかったから。みんな湯船に浸かっているんだと知ったのは高校生になってからです(笑)。わが家に湯船はありましたけど使ってなかった。だから私も浸かる習慣はありません」ハツネさん(35歳)はそう言う。お湯に浸かる習慣がないから、温泉旅行などにもほとんど行ったことがない。かつて友人に誘われて行ったことはあるが、「お湯に浸かってる時間、暇で仕方がなかった。何度も温泉に行く友人の気持ちが分からなかった」そうだ。
「今のマンションはスペパ(スペースパフォーマンス)がいいと思っています。ワンルームだけどキッチンもほとんどあってないようなもので、その分、居場所のスペースが広い。料理はほとんどしませんね。一人暮らしだから、それこそコスパが悪い。電気ポットでお湯を沸かせばいいし、電子レンジがあれば自炊だってできますから」
風呂もキッチンもなければ確かに部屋は広く使えるだろう。代わりにクローゼットが広めなのがありがたいという。
付き合っている彼にドン引きされたことも
「女友達が『料理でもしようと思って食材買ってきたのに』とがっかりしていましたが、あれこれ工夫すればパスタ料理もサラダもスープも作れます。友達は泊まっていったんですが、『湯船だけは工夫できないね』と笑っていました。どうしても入りたいなら、私は近くのスポーツジムの会員だから、ビジターで一緒に行けば大きな湯船に浸かれるよと言ったら、シャワーだけでいいわと」過去には付き合っている彼に「湯船なんて必要ないよね」と言って、ドン引きされたことがあったそうだ。
「お湯に浸かった方が疲れがとれるとかいうけど、どうなんでしょう。以前、ヨーロッパに行ったとき安めのホテルをとったら軒並み湯船なしでしたよ。なんだ、風呂に浸からないのはおかしいことじゃないんだと思ったものです」
年配の人にその話をすると驚かれることも多いが、母親に伝えたときは「あら、湯船なしの部屋、いいわね」と言われたそうだ。湯船に浸かるかどうか問題は、実家がどうだったかも大きいのかもしれない。
風呂好きな女性と付き合ったときは
前に付き合っていた彼女は、風呂の長い女性だったというケンゴさん(37歳)。「一緒に温泉やスパなどに行くと、彼女はほとんど入りっきり。ゆっくり食事もできないくらいでした。それが原因というわけでもないけど、なんとなく趣味や時間の使い方が合わないと思うようになって別れたんです」
そして半年ほど前から付き合うようになった同い年の彼女は、シャワーのみですませるタイプだった。彼女の一人暮らしの部屋もシャワールームだけだ。しかもそのシャワールームがとても狭いのだという。
「お風呂なんて入らなくてもいいというのが彼女の言い分。実家にいるときは、毎日、湯船にちゃんと浸かれ、風呂に入れと言われて嫌だった。反抗して1週間くらい入らないときもあったと言っていました。さすがに今は社会人だからシャワーは毎朝浴びるけど、本当だったら面倒なんだよね、と。まあ、そういう人もいるんだろうけど、前の彼女と比較するとギャップが激しい。僕はごく普通の人と付き合いたいんですが(笑)」
彼女のだらしなさがだんだん気になるように
休日に連絡してデートに誘うと「昨夜は化粧も落とさずに寝ちゃった。出掛けるまでに少し時間がかかる」ということもあった。自分自身が、きちんと生活していると自慢できるわけではないが、「なんとなく、彼女のそういうだらしなさが嫌だなと思うことが最近、増えてきた」と言葉を探すように慎重に言った。「湯船が必要かどうかも、もし結婚ということになったらけっこう争点になりそうですよね。衛生観念ということではなく、スペースの使い方とか、生活の中で何を重視するかとかにつながる気がする」
今後、単身者向けの部屋から湯船なしが増えると、いざ結婚ということになったとき、ケンゴさんが言うような問題が起こってくる可能性もありそうだ。